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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
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テーマ

【第二話】

『テーマ』


「えーと、それで」

 僕は困り果てた様子で、言葉を選びます。

 多分皆に言っても理解されず、頭の中に何飼ってやがんだこいつ、コレが歪んだ現代社会の悪影響かと思うかもしれませんが、僕の目の前には未来からやって来たと言う美少女、末記ミライがふんぞり返って居ます。

「ミライさんは具体的に何をしに来たんですか?」

 僕の目の前で、橙色に黄色いグラデの掛かったツインテールの美少女は、足もとの用紙を拾い上げました。

「そうね、具体的にはこのクソつまんない物語をとりあえず読んで人が死なない程度に改稿しましょう」

「あの……つまらないまでは何とか受け止められるんだけど、ちょっと言い過ぎって言うか」

「そうよね、これから一緒に頑張っていくのにこんな言い方したら失礼よね、ごめんなさい言い直すわ、とりあえずこの思春期にありがちな妄想を駄々漏れする傍から塗りたくって自己満足に浸り切って揚句俺ってすげーって感情丸出しな資源の無駄を」

「ごめんなさいクソつまらないで結構です」

 ああ、何というかこの被虐性が気持ちよくなってしまったら終わりな気がします。

「まず、貴方に問うわ、貴方はこの話を通して何を伝えたいの?」

 彼女はとりあえず机の上に腰を下ろして、足を組んで問い掛けてきます。彼女の格好は、蛍光暖色系のパステルな制服で、ミニスカートから覗く太腿がいい感じにすらりと長く視線を奪われます。まぁ、とりあえず質問に答えようと思いますが。

「え? 伝えたい?」

「そう、この作品のテーマは?」

「て、テーマって……その、まだテーマソングは出来てないです」

「はぁ……」

 何故でしょう、盛大にあてつけがましく溜息をつかれました。

「いい? テーマって言うのは[主題]って意味よ、この作品において根幹で問われる命題。まぁ簡単に言うなら、貴方がこの作品を通して読んだ人に言いたい事」

「え、それって決めないと駄目なの?」

「……とりあえず、そう言うの決めとかないと、結局読んだ後にお前何がしたいの? って言われるのよ、テーマは物語の主軸、それが無いと物語もブレブレに成るし」

「で、でも僕は一つの事に縛られるんじゃなくて、様々な意見の多面性をこの物語に託したいわけでっ!」

「あのね……いい? 物語は読まれないと意味が無いのよ? そんな哲学的な考えは日記にでも綴っておけばいいの!」

「えっと、じゃ[面白い]作品ってのがテーマで」

「あくまで[面白い]っていうのは、読んだ後の読者の感想でしょ? 大体貴方、面白いってどういう意味か分かってる?」

「え……面白いってそりゃハラハラドキドキしたり泣いたり笑ったり」

「ほら、一言で言い表せないでしょ? [面白い]っていうのはね、様々な要素がからんで結果生まれる感情な訳よ、だから面白いっていうのはテーマとしては曖昧過ぎるわ、まぁ人間がどういうプロセスで面白いと思うかとかを取り扱ったりすれば[面白い]をテーマにしたと言えるけど、それはもう論文よね」

「じゃ、テーマってどういう物が?」

「そうね、一般的には[愛]とか[友情]とか、あと[戦争の空しさ]とか」

「うわそんなありきたりなテーマじゃ全然やる気になんねぇっス」

「あのね! ありきたりの何が悪いっていうの? 良いかしら? こういうのはね、多くの人が考える事なのよ、それだけ多くの支持を得ているわけ! 大体貴方、路上に落ちている石を有効活用するってテーマで書かれた話を読みたいと思う?」

「む、むぅ……」

「勿論貴方なりのテーマがあるなら、それを扱うのもいいんだけれど……人は一人一人違う考えを持っているわ、だから貴方なりに拘ったテーマを持っているなら、それに特化させる事によって、真新しい話を作る事が出来るのよ」

