ファンタジーセオリー4
[4]
「[闇の導き/カラバル・ラガレド]の使徒は闇に好まれる。
光と闇の戦いにおいて闇の軍門に下った者達は、その尽く闇に魅入られ、闇に没した。
彼等は死後も闇の導きのまま、闇に潜み戦い続ける。
その身が朽ち果て、骨だけに成ろうとも。
――スケルトン」
「光よ、その加護で闇を払え!」
「闇の導き(カラバル・ラガレド)よ、心の枯れし躯、その業なる戦意をこの世に繋ぎとめる標を還したまえ!」
ミライとライセの光と炎がスケルトンを飲み込んだ。
それによりようやく骸骨は、元の物言わぬ屍に帰る。
「はぁはぁ……結構大変でしたね」
「何よこんな所でへばってちゃ、本命の前に倒れるわよ?」
「へ、本命って?」
「ドワーフの坑道は、そのままドワーフの地下王国に繋がっているのよ」
「じゃ、ドワーフの王国を目指しているんですか?」
「簡単に言えばそうね」
「……ドワーフの王国と言う物はもう存在しないの」
「そうなんですか」
「そうよ、地下を支配し数多の鉱石、金銀財宝を地下中から集めたドワーフの王国は、しかしある日突如空から飛来した闇の使徒により一瞬で滅ぼされたわ。そして今旧ドワーフの王国を支配しているのは一匹の闇の使徒、赤竜[ガランドール]」
「竜って」
「吐く息は灼熱、爪には猛毒、動くだけで大地は揺れ、翼を羽ばたかせれば海を軽く超えると言われる、神話時代より生きる生物よ」
「そんなのと戦って勝てるんですか?」
「大丈夫よ、別に戦う訳じゃないわ、竜の隙をついて王国に忍び込んで、ちょちょっと宝を幾つか失敬するだけだから」
「何か夢と浪漫に溢れている割にやる事がせこいんですね?」
「こういう所が現実的なのがハイ・ファンタジーなのよ」
「辿り着いた地下王国。
切り立った谷間に聳える、黄金色の城。
悠久の年を掛けて作られた、宝飾の都。
今は静かに眠る黄金都市。
――ドワーフの王国」
「さぁ、此処からは慎重に行くわよ。私の魔法で姿と音を極力出ないようにはしているけど、向こうはドラゴン、油断は禁物だからね」
「ううう、此処まで来てこんな泥棒まがいな行為をさせられるなんて何か嫌です」
「人生なんてそんなものなの、どれほど過程を得て、どれほど高尚な理由を得ても、やる事の本質はかわらないの」
「こんなにもお宝だらけだと、何を持って帰ろうか悩む所よねぇ♪」
「持ち帰るのは勿論、この中で一番価値のある物よ!」
「目星はついているんですか?」
「ほら、来る途中で騎士の人が言ってたでしょ? エルフの王国の秘宝が竜に盗まれたって、今回はそれが目的よ! いくら金銀財宝ったって持って帰れる量は決まっているわ、それだったら、そういう曰く品を王国に還す事で、恩赦と名誉を同時にゲット!」
「何かあざといですね……で、その秘宝ってどんなのですか?」
「確か鎧だった気がするわね、えーっと丁度あんな感じの」
ミライが指さす方向に、赤と金に彩られた鱗状の輝きがあった。
しかしソレはゆっくりと動き、そして黄金色に輝く瞳を開いた。
「ミライさん、アレって……」
「やっばぁ、早速見つかった!」
「「ド、ドラゴン!?」」
竜が大口を開けて咆哮する。
[続く]




