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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
49/94

部活セオリー2

[2]



「闇鍋とは。

 複数人が各自、食材を持ち寄り、暗中で調理して食べる鍋料理を指す。

 手順は以下の通り。

 その一。それぞれ参加者が秘密裏に具材を持ち寄る。

 その二。鍋のスープを温めながら、具材を入れる順番を決める。

 その三。明かりを落とし、持参した具材を鍋に投入する。(投入者以外を目隠しすると言う方法でも可)

 その四。煮上がったら一人づつ順番に鍋に箸を入れ具を取り分ける。(一度箸に掴んだ物は必ず取る事)

 その五。完食する事。(食べ物を粗末にしてはいけません)

          ――闇鍋」


「迸る(しる)、沸き立つ鍋! 腹の内を隠したまま集結する戦友達! 試行錯誤し用意される至高の具材! 勝利を掴み取る箸使い! 闇鍋と書いて青春と読むのよ!」

「鍋なんて超インドアな活動に何でそんなアウトドアな表現付けるんですか……」

「部活物に大事なのはテンションよ! どんなに下らない事でも、元気よくやる気を出して熟せば相応にかっこよく見えるのよ!」

「単に勢いでゴリ押しな気が……」


 場所は家庭科室。火に掛けられた鍋を前に、他の面子も既に登場していた。

「あら、早くも怖気づくとは先が知れるわね」

「まったく新人はたよりないかぎりなの」

 ライセとリンネも具材の入った袋を持って鍋を囲む。


「はぁ、何分闇鍋は初体験な物で」

「まったくしっかりしなさい、とりあえず闇鍋にちなんでスープにはイカ墨を使ってみたわ、これでスープも漆黒よ」

「イカ墨は良く聞きますけど、何でタコ墨だと駄目なんですか?」

「イカ墨はタコよりもアミノ酸と粘性が多いから料理に適しているのよ、っとイカ墨薀蓄を挟んだ所で鍋も程よくあったまって来たようね、それじゃ具材を入れ始めましょうか、暗幕降ろしてちょうだい」

「ちょ、ちょっと待って下さい、具材って一体何を入れようとしてるんですか!?」

「はぁっ? それ教えたら闇鍋に成らないでしょうが」

「いやでも、行き成り未知の食材と対面する度胸は流石に……」

「まったくとんだチキンね……仕方ないわね、今回は事前に食材を報告し合いましょうか、闇鍋の面白さの大半が消し去る訳だけど……ちなみにアンタは何を持ってきたの?」

「え、僕はとりあえず闇鍋の経験自体が無いんで、鍋って聞いて適当に野菜を」

「はぁ態度もそうなら食材選びも臆病ね、そんなの闇鍋に投入しても面白くないじゃない」

「そう言うもんなんですか……ちなみにミライさんは何を?」

「私? 私は肉よ」

「ミライさんだって結構無難な食材選んでるじゃないですか……ちなみに何の肉ですか?」

「何かの……肉よ」

「あ、闇鍋ですからそこは食べてみてのお楽しみって事ですか」

「いいえ、妙に安かったから仕入れたんだけど、何の肉かは表記なかったから私も知らないの、とりあえず何かの肉よ」

「怖い! 闇鍋の闇の部分が鍋では無く入手ルートって所が怖いですよ!」

「全くミライは相変わらず得体の知れ無いモノを持ってくるわね」

「え、じゃあライセさんはとりあえずまともな食材を持ってきたんですか」

「当たり前よ、ミライみたいに産地不明な代物じゃないわよ、今朝趣味の釣りで撮って来たばかりの新鮮な奴なんだから♪」

「へぇ釣りが趣味なんですね、で、釣果はなんですか?」

「さぁ? 釣るのは好きだけど魚に興味は無くて……何か吊り上げたらぷくーって膨れて可愛かった奴なんだけど、ちょっと美味しそうじゃない?」

「怖い! 無知ゆえの無闇さが! フグには毒があるので素人が調理してはいけないんですよ!」

「フッ、皆まだまだあまちゃんなの、闇鍋の真の力を全く持ってしらないおろかものどもなの」

「いやリンネの持っている袋のロゴがホームセンターな時点で既に却下の姿勢に入りつつあるんですが!」

「そうね、流石に闇鍋に食べられない物を投入するのはルール違反よ。この長靴とタワシは没収」

「なんと……ではしかたないの、食後の楽しみにと買って置いたお菓子で我慢するの」

「一応、食材投入のルールには諸説色々あるけれど、とりあえず、生きていないモノ(事前に主催者による食材の検閲を挟まない限り大参事に成る可能性が大きい)。生で食べても健康を損なわないモノ(闇の中での調理故に火の通りが分からない為)。液体と、液状化するモノは比較的禁止(食べるべき具材が無くなる上に、鍋全体に被害が及ぶ為、巾着や餃子の皮で包む事で可となる事もある)の方向よ」

「ああ良かった、これ食材公開しないまま食べてたら第三次どころか死人が出てましたよ!」

「ふっ……それもまた青春」

「かっこよく纏めないでください……」



[続く]


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