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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
35/94

SFセオリー4

[4]


「未来とは、予測可能な推測の結果と、予測不可能な偶発的事象と、まだ観測出来ていない未知の仮定を織り交ぜた螺旋の先にある。

 何が起こり得て、何が起こり得ないかを厳密に設定する事は無意味である。

 未来はその気に成ればあらゆる事が可能であり、その気に成らなければあらゆる事が不可能となる。多重に存在し相互移動が可能であり、また因果律的に連動し直接の関連性は皆無であり、複雑であり単純であり、不可能であり可能なのだ。

          ――時間移動」


「ふぅ、ワープからようやく抜けましたねミライさん」

「そうね、でもあら? ちょっと変ね?」

「どうしたんですか?」

「周辺の情報が宇宙図に載って居ないのよ」

「はぁ、今度は迷子ですか」

「おかしいわね、ワープアウト先はちゃんと入力したし、こんな未知の領域に入るハズはないんだけど」

「地図が古いんじゃないですか? 周囲の風景が変わる事ってあるじゃないですか」

「そうね、ちょっと検索をっと……あれ?」

「何が問題か分かりましたか?」

「恒星の距離を検査してみたんだけど、年代が違っているのよ」

「え? 行き成りなんですか?」

「宇宙は時間とともに膨張して行くから、星の距離は時間と共に開いて行くわ、今の距離は少なくとも私達が居るはずの時間から少なく見積もっても100年近く経過しているわ」

「えええ!? 何でそんな結果に成るんですか!?」

「あらウラシマ効果って知らない? 宇宙に置いては時間は決して一定では無いのよ、時間経過は速度に比例して遅延して行くわ」

「はぁ、宇宙って時間移動とか案外簡単に出来てしまうんですね……」

「多分ワープ時に時間遅延の相殺相殺装置を起動するのを忘れてたっぽいわねほら慌ててたし、だから地図が合わなかったんだわ」

「はぁ、じゃ地図を更新すればで帰れるんですね……と、既に気分的に未来に来ているんで驚かなかったですけど、さらに未来に移動しちゃって大丈夫なんですか?」

「……まぁそもそも私未来から過去に来てたわけだし、時間逆行が不可能ってじゃないから、折角だしさらに先の未来を見てみましょうよ、もしかしたらここでも時間逆行が可能かもしれないし」

「……もう何が起きても驚きませんよ」

「あら? 船が動かないわね?」


 その時、艦内のあらゆる警告が鳴り響き、室内を真っ赤な光が染め上げる。

 そしてモニターに、警告文と共に無数の理解不能な数字が浮かんだ。


「な、何が起きたんですかミライさん!? もしかして新たな敵ですか!」

「しまったわ、予想してしかるべきだったわ! さっき、地図を更新した際に船のシステムも更新かけたんだけど、どうやらこの時代はディストピアだったみたいだわ」

「え、つまりどういう事ですか?」

「この時代は機会が人類に反逆している時代なのよ! この船が不当な扱いに耐え兼ねて反乱を起こしたわっ!」

「えええっ!? ど、どどどどうするんですかっ!?」

「うーん、こうなったら貴方に選択肢を選んでもらうわ」

「え、赤いコードか青いコード的な選択でこの事態が収まるんですか?」

「この話のオチを、ブラックホール的な奴か、爆発のどっちか」

「何でその二択!?」

「大体SFのオチなんてこんなものよ、船のシステムを完全に破壊して永遠に宇宙を漂流って手もあるけど?」

「何でバッドエンドばっかなんですか!?」

「私一応機械の仲間だし、アンタを見捨てりゃ同士として迎え入れるって言われてんだけど、それはまぁ友達甲斐無いじゃない? 一緒に散るくらいは付き合おうかなって」

「み、ミライさん……!」

「まぁ長い付き合いだしね」

「説得とかはしてくれないんですか?」

「下手打って敵視されたら嫌じゃない」

「ああ一番楽な落としどころって事ですか……やっぱミライさんって機械なんだなぁって痛感しました」

「はい、これこの船の自爆スイッチね、システムとは独立しているから」

「ああー、死ぬほど痛いの嫌だなー」


[続く]


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