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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
51/94

部活セオリー4

[4]



「戦いとはいつも虚しい物だ。

 勝敗に関わらず、心のどこかに穴が開いたようになる。

 それが己との戦いであるならなおさらだ。

 空になった鍋、空になった心。

 彼らは確かに完食し、戦いには勝った。

 しかし試合には負けたのかもしれない。

 部屋に倒れ込む彼らは、全身でそれを表している。

 燃え尽きたのだ。

 真っ白に。

 しかしやり遂げた事もまた事実である。

 彼らの戦いはまだまだ続くのだ。

          ――闇鍋」


「……やったわ、やり遂げたのよ……」

「ぐっふぅ……カレー粉投入してもそんなに美味しくはならなかったですね……」

「仕方ないわよ、ここには後で美味しく頂いてくれるスタッフとか居ないのよ」

「現実って厳しいですね……」

「でもたまに当たりとも思える闇鍋を錬成した時の心の高鳴りを経験してしまっては、もう引き返せないわ」

「こんなんで当たりなんて引けるんですか?」

「まぁ大抵はネタとか色物に走って混沌と化すけどね、でもそうなった時のトランスがまた楽しかったりするのよ」

「無駄だ……色々な物の無駄使いだ……」

「この無駄とも思える頑張りが、部活としては大事なのよ、時間の限られた青春時代を如何に全速力で駆け抜けられるか、それが部活物の描き方よ!」

「確かによくまぁこんな他愛無いイベントで盛り上がれるよねって感じですが……」

「大体必要なイベントをこなせるなら、部活の内容は重要じゃないわ」

「必要なイベントですか……」

「まぁ大体は恋愛モノと似たような構造を取るからその辺は割愛するけど、夏合宿とかそうよね」

「無駄にそう言うパッケージ的な活動をするのが青春って事ですか」

「そうそれよ。無軌道な衝動に任せて突っ走るのがいいのよ、若気の至りは下らないくらいがちょうどいいのよ、馬鹿騒ぎこそ青春なのよ!」

「そんなんで誰が得をするんですか……」

「損得勘定じゃないわ、全ては心で感じ取るのよ」

「わー、照れるくらいなら言わなければいいのに……」

「ああもう! とにかくこうなったら口直しと闇鍋完食を記念して打ち上げ行くわよ!」

「ええ……まだ何か食べるんですか、ああ、そう言えば女子はスィーツ別腹って言いますっけ……」

「鍋喰いに行くわよ!」

「この期に及んでまだ!?」

「何言ってるのよ、闇鍋部員たる者、常に究極の具材を求めて鍋の探求あるのみよ!」

「じゃ普通に鍋部でいいのでは……」

「私達の青春(鍋)はまだまだ終わらないわよっ!」

「あ、何かそれっぽく終わらせたっ!」


[続く]


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