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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
65/94

異能力セオリー2

[2]


「使い慣れた道具には力が宿ると言う。

 ソレは所有者の実力を底上げするに留まらず、所有者の実力以上の、そして道具に望む以上の力を引きだし、その力を行使する事すらも可能である。

 その力を兼ねてより人は、気と呼び、魂と呼び、憑く物神の力と呼んだ。

 道具に秘められし力を引き出した者を、魔導具使い、妖気使い、エクスツーラーと呼び、恐れ忌み嫌い、そして利用する。

          ――エクスツーラー」


「何て事……この私が、任務開始早々撤退を強いられるなんて……」

「何なんですか……いきなり雷が降ってきましたけど……」

「アレが今回私達が戦う相手の異能力……いえ、拡張道具/エクスツールよ」

「あ、何かここで能力説明入る感じですか?」

「ひと段落ついたし、能力も見せたからそんな頃合いよね、いい? この世界には道具の機能を拡張して、本来の能力以上の力を引き出す拡張道具使い/エクスツーラーという異能力者が日常の陰に隠れているのよ」

「隠れているのよって言うか、僕等もその拡張なんとかの異能力使いなんですよね?」

「そうよ、私の能力『福音の鐘/エンハンス・ベル』は、この手に持った鐘/ハンドベルの音を媒介に、様々な音や音波を増幅収束させる事が出来るのよ」

「音を操るんですか」

「そう、この音が鳴り響く範囲なら、どんな声や音でも増幅して拾えるし、また消音も可能だし、音の衝撃波で攻撃だって可能なんだから!」

「流石ミライさんです、頼りに成る能力ですね……じゃ僕はどんな能力何ですか?」

「さぁ?」

「え、こういうのって大概相棒が能力を把握していてくれるもんじゃ?」

「いやいや、こういうのは大概最初は主人公の能力が伏せられてて分からない方が熱いじゃない?」

「じゃああえて黙っておくって事ですか?」

「いやそもそも知らないのよねぇ……何かアンタ道具とか持ってる?」

「え……っと、あ、アイディアを思いついた時の為に紙とペンならとりあえず」

「じゃ、多分それが貴女の能力の媒体って事ね、まぁ、こういうバディ物の場合大概どっちかが直接攻撃能力を持って居たら、相棒は情報収集能力って感じだから、アンタのは実戦向きじゃないのは確かね」

「むぅ……紙に描いた絵を実体化させるとかですかね……書いては見たけれど動かない……」

「いや、動かない以前に何描いてんのかさっぱりなんだけど、下手以前に。因みに何を描いたのよ?」

「ミライさんを、あ痛、何で殴るんですか!?」

「この作品のメインヒロインをそんな粗末な描写で描くからいけないのよ!」

「し、小説家にデッサン力は必要無いからいいじゃないですか!」

「ふむ、でもデッサン力が無いんじゃ、イラストとかを描いてどうこうするタイプの能力じゃないみたいね……ってこんな所で立ち話している場合じゃないわ、敵の動向を探らないと!」

「敵……攻撃を受けた感じ、雷の能力っぽいですね」

「ええ、敵は過激派に所属する拡張道具使いの二人組、ライセとリンネよ」

「まぁキャストは言われなくても分かります」

「ライセは針を使って雷を操る能力ね、もう一人リンネは鏡を使う能力というのは分かっているんだけど、具体的にどんな能力かは分からないのよね」

「あんまりそう言う情報って公開されてないんですね」

「能力者にとって自分の能力が知られると言う事は、弱点を知られるのと同義よ! 現にライセの能力が雷を扱うのなら、絶縁体で身を包めば対策可能なんだから」

「そう言うもんですか」

「だからと言って油断は禁物よ、雷って言うのは確かにわかりやすいし便利そうな能力かも知れないけど、単に暗殺目的なら銃で襲撃した方が遥かに容易いわ、きっとまだ隠している特性があるはずよ」

「成るほど……考えさせられますね、要するにまだ敵の情報は全然ないも同然なんですね」

「……そう言う事よ、まぁでも、ライセが攻撃系なのは間違いなさそうだし、きっとリンネの能力は情報収集系とかサポート系に違いないわ」

「じゃあ僕等が攻撃されたのって……」

「具体的には分からないけれど、相手は何らかの能力を使って私達が立ちはだかる事を察知した、そして先手を打って攻撃したとみて間違いないわね」

「それで、これからどう動くんですか?」

「そうね……とりあえず、敵の次の手を待ちつつ暗殺目標の護衛に専念しましょう」

「そんな感じでいいんですか!? もうちょっと作戦練って挑まないと!」

「っても相手の能力が詳しく分かる訳でもないし、それこそとりあえずこっちが動いてみないと何にも分かんないでしょ!」

「とりあえずミライさんが作戦指揮に向いて居ないのが分かりました……」


[続く]


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