恋愛セオリー2
[2]
「教室を開けると、真新しい匂いがした。
机や黒板、チョークや埃、そして隣の席の女生徒。
様々な香りが混ざって、嗅いだ事の無い空気がそこにはあった。
――教室」
「さぁ授業も終わったし、出会いに行くわよ」
「アレ!? 授業とか飛ばしちゃってるんですけど」
「別にシチュエーションとしての学校であって、授業まで色々としてても退屈でしょ、恋愛ならばそれ一直線、余計な事は極力描かない事も大切よ、まぁ授業中に起こるイベントもあるけど、そう言うのはヒロインと出会ってからね」
「なるほど」
「って、折角学校設定なんだから同級生っぽく行きましょうよ、こんな普段通りの会話じゃ雰囲気でないわ」
「ああそうですね、幼馴染設定でしたっけ」
「そうよ、ほら、早速言う事とかあるでしょ? 何か気づいた事無い?」
「え、何ですか? スカートの裾抓んだり回転したりなんかして?」
「お前は全く成長しとらんのかぁ! 新しい学校! 幼馴染と来たら、制服の事を描写せんかい!」
「あ、成るほど。そう言えばミライさん制服姿ですね、セーラー服ですか」
「ほら、女の子の新しい恰好なんだから、一言あるでしょ?」
「良くそのサイズがありましたね」
「褒めんかい!」
「グフゥッ! でも普段の格好も結構制服っぽいじゃないですか、今更似合うと言うのはパンダはやっぱり白黒だよねと言う様なモノかと。いやしかし結構新入生でセーラー服って服に着られる感がありますけど、ミライさんは流石ですね、年季が違うって言うか、完全に着こなしてる、むしろ他の女生徒と同じ服には見えないですよね、デザインは同じなのに……ああ、中身が違うからですね」
「ぐ、ぅぅ……や、やれば出来るじゃないの」
「え、顔紅いですけど何か変な事言いました?」
「と、とにかく出会いをやるわよ」
不意に教室の扉が開き、一人の女生徒が姿を現す。
同年代とは思えない、雑誌の表紙を飾る様なスタイル。制服の内側から明らかに漂う艶っぽい気配。ウェーブの掛かった髪から漂う香りは明らかにフェロモンを放ち、皆の視線を集める。そんな女生徒が机の前に立ち、微笑みかけてきた。
「さぁ新入生君、迎えに来たわよ。行きましょう?」
「え、何ですか? 何に誘われてるんですか?」
「ほら学校の出会いと言えば、登下校とクラスと部活動よ」
「えっとって事は部活動ですか……で、何部なんです?」
「そうねー、私達のこれまでの活動を考えれば文芸部?」
「ええ、何か摩訶不思議な学校側非公式の変な部活とかじゃないんですか?」
「あらどちらも違うわね」
青髪の女生徒は、首を振って答えた。
「私達は生徒会よ」
「新入生って設定じゃなかったんですか!? ってか、何でミライさんも一緒に驚いてるんですか!」
「そうね、委員会とかも出会いの場と言う事を忘れていたわ」
「ああ、そう言う事で驚いていたんですか、でもこういった役職事で恋愛って発展しにくいイメージがあるんですけど」
「まぁ傍目に見れば不真面目に映りかねないわよね、仕事の合間にいちゃいちゃしてんじゃねぇよって思われ無い程度に仕事に精を出しつつ、清純なお付き合いを心がけるのがいいわよ」
「色んな意味で面倒臭いです……」
[続く]




