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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
92/94

愛4

[4]


「し、しかしですよミライさん……」

「あらまだ質問があるの? そろそろ御終いにしようと思ったのに」

「そんな自分の愛溢れる世界を作っちゃったとしたら、その、読者に見せて反応悪かったら凄く嫌じゃないですか、それなら読者の好む題材を選んだ方が」

「その行為に愛はあるのかしら?」

「い、いやでも、人気撮れ無きゃじゃないですか!」

「じゃぁ貴方は何の為に作品を書くの?」

「え、何の為って……」

「書きたいモノがあるからでしょう? 書けるからとか、儲かるからとかじゃなく、書きたいから書くのでしょ? そりゃある程度読者層に合わせる必要はあるし、書きたくない事も書かなくちゃいけないかもしれないけれど、書きたいから書きたいモノを書くと言うスタンスを崩しちゃ駄目よ! じゃないと作品が死んでしまうわ」

「作品が死ぬって……」

「結局血が細部まで通って命は脈打つのよ、話の隅々まで作者の血脈が通わなければやがて細部から腐って行って、作品が腐っていくのよ」

「お、おおおお……何か怖いですね」

「同じ事を永遠と繰り返したり、パターンが決まってしまって何も変える必要が無くなったりしても同様ね、結局水は入れ替えないと淀んで腐る訳よ、常に新鮮な物を取り入れて、古い物は取り払い、清潔さを保ち、常に循環させていく」

「面倒臭いんですね、まるで家庭菜園……」

「そうよ、作品を作ると言う事は命を育む事と同義よ、手を抜いたらあっという間に腐ってしまうのよ、手間暇が掛かって、愛が無いとやっていけないんだから!」

「わ、分かりました! と、取り敢えず野菜の作り方から勉強してみます!」

「って行き成りそっちへ脱線するんじゃない! あくまで例えよ! でもま、野菜を育てるシーンがあるなら、一回は家庭菜園を始めて見たりして、細部の拘りを追求するのは悪い事じゃないわ、それこそ愛よ」

「無償の……愛」

「お、良い事言うわね、作品に対して無償に愛を幾らでも注げる者こそ真の作者よね」

「愛は全てを救う」

「良い言葉持ってるじゃない!」

「最後に愛は勝つ!」

「その意気よ!」

「愛されたいっ!」

「心の叫びなのはわかるけど、それはちょっと引くわー」


[続く]


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