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グリム機関の赤頭巾  作者: 兎月竜之介
グリム機関の赤頭巾
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 途中のスーパーマーケットで食材を購入して、二人はシルフィのマンションに帰った。いつも一人で買い物を済ませる森斗にとって、二人であれこれと話し合いながら商品を選ぶことは新鮮かつ楽しいことだった。


 再び訪れたシルフィの自室は相変わらず殺風景である。ベッドシーツも白無地、小物類も一切見られない。戦闘時に来ていたロリータ調の服はクローゼットにしまってあるのだろう。テーブルの上には鞘に収まったグルカナイフが無造作に置かれていた。


 森斗は購入した食材でカレー・ヴルストを作っていく。シルフィは落ち着かない様子で、私物らしきポータブルテレビで夕方のニュースを見ていた。彼女の「ライオンの赤ちゃんが生まれたことしか報道してないぞ」という独り言が聞こえた。


 で、カレー・ヴルストが出来上がったのは七時を過ぎた頃のことである。

 炊きたてのご飯の上にカレーをたっぷりとかけて、その上にソーセージがドンとのっかっている。市販のルーを二つ混ぜているのは父・深山からの受け売りだ。ソーセージはスーパーマーケットの精肉コーナーで、今日作られたばかりのものである。


「……なんか、ちがう」

「えぇっ!? 頑張って作ってみた第一声がそれ!?」


 スプーンを握ったまま、シルフィは出来上がった料理を眺めている。


「これではカレー・ヴルストではなくて、完全にソーセージカレーだ。本来のカレー・ヴルストにかかっているのはケチャップとカレー粉。当然だがライスと一緒に食べるものではない。そして、付け合わせには必ずフライドポテトが添えてある」

「それ完全に別物じゃないか! ちゃんと教えてよ、シルフィ」


 カレー・ヴルスト改め、ソーセージカレーを食べる森斗。

 シルフィもはぐはぐとカレーを食べ始める。


「だが、これでいい。わざと曖昧なことを言って、どんな感じになるのか確かめたい気分だったんだ。それにカレー・ヴルストはハンバーガーみたいなもので、夕食って感じではないからな。このカレーライスで正解だ」

「気に入ってもらえたようで良かったよ」


 森斗はホッとして、コップに注いでおいた水を飲んだ。

 彼に続いて、シルフィもゴクゴクと水を飲む。


「ただ、ちょっとかりゃいな……」

「そうかな? 普通の中辛なんだけど」

「次にカレーを作るときは甘口にしてくれ。知っていたか、森斗? 辛さとは痛みなんだ。辛いものが大好きなやつは、つまり痛いことが大好きな変態というわけだ。お前はこれ以上、変態なんかになるんじゃないぞ」


 美味しいものを食べて上機嫌だから饒舌なんだろうか、と森斗。

 シルフィはフォークに持ち帰ると、カレーライスの上に乗っかっているソーセージを食べ始めた。思い切りかぶりつくと、パリッと心地よい音が森斗にまで聞こえてくる。そして、断面からはジューシーな肉汁が溢れ出ていた。

 彼女は満足そうにソーセージをもぐもぐする。


「お皿の端から端まで届くような長さ、口をいっぱいに開けないとくわえられない太さ、噛んだ瞬間にいい音が鳴る堅さ……スーパーマーケットの精肉売り場と侮っていたが、これはなかなか食べ応えがある」


 ごくり、と唾液を飲み込む森斗。

 シルフィがちらりと彼の方を見る。


「どうした、森斗? 自分のソーセージを食べればいいじゃないか」

「あ、うん、そうだね。シルフィも美味しいソーセージを心おきなく堪能してよ」


 二人はそれから怒濤の勢いでソーセージカレーを平らげた。

 森斗に至ってはカレーの二敗目をおわかりした。カレーはそれでもまだ残っていて、シルフィが翌日の朝食に食べるくらいはある。二日目のカレーが凄く美味しいのに……と、森斗はついおかわりしてしまったことを少しだけ後悔した。

 後ろに両手をついて、シルフィがふーっと熱くなった息を吐く。


「美味しかったよ、森斗。また作ってくれ」

「そりゃあ、いくらでも作るけどさ――」


 森斗はフローリングの床にごろりと横になった。


「シルフィは自炊しないの?」

「しない」


 シルフィがやたらと素早く返答する。

 先ほどまで満足そうだったのに、彼女はもう顔をしかめていた。


「私は料理をしない主義なのだが……それよりも、私が疑問に思っているのは森斗の方だ。どうして、カレーライスが作れるのに部屋の掃除ができないんだ? カレーを作るよりも部屋を掃除する方が簡単だぞ」

「料理よりも部屋の掃除の方が、僕としては神経を使う仕事なんだよ。むしろ、シルフィの方が不思議だ。一人暮らしなら料理くらいできないと大変じゃないか。まさか、今までずっと外食ばかりだったわけじゃないだろう?」


