感情を揺さぶる1
『感情を揺さぶれ』
「ふふふ、ミライさん」
「お、どうしたのよ? 今日はいつになく自信に満ちた顔してるじゃない?」
「僕は、僕は分かってしまったんですよ!」
「ほう、とりあえず話を続けなさいよ」
「僕は分かってしまった、面白いと言うのが如何なるものかを!」
「それは良い事ね」
「世界観を考え、構成を練り、技術を詰め込み、キャラを作り込み、物語を展開する! この楽しさに僕はついに目覚めてしまったと言っても過言ではありません!」
「それは上達したじゃない」
「これで! 僕は傑作小説を書く事が出来ます!」
「…………甘いわね」
「これで僕はもう、駄目作者なんて呼ばれずに済みます! ありがとうございます! って、え? 甘い?」
「……そうよ、甘すぎるわ、今の貴方はショートケーキよりもクッキーよりも無糖ジュースよりも甘過ぎるわ! もうベッタベタに!」
「無糖ジュースは甘くないんじゃないですかね?」
「いい? 今あなたが言った要素はどれも全て、作者が感じる面白さなのよ! 小説は読者を楽しませてなんぼ! そう言った手法を練り込まなければ、単に作者の自己満足な仕上がりになってしまうだけよ!」
「そ、そうなんですか!? で、でも自分が面白いと思わなければ読者も面白くないんじゃ……」
「それはその通りだけど、一つ付け加えるなら、作者だけが面白く感じても駄目なのよ!」
「じゃ、じゃぁ読者を楽しませる方法とは一体!?」
「そうね、感情を揺さぶる事かしら?」
「か、感情? で、でも登場人物達はちゃんと葛藤に悩んだり困難に立ち向かったりしてますよ!」
「この技法は、これまでの技術を結集して行うモノよ、まず冒頭で読者を惹きこみ、そして登場人物に共感させる、そしてそこで何かしらの感情に訴えかけるのよ! そうすればさらに面白さはランクアップするわ!」
「なんと!?」
「では、まずは悲しみと怒りの感情から行ってみましょうか」
「お願いします」
「まぁ人間誰しも、これには弱いって対象があるのよね。例えば王道でいくなら、子供と動物。コレは慈愛って言うのかしらね? 感情移入しやすいわ」
「あ、でも主人公の年齢設定を下げるのはあまり好ましくないんじゃ?」
「それは勿論よ、でも、それは作者にとってはって事よ、作者が書けるなら、ドンドン狙っていくべきね。後は恋人関係、これも関係が想像しやすいし、共感しやすいわ」
「じゃ、子供と動物と恋人を出せば、感情を揺さ振れるんですか?」
「単に出すだけじゃ駄目よ。そこにさらに、自己犠牲、我慢放出、努力無駄のパターンを織り込まなくちゃ」
「それは何なんですか?」
「人が怒りや悲しみを覚えやすいパターンって所かしら。自己犠牲は、自分を犠牲にして誰かを助けたりするパターンね、主人公の尊さに皆涙する事この上ないわ。我慢放出は、しいたげられたり抑圧された状況で、これまで我慢していたり押し込んで居た感情が溢れだすパターン、誰だって言いたくても言えない事や、やりたくても怖くてできない事が沢山あるはずよ、それを作中の人物が代わりにやってくれるって訳。これも感動を生みやすいわ。そして努力無駄は、一生懸命頑張ったり努力したのに、それが駄目だったり届かなかったりってパターンね、登場人物の涙に、読者も誘われるって訳」
「なるほど、感情の揺さ振りにもパターンがあるんですね」
「あくまで一例だけどね、他にも色々なパターンがあるから考えてみるといいわ。他の感情についてもこれから説明して行くわよ」
「分かりました!」
[続く]




