時代劇セオリー3
[3]
「深い森が何処までも広がる神代の時代。
獣は大きく、賢く。人は小さく愚かしい。
農耕が始まり、ようやく鉄器が使われ始める時代。
まだ人は、主役足り得ない。
――弥生」
「もはや僅かな出土品から推測するしか出来ない、神様たちの時代! 弥生時代よ、此処まで来るともう時代劇って言うよりも神話とかよね!」
「うわぁああああ!? ミライさん!? って言うか、え? ミライさん? どうしたんですか!? もう土偶じゃないですか!」
「不本意だけど、もはやこの時代に私を表現できるのはもうこれしかないのよ」
「そうなんですか、時代が遡るとミライさんは伝統工芸化するんですか……」
「正式には違うわね、土偶は出土された時は確かに伝統工芸っぽいけれど、当時は意味があったのよ、神の御姿とか、王家の兵とか、アニミズム的な崇拝の象徴だったわけよ」
「その辺はもう考古学の分類ですよね」
「そうねぇー、まともな資料を得るにしても、そうとう根性入れないと難しいわね、でも最近はこういうのを取り扱った雑誌も多いから、センサーを上手く張っておけばそれほど難しくは無いわよ」
「うーん……土偶と話しているとなんか自分の価値観が壊れていく気がします」
「そうよねー、ヒロインが此処まで神々しくなってしまうと、流石に気を遣うわよね」
「いやもう不気味過ぎてって言うか、こんな姿になったのにミライさん異様にポジティブなんですね……まぁいいか、で、この時代は主にどんなことが起きるんでしょうか?」
「稲作とか、あと狩猟とか、それに小規模な国同士の戦争もあったって言うけれど、やっぱり物語として扱うなら、神様との戦いかしら?」
「か、神!?」
「まぁこの時代の神って言うのは、山の主とかそういう大型動物の事ね、物語としてはそう言った動物を喋る様にしたりして賢く描いて、人間対自然の勢力みたいな感じで開拓時代を描くのが面白く描くコツよねぇ」
「今一瞬、迫りくる土偶兵団と人類が戦う光景が浮かびましたが……」
「オーパーツの時代でもあるから、未知の超文明を描く事も不可では無いわね」
「わー未知の超文明本人からお墨付き貰えるなんてそうそうない機会ですよー」
「ちょっと! さっきから人を未知との遭遇扱いするんじゃないわよ!」
「あれ怒った!?」
「私は過去に人類は宇宙人から文明の基礎を教わった説は嫌いなのよ!」
「なるほ、いや、あんま関係無いですよその怒りの矛先!」
そんな折に、二人の前に豪華な衣装の赤毛の少女が、背丈に合わない衣装の裾を引き摺りながら、のそりと現れた。
「お怒りなの……山上がお怒りなの、じゃ!」
「えっと、今回のリンネの役割は?」
「この時代では大事な役割、シャーマンよ、巫女とも言うわね」
「これは生贄を捧げないと神の怒りは収まらないの! じゃ!」
そして白い衣装に身を包んだ青い髪の少女が現れる。
「ああ、私が身を捧げれば神の怒りは静まると言うのですね」
「あ、まぁそろそろ次に行きましょうか?」
「そうね、あらかた満たし次行きましょう」
「ちょっと私のシーン最後まで見なさいよね!?」
[続く]




