ホラーセオリー3
[3]
「この世には、目には見えないモノが居る。
それらは決して、この世に強く影響しない。
匂いや、雲や、虹の様に、ほんの一瞬波長が合う程度の希薄な存在だ。
しかし時に暗闇や、不安な心。鋭敏に研ぎ澄まされた感覚や、そう言った存在に対する焦点を合わせる気配が、時に人を向こう側へと誘う時がある。
彼等がこちらに来たのではない。向こう側への扉は、いつでもどこでも、凄く身近な所に開いている。我々が時に不用意に、何の準備も無く、不躾に踏み込んでいるに過ぎないのかもしれない。
もし、出会ってしまったのなら……。
何かを覚悟する事だ。
何を覚悟するかは、相手による。
――怪奇現象」
「はいはーい終了―!」
「え、もういいんですかミライさん?」
「何か歩き疲れた」
「え、凄く納得いくけど何か腑に落ちない理由で終わるんですね!?」
「ってか、全然怖がらないし」
「いやぁ、流石に今時お化け屋敷でももうやってないんじゃないかと思われるくらいチープ感全開の仕掛けにはある意味で驚きましたけどね」
「あと、怖がられたらそれはそれで鬱陶しいと言う事に気づいたわ」
「そ、それはどうも……」
すると、突如として暗がりの奥から。
『……ザ……ザザ……ザザザ……』
「ちょっともう終わりよ? 誰?」
ミライの声に、暗がりの奥から釣竿に鬼火を垂らしたライセと、マイクを手にリンネが出てくる。
「なーに? 私じゃないわよ?」
「マイクの電源はオフになっているの……多分、近くを通ったくるまのしゅうはすうがあったと思われるの」
そう言って、リンネは仕掛けに使ったスピーカーを手に持って答える。
『……ザザザ』
「ほらなの」
「あらホント、電源は言ってないのに壊れちゃったかしら?」
リンネとライセがスピーカーの様子を見る。
『……ザザザ……ザザ……』
『ザザザザザザ……ザ……』
『……ザザザ……ふふ……ザザザ……』
「今何か声が入ってなかった?」
不意にミライがスピーカーから流れる雑音に声が聞こえたと言いだした。
「ってコレも仕掛けですよね? 終わったと言って油断させておいてって奴ですよね? 妙なトーンだからちょっと雰囲気にのまれそうになりましたけど、騙されませんよ?」
「違うわよ、何かラジオのスイッチが入ったんでしょ」
『……ザザ……ふふふ……』
「ほら、どっかの放送が雑じってるのよ」
『……ザ……ふふ……ねぇ……』
「あれ? 電源切ってるのに止まらないわね?」
「もう騙されませんからね! 全部仕掛けだってわかってるんですから!」
「ちょっと落ち着きなさいよ、ああもうていっ!」
ミライが踵落としを決め、スピーカーの音が止まった。
「よっしこれで解決」
「こわれたの」
「力技ね」
「いいの、もう帰るんだから、ほら片付けるわよ! ライセは火の玉仕舞って。リンネはそのスピーカーとマイクを車に運ぶ、あと窓の外の影も回収しといて」
「窓の外なの?」
「それ私達の担当じゃないわよ?」
「え? でも私何もやってないけど」
「ああもう分かってるんですからね! そう言う雰囲気に持って行って実は全部仕掛けだって僕は分かっていますよ!」
「もうちょっと落ち着きなさいって! こういう時パニクってる奴が一番最初に餌食になるのよ!」
「マジでそうなりそうなんでそう言うフラグ立ては禁止の方向でお願いします!」
「え、でもじゃもしかしてもう一人居るの?」
「おかしいですよ! そもそも廃校で生徒も居ない訳で、余る席とか無いわけじゃないですか!」
慌てる僕を余所目に、落ち着いた様子でライセはお茶の缶ジュースを手に手で体を仰ぐ。
「んもう、何にしても早く帰りましょう、暑くて敵わないわ……あと余ってる缶ジュース貰うわよ」
そう言って、手にした缶ジュースを開けて一気に煽る。
「缶ジュース余分にあるなら僕も欲しいですけど」
「ああ、あれロケ弁のお茶よ、余分には用意して無いわよ」
「え、ちょっと待って下さい、余分には無いならあれは?」
「何故か一つ余ったのよね」
「人数分用意したのに余ったんですか?」
「あ……」
「もしかして、これってそう言う解釈なんじゃないですか?」
[続く]




