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お別れ
最後の日。 形を留める事も出来なくなった母様に、雫は自分を消すように頼んだ。
『母様! 母様……』
泣く雫に母様はお別れを言っておいで、と送り出す。
泣く泣く雫は少年のゲタを持って町へおりた。
『あ!』
昨日雫が居た場所に、少年が立っていた。
『昨日は本当にごめん』
会うなり頭を下げる少年に、雫は無言でゲタを突きつけた。
『えっ?……泣いてるの?』
近付こうとする少年に、雫はくるりと方向転換をして駆け出した。
『待って!!』
追いかけてこようとする少年に、雫は声を荒げた。
『来ないで!!』
悲痛なソレに足が止まった。
『怒っているの?』
問われて後ろ向きのまま首を振る。
『嫌いになった?』
なってない………言えなくて首を振る。
『名前、聞かせて? 僕は《疾風》……君は?』
『雫』
『雫、いい名前だね』
さよならを口にしようとした時、いつの間にか横に追いついていた疾風に手を取られた。
『おいで』
そう告げて、疾風は歩きだす。 訳もわからないまま歩いていると、辿り着いた先は、母様のいる社だった。