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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
72/94

時代劇セオリー4

[4]


「広大な大自然を駆けるは、今は絶滅せし野生動物。

 それを追いかけるは毛皮を身に纏う旧人類。

 手には石器の武器。

 まさに原始の時代。最初の人類の物語。

          ――石器」


「遂に此処まで……」

「まぁ時代劇ではないけれど、これはこれで歴史物って括りとしては正しいわよ、これ以降はもう人類じゃなくて類人猿だしね」

「あれ? ミライさん何処にいるんですか? 声はすれども姿が無い?」

「私は此処よ」

「何だろう、おっきな岩から声がああ! ついにこんな姿に……ミライさんもう、壁画じゃないですか!?」

「流石にこの時代に私を表す技術は無いのよね、もっと遡ればモノリスくらいにはなれたのに」

「時代設定描写に拘りますね……」

「それが今回のテーマだから」

「で、此処では何が起こるんですか?」

「うーん、マンモスとか狩ったり、家を建てて暮らしたり? もうこの時代は遺跡とかからしか情報得られないし、大体生きるのに精一杯って感じだったからね」

「物語にはし辛いですね」

「ほとんどコミュニティーも出来てなかったし、移動してたところもあるみたいだしね、もうなにわ小吉先生見たく人類が初めて~シリーズでもやるしかないわね」

「え? なにわなんですか?」

「何でも無いわよ」

「そう言えば、さっきから地響きがしてきますね」


 そんな折に、赤髪と青髪の少女達が逃げるように駆け寄ってきた。

「大変よ!」

「マンモスがこっちに向かっているの」

 よく見ると二人が逃げてきた方向から、物凄い土煙が上がっている。


「うわ逃げないとって……ミライさん、動けないじゃないですか!? どうするんですか?」

「抱えて運びなさいよ!」

「いやいや無理ですよ! その岩僕よりウェイトあるじゃないですか! 滑車とかタイヤとか取り付けないと!」

「生憎と歯車の発明は未だなのよ!」

「それじゃミライさん長い間お世話になりました!」

「あっさりと見捨てるんじゃないわよ!」

「あわわわわ、そうこうしている内にマンモスが来た!」

 マンモスの激突に、巨大な岩はあっさりと砕け散った。

「み、ミライさーん!?」

「え、呼んだ?」

「うわ生きてた!? ってあれ声はすれども、またも姿が?」

「ふふふ、もっとよく見てみなさい」

「いや、全然姿が見えないんですけど」

「視野が狭いわね、いい? 主観じゃなくて客観で、そう、もっと高い位置から探せば見つかるわよ」

「うわミライさんなんかついに地上絵みたいな感じになってる!?」

「そうよ、ついに私は大地と一体化したのよ!」

「とりあえずそれは進化と呼べるんですかそれとも退化なんですか?」

「ふふふ、もはやそんな歴史の前後などと言う細かい事は気に成らないわね」

「ここに来てそのこだわりを捨てたらだめなんじゃないですかね?」


[続く]


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