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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
53/94

寓話セオリー1

『寓話セオリー』


「ある夏の日。

 アリ達はせっせと食料を運び、巣から出たり入ったり。

 忙しなく働くアリを後目に、キリギリスは呑気に歌を歌っていた。

          ――アリとキリギリス」


「何だか童話みたいな出だしですね」

「そう、今回は寓話セオリー、物語を通じて教訓を伝えていくわよ!」

「童話とか絵本セオリーじゃ駄目なんですか?」

「そんなものは図書館でも行って読んで覚えなさい! 寓話と言うのは教訓とか、道徳的なメッセージが強いのよ、物語を創造する側としては、この教訓を伝えると言う点を強く意識しなさい! メッセージ性が無いと中身が軽くみられるのよ」

「なるほど了解です、で、今回僕はアリの役なんですね」

「そ、で私がキリギリス」

「幼稚園とかお遊戯会の劇を思い出しそうです」

「ささ、もう物語は始まってるのよ、私は気長に歌ってるから、アンタは精々汗水たらして地味に働いて居なさい」

「はい、そうさせていただきます」

「いつになく素直ね?」

「だって、これキャスティング的にもアリとキリギリスですよね?」

「まぁそうなるわね」

「じゃオチは冬に飢えて苦しむミライキリギリスをアリの僕が優しく手を差し伸べるって展開じゃないですか、珍しく悪く無い役回りですよ」

「……果たしてそううまくいくかしらね?」

「え?」

「まぁとにかく、私は歌っているから、アンタはせっせと働いて居なさいよ、ラララー♪」

「ええ、そうさせていただきます、いやぁー冬が待ち遠しいいですよ!」

「ラララー♪」


「やがて冬が来て。

 キリギリスは食べ物を探すが見つからず――」


《皆―今日は寒い中、集まってくれてありがとー!》

 ドームを埋め尽くす観客達(アリ)の歓声が響きます。

《差し入れてくれた食べ物のお礼に、精一杯歌うからねー♪》

「ば、馬鹿な!」

 まだまだアリ達はドームへと集まって行きます。自分達が夏場に集めた食料を持って。

「ほらっ! まだ席空いてるわよ」

「このコンサートは聞き逃せないの」

「皆駄目だよ! せっかく自分達で集めた食料なんだから! それ貢いだら自分達が冬を越せ無くなっちゃうよ!」

「でも私達、夏場は我慢して汗水流して一生懸命働いたのよ?」

「たまに息抜きくらいしたいの」

「そんな、一生懸命働いたって言うのにこれじゃ何の意味も無い……」

《それじゃあ最初の一曲目「真面目に働くだけじゃ馬鹿を見る」歌いまーす!》

 マイクを手に、いつの間にか一流の歌手へと変貌を遂げたキリギリスの歌声が、ドームを震わせました。


『教訓:盲目的に働くだけでは痛い目を見る?』


[続く]


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