 横になっている森斗の前では、シルフィがフローリングに直接ぺたんと座っている。そのため、すぐ目の前で彼女のつるつるとした膝を観察することができた。人狼化したときに細かな傷も治ってしまうのだろうか、とても戦闘を専門とする人間の膝には見えない。


 シルフィは顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。

 どうやら、料理ができないことを一応は気にしているようだ。


「日本に来るまでは二人一組で行動することが多かったからな。先輩狩人のお世話になっていた。幸いなことに女性ばかりだった。狩人になる前は叔父様が面倒を見てくれた。叔父様は刃物の扱いは上手かったが、料理を作るのは苦手だったな……」

「グルカナイフの使い方はおじさんに教わったんだね?」

「その通りだ」


 シルフィはフォークを掴むと、それを器用にくるくると回し始める。彼女は大型ナイフ以外にも、細かい刃物を扱うことも得意なようだ。マリアに三角定規を投げ返したのも、ナイフ投擲と同じ要領だったのだろう。


「両親を人狼に殺されたあと、私を引き取ってくれたのが叔父様だ。彼はグリム機関の戦闘班で活動している狩人でもある。料理は下手だったが、異端者と一対一で戦える腕前だ。私は彼から戦闘技術を学んだ。両親を殺した仇を討つために、同じような思いをする人が二度と現れないように……だから、料理の仕方を学んでいる場合ではなかった。叔父様の料理は参考にならなかったしな」

「……おじさん、相当に料理が下手だったんだね」


 森斗は彼女の話を改めて聞いて、自分たちは少し似ているなと思った。

 自分は母親を失っており、シルフィは両親を失っている。グリム機関の狩人に育てられて、戦闘技術を学んだ。だが、違うところもたくさんある。森斗は母親が亡くなった瞬間に立ち合っていない。そして、自らの意思で狩人になろうとしたのではなくて、最初は父親に強制される形だった。


「まったく、本当は出動禁止を喰らっている場合じゃないのに……」


 ふがいなさを嘆くシルフィ。

 だが、グリム機関において上からの命令は絶対である。エージェントたちは一般市民を守る立場だが、同時にグリム機関によって守られている。正体を隠すこと、武器を調達すること、優先的に治療を受けること……どれもグリム機関がなければできないことだ。組織に所属しなければ、異端者と戦うことはできない。

 そのため、出動禁止の命令は絶対厳守である。

 森斗はピンと来て提案する。


「それなら、今こそ料理を覚えるタイミングなんじゃないかな?」

「だから、料理だなんて面倒そうなことをやってられるか!」


 料理をしない主義、教えてもらう環境がなかったと主張していたはずなのに、いよいよシルフィの口から本音が飛び出した。

 彼女は森斗の体を起こすと、ソックスに包まれた足で彼の背中を蹴っ飛ばす。


「カレーを食べたら、さっさと出て行け!」

「洗い物がまだ残ってるんだけど……」

「皿洗いくらいなら私がやる! 役目が終わったらゴーホームだ!」


 シルフィは今にもグルカナイフを手に取りそうな様子である。

 森斗は渋々ながら、シルフィの自室からマンションの廊下に出ることにした。


 ×


 しばらくして、腹の具合が落ち着いた森斗は風呂に入っていた。


 美希が用意してくれたマンションは、親切なことに風呂とトイレが別になっている。春先はまだ夜になると肌寒いので、いつでも風呂に入れる環境は嬉しいことだ。戦闘で受けたダメージを回復するのにも風呂は有効である。

 ただ、縫ったばかりの両手だけは湯船に入れることができない。包帯を交換して、防水テープで留めてあるので、体を洗うくらいならば平気だ。でも、流石にまだどっぷりと湯船に浸かるのは医療班の担当医にも止められている。


 髪と体も洗い終えて、今はただ考え事をしながら暖まる。

 内部監査班から送られてきた西園寺マリア――彼女は仕事に関してはドライな人間だが、一緒に遊ぶうえでは楽しい相手だ。どうやら、漫画やゲームにも精通しているらしい。シルフィが出撃禁止になっている間は、彼女と一緒に戦うことになる。パートナーがどんな人間であるかを知ることは重要なことだ。


 美術部の部長で、クラスメイトでもある真田春臣――彼は実に付き合いの良い男である。クラスメイトと交流のなかった森斗、そして転校生二人を気さくに迎えてくれた。危うくゲームセンターに出入り禁止になるところだったが、それでも怒ったりする素振りはない。一身上の都合で親友になれないのが残念だ。


 ロッカーに保管されていた漫画本にも興味が湧いてきた。他にも春臣が言っていたように、漫画雑誌を購読してみるのも、図書館で本を借りてくるのも良いかもしれない。学校生活はいつも暇との戦いだったが、これからは毎日忙しくなりそうである。

