寓話セオリー4
[4]
「ある時。亀は兎に歩みの遅さを馬鹿にされた。
そこで亀は兎と、山のふもとまでかけっこの勝負を挑む事となった。
――兎と亀」
「もしもし、かめよ、かめさんよ。せかいのうちに、おまえほど。あゆみのろい、ものはない、どうしてそんなに、のろいのか?」
「うわーミライさん兎役似合ってますねー」
「あら褒めても手加減しないわよ」
「って言うか、これ普通に勝負しちゃって大丈夫なんですか? 別にこの甲羅もどこぞの仙人が背負う様な10kgの重りって訳じゃなく普通に軽めの素材で出来ていますし。普通に勝負したら多分勝てますよ」
「あらなかなかの自信じゃない?」
「だってミライさん普通に小柄な女子じゃないですか、確かに瞬発力で遅れは取るかもしれませんが、こう見えて僕は男の子ですから、持久力の差であっさり決着がついてしまいますよ」
「ふん、そう言う余裕は決着を付けてから言うべきね、それじゃよいどん!」
「あ、卑怯!?」
「あははははバーカバーカ、後から皆の盛大な拍手と共にゴールにたどり着くがいいわ!」
「くっ、運動会の嫌な記憶が蘇りそうだ! 何としても追い付かなければ!」
「果たしてそう上手く事が運ぶかな! 忠実なる部下達よ足止めを!」
「ここは通さないわよ!」
「立ちはだかるの」
「うわ何か手下を妨害工作に送り込んできた!? って言うか兎なら普通に素のスペックで勝負してくださいよ!」
大きく引き離された道を、亀は懸命に進んでいく。
「ふぅ、背負っていた甲羅がカーボン繊維製で手下は殴り疲れて帰ってくれたけど、道中に落とし穴やらトラバサミやら色々な罠があって結局ゆっくりと進まざるを得ないとは、こりゃ今回は負けたかな」
亀がゆっくりと道を慎重に進んで居ると、木陰で倒れる兎が見えてきました。
「まさか忠実に昼寝をしているっ!?」
亀が近寄ると兎は、罠を仕掛ける途中の様で、薬品を手に眠りこけていました。
「成るほど、睡眠ガスを噴出する罠を作ろうとして漏れたガスを吸ったんですか、まぁ自業自得ですね、これで逆転っと」
亀は寝ている兎を通り過ぎて道を進み……そしてふときずいたように兎の元へと戻りました。
「ほら、ミライさん、起きてください、勝負の最中ですよ」
「んあぁー、はっ、私寝てた!? もう勝負終わっちゃった!?」
「いえ、まだ途中ですよ」
「な、何で……私に構わず先に行けば、普通に勝てたじゃないの……」
「いや、ほらミライさんには日頃お世話になっているし、今回の勝ちくらいは譲ろうかと思いまして」
「な、ば、バッカじゃないの!」
兎は慌てて掛け出し。そして少し進んだ所で待っていました。
「ん」
兎はかめに手を差し出します。
「え?」
「ほら、折角だし繋いでやるって言ってんの! そんんで、まぁ勝負は引き分けにしといてあげるわ」
『教訓:友情に勝る勝利無し?』
[続く]