「なんとっ! テーマって大切なんだな!?」

 何だかそんな気がしてきました。

「まさにその通り大切なのよ、ストーリーなんてたった一つのやりたい事を叶える為の、下地に過ぎないとさえ言えるわね」

 言い切ってしまいますか。

「よし、なら僕もテーマを考えよう! ええっとそうだな、やっぱり[人類愛]だよねっ!」

「待って、貴方の作品ってどういう内容かしら?」

「え、とある学校で主人公が沢山の美少女にモテまくる話ですけど何か?」

「……そんなんで、どう[人類愛]を説くつもりだぁぁぁぁ!」

 ミライさんの細く美しい足が僕の顔面を踏みつけました。何と言うか、ちょっといい匂いがします。

「えっと何が駄目なのか今一良く分かんないんですけど」

「うっわぁ真顔で返されるとちょっと引くなぁ、あのね、テーマは物語に沿った物じゃないと駄目よ、上手くかみ合わせないと変な事になるわよ」

「そうですか」

 ミライさんは足を戻して(ああっ)、再び説明に入ります。

「例えば、ある作品で[生命の神秘]をテーマにするとするわよ」

「[生命の神秘]ですか」

 確かに、命は時に儚く時に力強く、未だ良く分かって居ない部分があり、不思議な現象を起こすと聞きます。

「で、主人公は極悪非道の悪者で、大きな犯罪をして最後は警官に射殺されて終わると言う筋書き」

「それの何処に生命の神秘がっ!?」

「まぁつまりそう言う事、無理やりこじつけられない事は無いけど、でもやっぱり旨く語る事は出来なくなるわ、こういう物語の場合[正義]とか[犯罪]とか[お金]とかのテーマの方がすんなり入れるわよね、あとあまり壮大過ぎるテーマを扱わないようにするのも手ね」

「何故? 作品の根幹なら大きく用意した方が広がるじゃないですか!」

「広がり過ぎるのよ、最終的にテーマを伝えきれない内に終わってしまう場合もあるわ、テーマは短く簡潔に! そうした方が作品が生きるのよ」

「なるほど……で、何でこの作品で[人類愛]は駄目なんですか?」

「え……今の私の話聞いてた?」

「だって……登場するのは多種多様な国籍や種族の美少女な訳ですよ、それを愛する事は人類愛な訳でしょう?」

「貴方に必要なのは、まずは辞書のようね」

 顔面に落とされた辞書は非常に重くて痛かったです。せめて脚でお願いしたかったです。

「とにかく、まずは貴方の作品において絶対に譲れない一点、それが決まらない限りちゃんとした話は作れないわ!」

「し、しかし僕はこの作品において、色々な女の子にモテモテになるという展開を変える事は出来ないっ! そしたらこの作品がこの作品でなくなってしまう!」

「じゃテーマ[恋愛]か[ハーレム]でいいじゃないっ!」

「え、そんな欲望塗れなテーマでいいんですか?」

「高尚なテーマだから支持を受けるとは限らないわ、むしろ即物的な、欲望の絡んだテーマの方が人の心に訴える事も有るのよ」

「なるほど……」

「勿論、ちゃんと貴方なりの[恋愛]や[ハーレム]というテーマにおける考えや、結論を用意しないと駄目よ? そう言うのがあって初めて、主軸足り得る訳よ」

「でも、一つ問題が……」

「な、何? 行き成り深刻そうな表情で」

「実は僕、全然モテた事が無くて」

「いや、実はって言うかそんなの丸分かりだけど……いいのよ、テーマに置いてはそう言う実体験とかは、あくまで貴方の考えなんだから、足りない情報はささっとググりなさいカス」

「は、じゃもしかして足りない実体験とかはミライさんが僕に体験させたりしてくれるんですか!?」

「はぁフザケンナ首から上と下総とっかえして人格真人間になってから札束積んで出直してこいこの眼鏡」

 何と言う言葉の暴力、僕の存在眼鏡以外全否定ですか。

 ああ、でも何だかこう、蠢く虫を見つめる様な目線で見下されていると背筋がぞくぞくしてくる自分がいます。もっともっとと心の内側が叫んでいます。

「そんな事言って、実は僕の魅力にトキメキ始めているんでしょう?」

 彼女は何も言葉を発さず、机に手をついて腰を浮かせ、肌触りの良さそうな両足を揃えて僕の顔面に付き出しました。体重が乗って居ます。ドロップキック的なあれです。

御馳走様です。


[続く]



[補足]


「さてこのお話は、超絶悶絶美少女である私ミライが、物語の書き方などを魅力的に説明していくスタンスでお送りします。物語作りに興味がある人も無い人も、是非ついて来てくださいね」

「今回はテーマですね」

「テーマは大事ですよ、でもまぁ今回言及しているのは、作中でやりたい事という意味で使っています、まぁつまりウリですね」

「何か違うんですか?」

「大きく違います! でも、その辺言及していくとページ数が凄い事になるので軽く流して貰えると嬉しいな♪」

「ご、誤魔化した……」

「皆さん的には、作者の言いたい事がテーマなんだなって理解でいいと思いますにゃん♪」

「こ、媚びた!?」

「だってそう言うところ追求し始めると終わりが見えないしね、あくまでエンターテイメントと割り切るクールな所に、乙女はきゅんと来ちゃうかも♪」

「最後はごまかし……」


[注意]

 この物語はフィクションです。

 此処で紹介される手法は、我流の要素を多く含みます。

よって、この物語を読む事によって面白い作品が書ける事を保証する事は出来ません、あらかじめご了承ください。

また私見や偏見を織り交ぜておりますので、気分を害する方も居ると思います。

あくまで一つの意見と、軽く流して頂けると幸いでございます。



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