恋愛セオリー4
[4]
「夕暮れが僕等を照らす。
窓の外も、机も椅子も、僕等も全てを赤く染め上げる。
薄暗く、誰の表情も読めない中、二人だけの時間が流れる。
――放課後」
「あら、他の二人は何処に行ったの?」
「え、あれ? そう言えば見当たりませんね?」
「おっかしいわね……用事があるから残って言われたのに」
「あ、僕もです。何か別件で頼みごとがあるからって……」
「ハッ! しまった! やられたわ!」
「え、どうしたんですか、そんな険しい表情で」
「ううう……嵌められたわ、いい、私達は幼馴染な訳よ」
「はいそういう設定ですね」
「で、一緒に生徒会に入る仲という訳ね」
「そうですね」
「で、今ここは夕焼けに染まる誰も居ない教室な訳よ」
「はい、そうですね。何かそうやって言われると告白のシチュエーションみたいですね」
「みたいじゃなくて! 今正にそう言うシーンなのよ!」
「ええっっ!? ちょっと何か早ないですか!? 恋愛ってもうちょっと色々とイベントあるはずでしょ!?」
「仕方ないわよこれもページの都合って奴なんだから」
「え、じゃ……今ここで、その告白ですか?」
「ば、馬鹿……照れるんじゃないわよ。いい? あくまでシチュエーションを学ぶための勉強、れ、練習なんだからね!」
「そ、そうですね……で、どっちから切り出すんですか?」
「アンタねぇ、こういの女の子から切り出せとかいうつもりじゃないでしょうね?」
「で、でも大抵漫画とかだとこういうの女子からじゃないですか!」
「わ、私の口から言わせるって言うの!? アンタの癖に生意気っ! いいから、ほらさっさと台詞言って終わらせるわよ」
「え、えーと、その、何て言えば……?」
「ほらずっと前から好きでしたでいいでしょ、そんで私がOKしてはいおしまいよ」
「じゃ、じゃじゃじゃ、じゃあ言いますね?」
「ちょっと……そんな見つめないでよ……」
「だって暗くて表情が良く見えなくて」
「表情なんて見なくてもいいでしょっ!」
「いやぁ、ほら折角ですしミライさんがどんな表情するのか気になるじゃないですか」
「普段と変わりないわよ! ほらさっさと台詞言っちゃう!」
「…………ミライ」
「な、何で急にそこで呼び捨てにする訳よっ!」
「……ずっと、前からずっと……見ていたんです。ようやく自分の気持ちに気づけた」
「……ゴクリ(何処かにカンペとか出てんじゃないのっ!?)」
「ミライ……」
「な、なによ……」
「ずっと前からすきゅれひたっ!」
…………。
「プハハハハハハハハ」
「あああああ、こんな所で噛むなんてっ!?」
「あーもう最悪ですよ……僕こういう感じになった事無いんで、もうどうしていいか……はぁ、やっぱり恋愛なんて無理です、こんな駄目駄目な奴が告白とか、失笑を買うだけですよ」
「……笑って悪かったわよ、プフフフフ、頑張ってたと思うわ」
「慰めはよしてください、ミライさんも内心最初っから笑ってたんでしょう? 似合わねぇなぁって」
「……フフフ、ちょっとだけ、かっこよかったわよ」
「気休めはよしてくださいよ、自分でも無理があるなぁって思ってたんで」
(チュッ)
「え……、今頭に何か触れましたか」
「さーてねー♪」
[続く]




