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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
55/94

寓話セオリー3

[3]


「ある日。木こりが泉の辺で木を切っていた。

しかし手を滑らせて斧を川に落としてしまう。

木こりは困り果てて嘆く。

          ――金の斧」


「ふぅ、次はコレか……ってか、木を切るとか凄く疲れるんで、もうこのまま斧を失くしたまま帰りたい」

「はいはいはいはい! 女神が泉から登場する前に帰ろうとしない!」

「ミライさんが女神ですか、じゃとりあえず泉の底に沈んだ斧拾ってください」

「あーもうっ! 順序を守りなさい、順序を! はい、まずは、貴方の落とした斧はこの金の斧か銀の斧か?」

「いや常識的に考えて普通の木こりが金とか銀の斧持って木を切りに来ますか? 考えれば分かるでしょ? 普通の斧に決まってるじゃないですかゆとりですか?」

「…………じゃ、貴方の落とした斧はこの普通の斧ですか?(苛)」

「はいはいそうですよ、ほらさっさと金銀纏めてくださいよ」

「はいバーカ引っ掛かったぁ! この斧はお前が落とす前に別の木こりが落とした違う斧でした! はーい、嘘つきには何も渡しませーん!」

「ちょ、え、話が違うっ!?」

 女神は湖の底に消えてしまいました。

「……成るほど、そう言う趣向で行くわけですね、良いでしょう受けて立ちますよ」

 そう言って木こりはいったん家へと帰り、大量の斧を抱えて戻ってきました。

「はいどっせーい!」

 木こりは斧を泉に向かって大量に投げ込みます。

「不法投棄すんな!」

 すぐさま女神が泉から姿を現します。

「ったくっ……で、貴方が落としたのはこの金の斧? それとも銀の斧?」

「あ、別に斧はまだまだ沢山あるんで拾ってくれなくて大丈夫ですよ?」

「……あ、そ」

 不機嫌そうに女神は泉に帰って行きます。

「っそーれ」

 すかさず木こりは泉に斧を投げ込みます。

「だから捨てんじゃないわよ!」

「いやぁー今度は手が滑ったんですよ」

「ったく、じゃ貴方が落としたの箱の金の斧? それとも銀の斧?」

「いいえ違いますよ」

「お、今度は真面目にやるつもりなのね、じゃこの普通の斧かしら?」

「いやそれでも無いですねー」

「はっ?」

「ほらよく見てくださいよ」

「何よ、これでしょ貴方が落としたのって」

「違いますよそれはさっき大量に落とした斧の一つです、僕が直前に落とした斧はもうちょっと形状が違うんでよく探してきてくださいよ」

「くっの!」

「ほら、まだまだ落とすんで早く落とした奴見つけてくださいよぉ」

「ちょっと趣旨違えるんじゃないわよ! アンタは正直に言って落とした斧と金銀の斧を持って帰ればいいでしょ!」

「だから僕は正直に言ってるじゃないですか、早く僕が落とした斧拾ってきてくださいよぉ、ちゃんと落とした斧なら正直にそれですって言うんで」

「無理よ、無数に斧なんて転がってるんだから!」

「あ、また一つ落としてしまいましたね。あ、勿論金銀じゃないですよ、これも探して貰わないとー」

「あーもうっ! 本日の営業終了!」

「そんな銀行みたいな……」


『教訓:大事な物は手放さない様にしよう』


[続く]


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