世界観2
[後編]
「そのタイミングってどんな感じなんですか?」
「そうね、読者を冒険者だとしたら、設定なんかは道具かしらね。冒険に何も道具を持たずには行けないでしょ? でも最初っから全部目いっぱいに道具持たされたら、重いし把握しきれないし冒険に行く気も萎えない? 特に最初の方は、ちょっと心許無いけど何も無いよりマシって程度の道具を持った方が、ワクワクするじゃない?」
「おお! なるほど、で、最後はちょっと余るくらいになって、結局便利そうだけど最後まで使わなかった道具とか出たりするんですねっ!?」
「まぁそう成らないようにするのが一番なんだけどね、結局読者には提示しなかったけどっていう裏設定とかは沢山あった方がいいわね、それだけ世界観に深みが出るわ」
「でも、結局載せないなら無駄になるんじゃ……?」
「はぁ……例えばよ、携帯が無い世界にしましょう。そこで、もし貴方が急に誰かに連絡取ろうと思ったらどうする?」
「え? 携帯が無いんですよね? じゃPCで」
「……通話機器やネットが全部使用不可にしましょうか」
「え、そんなの想像出来ないですよ!?」
「いいからしてみなさいよ、通話……電波とが駄目だからテレビとかラジオも無いのよね」
「ええー……? っと、あ、新聞はいけますね! あと広告とか看板は行けそうです、あと狼煙とか?」
「まぁそう言う手段しか、離れた相手と繋がる手段はないわね」
「待って下さいよ、信号とかも駄目になるのか? 連絡を取る手段が乏しいから皆あまり家からでなくなるんじゃないですか? だって、不慮の事故とかにあったら困りますし……世間の情報を知る手段は新聞とかなら、新聞を作る人達が情報操作し放題じゃないですか!」
「まぁ詳しくは電話が普及する前くらいの時代を調べれば色々と分かると思うけど、でもそれってこの世界の話でしょ? 何でそんなに悩んだの?」
「だって、僕にしてみれば電話なんてごく当たり前で」
「そう、そう言う事よ。例えば今この世界で携帯は当たり前に様に使われているけど、電話が生まれて携帯が普及するまでには長い時間がかかって歴史があり、世の中が色々と変わったわけでしょう? それをわざわざ説明する必要は無いけど、でもその世界を作った作者としては、例えば今の様に電話が無い世界をすらっと説明できる位には裏設定を作っておいて損はないのよ、それだけイメージを膨らませる余地が出来るんだから」
「載せない情報も大事なんですね」
「まぁ、何事もほどほどにね、読者は設定じゃなくて物語が読みたいんだから」
「なるほど……でも、前提条件が結構必要な場合ってどうすれば?」
「そう言う時こそ、箱庭の本領発揮な訳よ。いい、人が大勢いる空間には、様々な空気が生まれるの、例えば、そこがどんな異界で、どんな異文化で、どんな異種族が通っていて、どんな摩訶不思議な事が行われていようと、シュチエーションが学校の教室って説明があるなら、誰しもが同じイメージを想像する訳よ」
「確かに、学校の教室なら簡単にイメージできますね」
「だから最初はそういう既存のイメージを先行させて、雰囲気を作っておくの。そこから小出しで設定を公開して行けばいいわ、なるべく最初はイメージし易い物から入るのがコツよ。全く異質な世界なら、視覚以外の五感……例えば目の前の物の手触りとか匂いとかそういう所からイメージを与える手もあるわね」
「成るほど、例えば今の僕を読者に伝えようとするなら……目の前に小柄でツインテールの女の子が机の上で、何だか艶のある仕草で足を組んでいて、その手触りは……おお、凄い触れただけで形は変わるのにちょっと力を緩めただけで反発する柔かさで」
「何処触っとんじゃぁぁぁっ!」
「グゲゥッ!」
「ど、どさくさに紛れて乙女の胸に手をやるとか!」
「いや、待って下さいミライさん」
「え、えぇ?」
「…………正直貧乳だからって侮ってました! 物凄い気持ちよかったです! ごめんなさい!」
「謝る所が違うっ!」
[続く]
[補足]
「さて今回は世界観設定ね」
「前回までのを知り合いに見せたら、書き方講座なのにストーリーが濃すぎる地の文要らなくねって言われたので、今回は会話文のみでやってみました」
「はい、こういうのを裏設定って言いまーす」
「まぁそうなんですが」
「世界観を説明する上で、既存の説明を取り扱うテンプレートな手法が非常に便利なのよね、ただし、様々な所で使われたりしているんで、独自の概念や価値観や視点を盛り込んでオリジナリティを出さないといけないんだけど」
「たしかに、[ここは学校です]って説明でも何でもないしね」
「その他にも、[むかし、むかし]とか[銀河の彼方で]とか[犯人はこの中に居ます]とか、既存のイメージを持つ説明は色々とあるわ、探してみると面白いわね。ただまぁ、入りやすくなる半面、既存のイメージが強く影響を受けるから、そこから離脱しようとすると結構大変だったり」
「リスクもあるって事ですね」
「設定に関しては、なるべく歴史や文献なんかを漁って既存で間に合うようなら、そういう所から持ってくるのも手よ、自分で一から作るよりも優秀で濃厚で深い設定資料がこの世界には溢れているんだから」
「そう考えると、誰が読むんだよこんな資料って情報サイトとかマニアックな本がだんだんとありがたい経典のように思えてくるんだよね」
「まぁ纏めると、設定資料はアイテムである! 冒険に役立つ道具を集めるべし!」
「大丈夫、集めた道具はきっとキミの冒険の役に立つはずさ!」
[注意]
この物語はフィクションです。
此処で紹介される手法は、我流の要素を多く含みます。
よって、この物語を読む事によって面白い作品が書ける事を保証する事は出来ません、あらかじめご了承ください。
また私見や偏見を織り交ぜておりますので、気分を害する方も居ると思います。
あくまで一つの意見と、軽く流して頂けると幸いでございます。