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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
91/94

愛3

[3]


「あれ、でもミライさん」

「何かしら?」

「例えば極悪非道な人物とか、最低最悪な悪徳貴族とか、もしくは世紀末とかゾンビにより壊滅寸前みたいなキャラや世界観はどうするんですか? 流石に愛し辛いじゃないですか?」

「例えば悪人だったら、最後は必ず因果応報の目に合うとか、主人公に成敗されるとか、より巨大な悪に倒されると言う構造を作るのよ、最後に相応の罰を受けると思えば、作者としては最初は自由気ままに振る舞わせるでしょ?」

「まぁ、確かに因果応報を受けるなら、悪事はむしろ働けば働くだけ不憫に思えてきますね」

「それもまた愛よ、悪を愛し、悪事を愛し、悪役を愛し、悪の美学を理解する。そして悪は必ず滅びる

事と、因果応報をしっかりと組み込めば、読者の理解も得られるのよ」

「なるほど、それじゃ世紀末は?」

「むしろ過酷な環境は、その中に生きる人達の生き様を描いてこそね、懸命に生きていくキャラクターを描こうとするからこそ、作者の愛の鞭で過酷な環境や、展開を用意できると思うものよ、自分のキャラクターはこの程度の逆境で倒れはしないと信じる心があればこそ、無慈悲な世界観を作り上げられるのよ」

「愛の鞭ときましたか……」

「そうよ、かくも愛は不可思議で、複雑で、不可解で、不確認で、不平等で、不詳で、不安で、不徳で、不屈で、それ故に面白いのよ」

「な、何だか自作品との関係が拗れそうです」

「拗れて結構! 対立無く、敵対無く、困難無く、平穏無事に終わり解決に向かう物に面白いモノ無し! 人も作品も不完全であるからこそ面白い! 人は足りず、欠けていて、餓えているからこそ足掻き、前へと進み、欲を持つのだ! 満たされて怠惰に暮らす様など脆弱な豚も同然! 観賞用として美しく着飾れば見るには耐えられるけれど、深淵へと達するには爆発力に欠けるわね!」

「何だかミライさん! 発言が喧嘩腰ですよ!? ってか口調が変わってます!」

「っと、ごめんなさい、何かが乗り移ったようだわ」

「何かって、何ですか……?」

「それは分からないわ、でもまぁ、ある意味キャラクターには作者が乗り移るモノなのよ、だから自分が全く共感できない、理解出来ない、趣味じゃない人物や設定を書こうとしても上手くはいかない、そこに自分なりに納得できる、共感を持てる、興味が沸く、接点をちゃんと作ってから挑まないとね」

「愛を得る為には、回りくどい事も必要なんですね」

「そうよ、昔のギャルゲーじゃないんだから、告白してすぐOKなんて詰まらな過ぎよ、試行錯誤して精一杯努力して、無我夢中でアプローチ掛けて、本気で想いを伝えて、それでようやく振り向いて笑顔が貰えればラッキーくらいに思いなさい」

「辛い道のりですね……」

「その辛さを喜べるのが、愛なのよ」


[続く]


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