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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
37/94

ファンタジーセオリー1

『ファンタジーセオリー』


「全く異なるモノ同士の交流は、時に予想も付かない幸運を生む事がある。

 [光の導き/ミラ・ラガルド]と[闇の導き/カラバル・ラガレド]の交流もまた、この世に多くの出来事を与えた。

 空が生まれ陸が生まれ、其処に住む生命が生まれた。

 生命はやがて、文明を築いた。

 ある生命は光の導きに師事し、風と陸の魔法を生み出した。

 またある生命は闇の導きから、炎と水の魔法を盗み出した。

 しかし、生命の扱いに対して光と闇は意見が分かれ、争い滅ぼし合う事になる。

 そして光と闇はこの世から姿を消した。

 灰色の大地に住む生命と、多くの戦禍の痕と、そして導きを残して。

          ――叙事詩」


「程よい楽曲に混ざって、喧騒が響く。

 ここは往来の宿場町。

 旅人の酒場。

 出会いと別れの集会場。

 酒の匂いと香ばしい料理の匂いと、隠し味のハーブの香りと飾られた花の香りと踊り子の香水の香り。全てが入り混じった、魅惑と誘惑の喝采場。

 テーブルに着いたのならさぁ御注文を。宿か料理か冒険か。

 ミルクなんて言う奴は出ていくがいいさ。

 情報が欲しけりゃ、一番高いご注文を。

         ――酒場」


「さぁ覚悟はいい? ついに剣と魔法のファンタジーセオリーよ!」

「冒頭が酒場って、冒険セオリーと被ってません?」

「ま、普通その辺は色々と試行錯誤して、読者の興味を惹く出だしでスタートするのが理想的よ、でもとりあえず今回は王道遵守でいくから」

「でも、ファンタジーセオリーってどうなんですか? 要するに勇者と魔王の奴ですよね?」

「はぁ、そう言うゲームの話とごっちゃにしちゃ駄目よ、一概にファンタジーって言っても種類は結構色々とあるんだから。大まかに分けるとしても、ロー・ファンタジー。ハイ・ファンタジー。ヒロイック・ファンタジーってカテゴリー出来るわ」

「どういう違いがあるんですか?」

「ロー・ファンタジーは、日常や現実世界に魔法とかそう言った要素を付加する世界観を指すわ。現実世界でファンタジーっぽい事をするのね。ハイ・ファンタジーは異世界物、そのまんま異世界の話を描いたり、現実世界の主人公が異世界へ行ったりする話がそうね。ヒロイック・ファンタジーは英雄や勇者が悪の魔法使いや魔王とかと戦うタイプ。今回はハイ・ファンタジーで展開して行くわよ」

「はぁ、で、どんな感じがハイ・ファンタジーなんですか?」

「そうねー、出てくる敵とかがちゃんと設定を作り込まれているか、宗教的だったり歴史的なバックボーンや有名作のセオリーを踏襲出来ているか、魔法に説明がちゃんとつけられているかとかがしっかりやって居れば、本格的ファンタジーって認識されるわね。異世界だけで展開する話を指輪型、主人公が異世界へ行くのをナルニア型と区別する考えもあるわ」

「はぁ、単にゲームっぽくするだけじゃ駄目なんですね」

「っと言う訳で、酒場で仲間集めよ!」

「そこはゲームっぽいんですね!?」

「って言うかゲームの元ネタがこっちなんだから」

「はぁ、なるほど」


 ほどなくしてテーブルに自分達以外に二人の新たな仲間が席に着く事になった。

 まずは青い髪の女性。全身を覆うゆったりとしたローブからでも分かるほど胸があり、妖艶な顔立ちは見る者をひきつけてやまない。

「どうも、魔法使いのライセよ、よろしくね♪」

 続いて赤髪の少女。身の丈に合わない鎧と、戦斧を持ち、頭部鎧のバイザーを上げ台本に目を落とす。

「ドワーフのリンネなの、よろしくなの」


「まぁやっぱりいつもの面子ですよね……」

「あ、それで私がエルフのミライよ」

「あ、よく見れば耳が長い!?」

「さぁ仲間が揃ったら冒険に出発よ」

「え、ちょっと待って下さい僕は? 僕には何か肩書き解かないんですか!?」


[続く]


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