 そして、やはり気に掛かっているのが――


「……大神沙耶」


 風呂の縁に手を掛けて、森斗は鼻の下まで熱い湯船に浸かった。

 結局、シルフィの部屋から追い出されたあと、グリム機関の処理班に大神事件の経過について聞いてしまった。

 処理班の仕事に抜かりはない。警察の調査は続けられても、大神煌がどうして死んだのか明かされることはないのだ。家族に対しても――大神沙耶にも真実は知らされない。彼女が真実を知りたいと思っていようと、思っていなかろうと……。


 森斗はつい気になって「大神沙耶の精神状態は?」と処理班に連絡を取った。だが、処理班の答えは「それを把握することは機関の仕事ではない」と素っ気ないものだ。

 大神煌が異端者であることを、彼の実母(大神美野里)と実妹(大神沙耶)が知らないことは、すでに調査班の情報収集によって判明している。重大な一点を知らない以上、大神家の二人が真実に近づくことはない……つまり放置しても問題ないのだ。


 だが、それで二人はどうなる?

 大神煌が亡くなって、それを万々歳と思っているようには考えられない。放課後、正門前で見かけた沙耶の表情が物語っている。彼女の生活は少しでも前向きになったのか? さらに苦しむようなことになっていなければ良いのだが……。


 ピンポーン、とインターフォンの呼び鈴が鳴る。

 夜も更けてきたのに押し売りか? グリム機関の人間なら一報入れるはずだが……。

 森斗が疑問に思っていると、呼び鈴がものすごい勢いで連打され始めた。


 仕方なく風呂から上がって、体を拭いたら下着を身につける。とりあえず、ジャージのズボンだけは穿いて、髪毛をタオルで拭きながら玄関まで赴いた。急いで眼鏡を掛けたらレンズが曇ってしまったので、おざなりにタンクタップの生地で拭く。


「もしもし、どちら様ですか?」


 森斗がインターフォンの通話ボタンを押すと、すぐさま大声の返事が飛んできた。


「私だーっ! シルフィだーっ! ここを開けろ、森斗! 開けるんだーっ!」


 スピーカーから聞こえてくる音声が割れている。放置しておいたら、間違いなく近所迷惑になるレベルだ。世を忍ぶ秘密機関のエージェントとして、これではちょっと問題だろう。すぐさま、森斗は玄関の鍵を開けた。


 途端、ドアが開かれるなりに銀色の何かが転がり込んできた。

 音声が割れていたので森斗は確信していなかったのだが、案の定、転がり込んできたのは真下の部屋にいるはずのシルフィである。


 彼女も風呂に入ったのか、昼間に見ていたよりも銀色の髪がふわっとしていた。ドライヤーを掛けたばかりといった風に見える。いつも嗅ぎ慣れているものとは違った、もっと優しい果物のようなシャンプーの香りがする。

 着ているものは白い生地のパジャマである。光沢がある素材なのでシルクかもしれない。そこかしこにフリルと、フリルと、フリルが付いている。要するにフリルだらけだ。絵本の中に住んでいるお姫様を、現実世界にポンッと押し出したような格好である。


 こういう服が好きなんだから、部屋も少しくらい飾っても良いのになぁ……。

 森斗がそんなことを思っていると、うつぶせに倒れていたシルフィが顔を上げた。

 彼女の顔はゆであがったかのように真っ赤である。

 シルフィが両手に握っているものを発見して、森斗は状況を把握した。


「……きみ、もしかして酔ってるの?」

「私は酔ってないぞぉ、バカものがっ!」


 確定である。

 彼女の両手にしっかり握られているのは見まごう事なき缶ビールだ。片方はすでにプルタブが開けられている。シルフィは缶ビールを勢いよくあおって、それから未開封の方を森斗に向かって突き出してきた。


「私のビールを飲むんだ、森斗! これは先輩命令だ! 私はお前よりも狩人デビューが早かったし、撃破成績も良いんだぞ。だから、間違いなく私の方が偉い。私が偉いんだから、私の言うことを聞け! 聞いてってばーっ!」


 仕方なく、受け取るだけは受け取っておく。

 森斗は効果がないだろうと思いながらも注意を述べた。


「シルフィ、日本だと二十歳未満はアルコールを飲んじゃいけないんだけど……」

「ドイツではなぁ、十六歳からお酒を飲んで大丈夫なんだ! まぁ、私はもっと小さな頃から飲んでいたけどな。保護者同伴なら子供もOKだ! それだってのに外国ではお酒が飲めないところばかりで不自由ったらないな!」


