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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
34/94

SFセオリー3

[3]


「宇宙は多くの謎に満ちている。まだ人類の知り得ない現象、生物、物理法則、まだ人間の踏み込んだ理解の及ぶ知識などほんの氷山の一角にしか過ぎない。

 それ故に人は宇宙に焦がれる。

 それ故に人は宇宙を目指す。

 既存を破壊する為に、常識を凌駕する為に。何より希望ある未来を目指して。

           ――宇宙」


「ミライさん、敵の船が引き離せません!」

「私のチューニングに追いつくとは向こうもやるようね!」

「どうしますか?」

「こうなったらSFの大技の一つを使うしかないわね!」

「大技!? そんなのがこの船に積んであるんですか?」

「ええ、使うしかないようねワープを!」

「ワープって良く聞く言葉な気が……」

「いい? ワープ航法及びワープ理論は諸説は多くあるけれど、現状は実用化のめどは立っていない、所謂空想科学なのよ」

「いやまぁ改めて言われ無くても想像の産物なのは分かっていますよ、だって実用化されてたらもっと世の中様変わりしますから」

「いい? つまりよ、この空想科学の使い方を誤れば……」

「あ、誤れば……?」

「リアリティが薄れるの」

「いやそれそんなに大事な事ですか?」

「まったく……いい? SF何て大体作り話と言う事を前提の読むのよ、逆に言えばある程度読者に納得の出来る説明、展開、理論を作中に示さないと、スマートに話には行ってくれないわ、リアリティが薄れると言う事は読んで貰えるチャンスを一つ不意にするのと同じよ!」

「な、なるほど……そういう方向の問題ですか」

「まぁ突き詰めると時空の崩壊とか相違空間へ漂流とかそういう方向に話を進める事は出来るけど、無闇にそっちのコアな話を振るっても読者はそんなに喰いついてはくれないわ、大抵はSF薀蓄とか科学的考察には興味無い物よ、大人しく物語を勧めた方が無難ね」

「何だかSFって報われないんですね?」

「まぁそれだけ多くの人が手掛けたって事よ、っと準備が整ったようね、じゃワープするわよ」

「因みに、この船のワープってどういった理論なんですか?」

「あら、珍しいじゃないSFの設定とか興味無さそうな顔して」

「いや流石に自分が乗ってる船がこれから行おうとする事ですから、無関心でいられないって言うか、安全確認の為に聞いておきたいなぁと」

「いい心がけね。この船に積んでいるワープドライブは、周囲に滞留している質量素粒子を亜光速加速と同時に集約し、極小規模な重力崩壊を起こしてエネルギーに換算するのよ、それにより理論上の無限加速が行えるわ。それに重力崩壊の波を利用する事により船を一階層違う宇宙に潜航させ、障害物の影響もうけなくなる。さらに言えば多重空間上に同時期に存在する事により量子理論的には通常の空間に居るとも居ないとも取れる状態を取り続ける事が出来る為に、ワープ中の時間経過を存在しなかった事に出来るのよ、そうする事により疑似的だけども空間を転移する事が出来るわ」

「ごめんなさい何言ってるか全然分からなかったです」


[続く]


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