↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/1

実弾射撃1

射撃競技会が始まった。

我々、第四中隊から選出された六名は3トン半(兵員の一般搬送に使う非装甲のトラック)に乗って東富士演習場の射撃場に向かった。

自衛隊が日本国内において、実弾射撃が行える場所はごく限られている。

そのほとんどが山奥にある演習場内の射撃場で、射撃が行われる際はゲートに警備を立たせて一般人が立ち入れないようにする。


射撃の際には最初に<零点規正射撃>というものを行う。

これは自衛隊だけでなく、どこの世界の軍隊でも必ず行っている。

数発を実射してターゲットの中央に着弾点が来るように銃の照準器を微調整する。

具体的には<照星>と呼ばれるフロントサイトと<照門>と呼ばれるリアサイトを調整して

着弾点が常に真ん中に来るように上下左右を補正する。

映画ではよく主人公が敵から奪った銃を何の調整も無しに撃って見事に命中する。

だが、現実でそれが通用するのは近距離においてのみだ。

三〇〇メートルほどの射距離になれば、個人差の影響が大きく出る。

例えば私が自分に合わせて調整した小銃を隣にいる隊員に撃たせたら

弾はターゲットにはかすりもせずに右下に大きく1メートルほどズレるということがある。

個人によって顔の形や目の位置、照準の癖が異なるため、ストック(頬を乗せて照準を安定させるための部分で小銃の後部にある)に頬を当てたときに照準器と目の位置関係にそれぞれ微妙な違いが出てくる。

その微妙な違いが三〇〇メートル先では敵に当たるか当たらないかの大きな違いになる。


零点規正の場合は、基本的には体を地面に伏せた状態で実弾を撃ち、

3発撃つごとに着弾点を確認し、照準器をいじって修正をかける。

目視では三〇〇メートル先のターゲットの着弾点が見えないので横にあるモニターで確認する。

銃のほうで補正をしても弾が当たらないのだとしたら、それは自分の腕が悪いだけだ。


3発がだいたい1メートル左上にまとまって着弾していたとしたら、

照星と照門を調整して右下に1メートルの補正をかける。

小銃の先端部分にある照星が上下の調整、後方部分にある照門が左右の調整を担っている。

射距離の設定は照門で行うが、これは1度三〇〇メートルに合わせてしまえば基本的には変えなくてよい。

銃から放たれた弾丸はまっすぐ水平に飛ぶと思っている者が多いが、

実際には小銃のような直射火器でも緩やかな弓を描いて飛ぶ。

なので中遠距離ではターゲットとの距離に照準器の設定を合わせなければ弾は当たらない。


照星の調整にはボールペンを使って行う。

ボールペンの先端で照星にある窪みを押すと左右にクルクルと回るようになる。

右に回すと照星の突起が上がって逆に着弾点は下に行く。

左に回すと突起が下がって着弾点は上に行く。

89小銃の照星は5ミリくらいの小さい円の四方向に突起がついていて

1回転でおおよそ1メートルの補正がかかる。

つまり25センチほどの修正をしたい場合、照星を1/4回転だけ回せばいい。

一方、左右の修正は照門で行う。

照門の横に付いているダイヤルを前に回せば照門は左にずれ、ダイヤルを後ろに回せば照門は右にずれる。

着弾点はその逆になるわけだから、例えば着弾点を右にずらしたい場合は照門を左にずらせばいい。

自衛隊ではこれを<押し右・引き左>と習う。


零点規正の際は、着弾点がだいたいまとまっていれば良い。

補正自体は簡単にできるからだ。

1番困るのは、いくら撃っても着弾がまとまらない時だ。

着弾点がてんでばらばらに散ってしまって

どの方向に着弾する傾向があるのかがまったくつかめない時がある。

私もよっぽどコンディションが悪い時に1度そうなったことがある。

そういう時は照準器をいじらないのが1番良い。

下手にいじるとかえって駄目になることが多い。



【つづく】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。