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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
30/94

推理セオリー5

[5]


「さて民さんを集めたのは言うまでも有りません――そう探偵は言う。

 犯人はこの中に居ます――そう探偵は語る。

 謎は全て解けました――そう探偵は宣言する。

 探偵とは語るモノだ。語る事でしか存在できない。

 故に事件を紐解く役を与えられる。

 探偵が解かなければ、事件は終わらない。

          ――推理」


「まず、最初の疑問は何故密室でなければならないかよ」

「え? ミライさんそれって重要な事なんですか?」

「ええ、誰かに罪を着せるなら、鍵は書けない方がやり易いもの、犯人が鍵を掛けた理由は犯人をぼやかす意味もあるけれど、目的としては被害者を部屋から出さない目的もあった」

「え? でも鍵は内側から掛かるんですよ? だったら内側から開錠出来るんじゃ」

「誰かが自分の命を狙っている時に、急に停電に成ったら不安に成るでしょ? そんな時に内側から鍵が掛かる部屋の中に居れば安心するじゃない」

「つまり、部屋の鍵は犯人が書けたんじゃなくて、主が自分で駆けたって事ですね」

「そう、そして二つ目の疑問は、何故主は上着を脱いだり着たりしていたか」

「え、それこそ室温と言う答え以外に理由があるんですか?」

「三つ目の疑問は、主が死んだ時、何故ライセ、貴女が皆を仕切ったのか?」

「え、それはつまり」

「犯人はライセ、貴女だと言っているのよ」


 そう名指しで言われたライセもまた立ち上がって、精一杯反論してくる。

「そ、そんな! どんな根拠があって!」

「私の推理はこうよ、まず私達が主の部屋に行く。この時主は上着を着ていなかった。

 そして次にライセ、貴女が主の部屋に言った時、主にある提案をするのよ」

「提案ですか?」

「主は誰かに命を狙われて怯えていた、そんな主に貴方は恐らくこういった、一度死んだ振りをして来客の反応を見てみましょう、そうすれば殺そうとしている人物は何かおかしな動きを見せるはず……と。そして貴女と主は結託して死の偽装を行う事にした」

「じゃあ、最初に見た主の死って」

「そう実は死んだふりだったのよ、多分背中に血糊を縫って、玩具のナイフを立てたんだわ、主は血糊を隠す為に上着を羽織ってリンネに会った、だからリンネの時には上着を着ていたのね」

「なるほど」

「そして死んだふりをした所で、急な停電。多分これは事前に打ち合わせしていたのかしらね、皆が書斎に来る合図ってとこかしら、そして皆が書斎の扉を開けて。主を発見、そして貴女は最初に主に駆け寄って、皆に指示を与えて一旦部屋の外に出される。手筈ではそこで貴女は皆の動向を探る話になっていたんでしょうけど、実は主の命を狙っていたのは貴女だった。貴女は主の口を塞ぎ、あらためて主の背中にナイフを突き刺した」

「で、デタラメよ!」

「だからこそ、皆が再び書斎に集まった時、床も貴女も血で汚れていた訳よ」

「しょ、証拠はあるの!」

「何で私が個々に集まって直ぐ事情聴衆を始めたのか、貴女に着替えさせる余裕を与えない為よ……持っているんでしょう? 主と共闘して行うはずだった……死んだふりに使った玩具のナイフを」

「くっ!」

 ライセの表情が悔しげに歪む。

 犯人が誰かはその表情を見るだけで明白だった。

「おおお、凄いミライさん! 名推理ですね!」

「まぁそれほどでもあるわね」

「じゃ、これから殺人の動機とかを追求するんですかね?」

「あ、それはページの都合で却下ね」

「えええええ!?」

「別に事件の醍醐味の推理パートは終わったんだし、別にいいじゃない」

「うぇぇぇー、何か腑に落ちない……」

「動機が無くたって事件は解決するのよ」

「そう言うモンですか……」


[続く]


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