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恋雫  作者: 藍蜜 紗成
4/9

後悔

 恋なんてしていない……たった一瞬なのに……どうして私の全てを奪ってしまうの?

 先のない思いに、泣きたくなる。


 とぼとぼと(やしろ)に戻ると、大きなゲタを()いた雫を母様は抱きしめてくれた。


『しょうのない子ね』


 雫の心を感じ、痛みを思う。 力の入らない白い腕に、雫は謝った。


『母様、ごめんなさい』


 こんな状態だったのに……浴衣も……ワラジも……恥ずかしいなんて……一瞬でも思った自分を悔やむ。


『ごめんなさい』


 恋をしてしまったの。 ごめんなさい。

 謝り続ける雫の背中を、ぽんぽんと母様は軽く叩いた。

 ごめんね、と聞こえない程小さく謝る声に、雫は泣いた。



 明日……ゲタだけ返そう……。

 名前も知らない少年が、頭の中でそっと笑っていた。


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