 シルフィがビールをあおりながら立ち上がろうとする。

 だが、すっかり酔っぱらっている彼女はグラグラとふらついてしまう。


「ちょっと、危ないってば!」


 森斗が手をさしのべようとすると、シルフィがあからさまに嫌がって飛び退いた。


「うおぉー、私に触れるなぁー。襲われるぅーっ!」


 テーブルに引っかかって、彼女は仰向けになって森斗のベッドに倒れ込む。

 薄手のパジャマが汗ばんだ肌に吸い付いて、シルフィの体のラインを浮かび上がらせた。

 まるで骨格人形のように華奢である。


「出動禁止の命令は解除された! 私も異端者を倒しに行くぞお!」

「いやいや、そんな作戦命令は出てないから……」


 シルフィが「なんでだよぉーっ!」と両手両足をバタバタさせた。

 どうすればいいのか分からなくて、森斗は手をこまねいてしまう。

 暴走しているわけじゃないから、内部監査班のマリアに連絡するのはおかしい。といって、別件で忙しくしている美希に電話をしたところで迷惑なだけだ。とにもかくにも、シルフィの気が済むのを待つしかない。


「異端者がいないならグールを倒すぞ! なんでもいいから、戦う相手はいないのか! 私の体調は万全だ。どんな一流狩人よりも敵を倒してやる! だから、さっさと出撃を許可するんだ! そうじゃないと、私、もう……」

「ねぇ、シルフィ。本当は出動禁止になったこと、めちゃくちゃ気にしてるんじゃ――」


 シルフィが再び森斗に視線を定める。

 彼女の目はとろんとして、昼間よりもなおのこと色めいて見えた。


「森斗……お前、私のことを性的な目で見ているだろう?」

「えっ、いや、それは、」


 嘘がつけないタイプなので、とりあえず答えないようにする森斗。

 答えを待たずにシルフィは言葉を続ける。


「男ってのはみんな同じだな。どいつもこいつも人狼と同じじゃないか。お前も、春臣も、ずーっとマリアを見ていただろう? 私にはお見通しだからな。胸か? お尻か? 足か? あいつは私なんかと比べものにならないナイスバディだものなあ!」


 わずかなふくらみを両手で寄せて上げるシルフィ。

 森斗もいい加減に「ちょっと不味いんじゃないか……」と思い始める。

 シルフィの酔っぱらい方が酷すぎるというのもある。だけど、こんな可愛い格好でベッドの上に寝っ転がられて、華奢なシルエットまでクッキリと見せつけられて、これ見よがしにアピールされてしまったら……。


「…………」


 唐突に静かになるシルフィ。

 森斗が胸中で激しい葛藤をしている間に眠ってしまったらしい。

 間違いが起こらなくて良かったと胸を撫で下ろして、それから彼は握らされていた缶ビールをテーブルに下ろした。

 で、今になってやっと気づかされる。


「……これ、ノンアルコールビールだ」


 アルコール0%でこれだけ乱れるなんて、徹底的にアルコールに弱いのか、それともストレスの溜まり方が半端ではないのか、その両方なのか……。


 森斗は眠ったシルフィの体をお姫様抱っこで持ち上げる。

 彼女の体はとても軽い。ゲームセンターから逃げるため、肩で担いだときよりもさらに軽く感じられた。大神煌との決戦前夜、運ぶ側と運ばれる側が逆だったのかと思うと、森斗は今更になって申し訳ない気持ちになる。


 というか、やたらと柔らかい。

 森斗は薄目になって、なるべくシルフィを視界に入れないようにする。そして、自分が抱えているものはマシュマロだと思うことにする。人間みたいな重さをしているのは、その上に肩ロースの固まりが乗っかっているからである。


 自室から出たあと、階段を下りてシルフィの部屋までやってくる。

 不用心なことに鍵が開いていたので、室内にはすんなりと入ることができた。

 シルフィをベッドに寝かせて一息――それから、すぐ目に入ったのがノンアルコールビールの空き缶である。いつ、どのようにして購入したかは分からないが、この調子だと冷蔵庫にはたくさん入ってそうな雰囲気だ。


 後日改めて、美希経由で注意してもらった方が良さそうだ……。

 森斗が空き缶から視線を逸らすと、脱衣所の前に投げ出されているパンツが目に入った。

 腰に引っかける部分がくるっと裏返っているのが妙に生々しい。

 酔っぱらった彼女を運んできた報酬として設置されているだなんてことは――


「……いや、ないない」


 森斗は無心になってシルフィの部屋をあとにする。

 外から鍵を掛けると、使った鍵はポストの中に投げ込んで置いた。

 せっかく風呂に入ったのに若干からだが冷えてしまっている。


「あっ、宿題やるの忘れてた……」


 高校に入学してから、宿題を忘れるのは今日で初めてだった。

 やっぱり今日は楽しかったなと再認識しながら、森斗はマンションの階段を駆け上がった。

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