時代劇セオリー4
[4]
「広大な大自然を駆けるは、今は絶滅せし野生動物。
それを追いかけるは毛皮を身に纏う旧人類。
手には石器の武器。
まさに原始の時代。最初の人類の物語。
――石器」
「遂に此処まで……」
「まぁ時代劇ではないけれど、これはこれで歴史物って括りとしては正しいわよ、これ以降はもう人類じゃなくて類人猿だしね」
「あれ? ミライさん何処にいるんですか? 声はすれども姿が無い?」
「私は此処よ」
「何だろう、おっきな岩から声がああ! ついにこんな姿に……ミライさんもう、壁画じゃないですか!?」
「流石にこの時代に私を表す技術は無いのよね、もっと遡ればモノリスくらいにはなれたのに」
「時代設定描写に拘りますね……」
「それが今回のテーマだから」
「で、此処では何が起こるんですか?」
「うーん、マンモスとか狩ったり、家を建てて暮らしたり? もうこの時代は遺跡とかからしか情報得られないし、大体生きるのに精一杯って感じだったからね」
「物語にはし辛いですね」
「ほとんどコミュニティーも出来てなかったし、移動してたところもあるみたいだしね、もうなにわ小吉先生見たく人類が初めて~シリーズでもやるしかないわね」
「え? なにわなんですか?」
「何でも無いわよ」
「そう言えば、さっきから地響きがしてきますね」
そんな折に、赤髪と青髪の少女達が逃げるように駆け寄ってきた。
「大変よ!」
「マンモスがこっちに向かっているの」
よく見ると二人が逃げてきた方向から、物凄い土煙が上がっている。
「うわ逃げないとって……ミライさん、動けないじゃないですか!? どうするんですか?」
「抱えて運びなさいよ!」
「いやいや無理ですよ! その岩僕よりウェイトあるじゃないですか! 滑車とかタイヤとか取り付けないと!」
「生憎と歯車の発明は未だなのよ!」
「それじゃミライさん長い間お世話になりました!」
「あっさりと見捨てるんじゃないわよ!」
「あわわわわ、そうこうしている内にマンモスが来た!」
マンモスの激突に、巨大な岩はあっさりと砕け散った。
「み、ミライさーん!?」
「え、呼んだ?」
「うわ生きてた!? ってあれ声はすれども、またも姿が?」
「ふふふ、もっとよく見てみなさい」
「いや、全然姿が見えないんですけど」
「視野が狭いわね、いい? 主観じゃなくて客観で、そう、もっと高い位置から探せば見つかるわよ」
「うわミライさんなんかついに地上絵みたいな感じになってる!?」
「そうよ、ついに私は大地と一体化したのよ!」
「とりあえずそれは進化と呼べるんですかそれとも退化なんですか?」
「ふふふ、もはやそんな歴史の前後などと言う細かい事は気に成らないわね」
「ここに来てそのこだわりを捨てたらだめなんじゃないですかね?」
[続く]




