韋駄天
何を?? 訝しんていると、疾風が母様に向かって話し出した。
『お初にお目にかかります。 私は東方の国より参りました疾風と申します。 これより此の地を任され守護にと呼ばれました。 本来ならばいの一番にご挨拶を申すところ、私事により遅れましたことをお詫び申し上げます』
一気に言い、疾風は社に向かい頭を下げた。
『神様?』
後ろでついつぶやいてしまう雫に、疾風が振り返り笑った。
『新参者故、未だ神気の加減がわからず……』
暴走しないよう抑えているのだと苦笑いする疾風に、てっきり人間と思い込んでいた雫は目を丸くした。
『この様な粗末な場所にわざわざのご挨拶傷み入ります。 狐にゲタは愚か自らの身さえ表に立つことが出来ません。 どうか構わず捨て置かれますよう。 地の安寧を願っております』
母様の弱々しい声に、雫は一気に現実へと引き戻された。
『神様とはつゆ知らず、数々のご無礼お許し下さい。 勝手ではございますが、お願いがあります。 どうか母様を助けて下さい』
神様にも神様同士の縄張りがある。 無理を承知で、雫は跪き疾風に土下座した
『雫、立って下さい。 大切な着物が汚れます。 それにこちらからその件でお願いに来たのですから』
疾風は雫を立たせると、社に手を当て神気を送り込んだ。
『疾風様』
神気により、実体化した母様が膝をつく。
その母様と目を合わせ、同じく膝をついた疾風はお願いを口にした