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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
70/94

時代劇セオリー2

[2]


「265年間の太平を享受せし、東の大都市。

 当時、世界最大の都市として発展した江戸。

 其処に住まうは、無数の人と物語。

          ――江戸」


「おお、これは江戸ですか!」

「そうよ、江戸幕府、徳川幕府と言うべきかしら、慶応4年から明治に至るまでの265年間が江戸時代、この時代は何と言っても平和と言えるかしら、外敵勢力もほとんど無く、街道も整備されて、町人が寺社参拝にと旅行へ行けるほどに治安が良かったとされるわね」

「意外に近代的なんですね」

「まぁ泰平だからこそ、庶民の暮らしとか日常を描く作品が多いわね、だから剣戟とかチャンバラの時代はもっと前になる訳よ、江戸だと落語とか内容がメインよね」

「なるほど……って言うかミライさん、それどうなっているんですか!? さっきから身体ギコギコ言ってますけど!」

「この時代に蒸気機関とかある訳ないじゃない、カラクリ仕掛けな訳よ」

「追求しますね、リアリティー……」

「いやンなっちゃうわねー、ほらそろそろ切れそうだから、発条撒いて!」

「め、面倒臭い……あ、庶民の生活メインって事ですけど、具体的には?」

「例えば、町人が何かの揉め事を持ってくるとか」


 その時、赤毛の着物を着た少女が小走りで駆け寄ってきた。

「だんなぁーてぇへんなの!」


「ほら、こんな風に」

「何かこれこそ時代劇とか落語のノリですね」

「まぁ正に時代劇そのものなんだもん」

「だんなぁーてぇへんなのぉ、お侍さんに追われているのぉ」

「侍に追われてるって大事じゃないですか!?」

「この時代は厳格な身分制度が敷いてあるから、無事は支配階級な訳よ」


 そこに、腰に刀を差して、着流しの着物姿の青い髪の女性がゆらりと姿を現した。

「ちょいと尋ねるが……赤毛の餓鬼を見なかったかい?」


「……お侍って男性のみなんじゃ?」

「史実ではそうよね、ただまぁキャスト的に人手不足だから、今回は女性浪人はアリって事で」

「で、赤毛の餓鬼を知らぬか?」

 ちなみにリンネは僕の後ろにしっかりと隠れていたりする。

「お、おおおお侍様が、子供なんかを探して一体?」

「先ほどすれ違った隙にのう、財布をすって行きおったのだ」

「たかだか小銭程度でしつこい奴なの」

「うわちゃんと追われる理由があった日にゃどっちを味方していい物かさっぱりです!」

「女子供を守るのが男の役目なの、かわりに斬られるの」

「まぁこの頃は不味しい者は何処までも貧しいし、侍だってかなり力を殺がれて貧窮にあえいでいたりするのが実態なのよねー」

「某を馬鹿にするとは、刀の錆となる覚悟がありと見た!」

「あとライセさんが役に入り切っていてちょっと怖い!」

「まぁ浪人は、牢人と呼ばれる人も居てね、主君を失って職を失った侍が大勢いて、一部は商人に鞍替えしたりして町人の中に馴染む者も居たけれど、野盗などに走る人も居たわけよ、だから平和とは言え、其処ら彼処で切った張ったが行われている場合もある訳よね」

「あーはいはい、じゃもう次行きましょう次!」


[続く]


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