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僕とミライの傑作小説  作者: cry-me
18/94

冒険セオリー3

[3]



「入江から岩場の影へと小舟で移動すると、間もなく洞窟が暗い口を開けていた。

 入り口から差し込む光が、済んだ海中を宝石色に輝かせる。

 穏やかな波の音に導かれるまま、船は奥へと進んでいく。

やがて船は岸に止まり、さらに深く暗い洞窟の奥へと我々は導かれる。

               ――洞窟」


「ミライさーん、物凄く暗くて怖くておっかないんですけどっ!」

「ああもう、たかが洞窟程度で慌てふためくんじゃないわよ! あと背後に回るな抱き着くな何処触ってんだっ!」

「えぐぅ! ああ何かちょっと心落ち着きましたありがとうございます」

「まったく、こういった暗気な洞窟こそ冒険の王道でしょ! 作家ならむしろ喜びなさいよ、胸躍らせなさいよ、狂喜乱舞しなさいよ、阿鼻叫喚しなさいよ!」

「阿鼻叫喚はしてます!」

「そうだったわね、あちょっとあんまり壁際を歩くと」

「え、何ですか? アレ、何か岩に触れた手が何かのスイッチを押したような……な、何ですか洞窟の奥から何かが転がってきますよっ!?」

「洞窟に仕掛けられた罠! これぞ冒険の醍醐味よね!」

「奥から大岩が転がってくるじゃないですかっ! ミライさん今こそ未来の秘密道具で……ってアレ!? 何で一目散に逃げ出してるんですか! 冒険の醍醐味でしょう!?」

「悪いけどストーリーダイブ中は私もほとんどの機能が使えないのよ! ここは自分の力で乗り切るしかないわ」

「って言うか普段からほとんど何の機能も持たない癖に、何を今だけはってノリで説明してるんですかっ!? っと、そこの岩陰ならやり過ごせそうですよっ!」

「とうっ!」

「うわぁぁぁぁ!」

「ふぅ、間一髪だったわね……」

「……ちなみにもしああいった罠にかかって大怪我を負ったり、最悪死んだりしたら?」

「ああ、その辺は安心していいわよ未来の技術は安全第一だから、死んでもちゃんと現実に戻れるわ」

「ああ、そうなんですか。じゃそこまで慌てて逃げる必要は無かったんですね」

「でも死ぬほど痛いから極力安全に進む事をお勧めするわ」

「何で痛みフィードバックするんですかっ!?」

「リアリティの為としか言えないわね」

「もう帰りましょうよ!?」

「!? ちょっと待って、何か聞こえない?」

「ええ、また新たな罠が発動したんですか?」

「いえ、これは人の足音だわ、其処に居るのは誰!」


二人が降り男変える先に、たいまつを手に佇む少女が居た。

赤いショートヘアの少女は、海賊風の衣装に身を包み、挑戦的な表情でこう告げてきた。

「そうか、お前達も海賊の宝を狙っているのか、しかし我が祖先の宝を、みすみすお前等の様な冒険者に渡すわけにはいかないの!」

 そう言ってこちらに少女は指を突きつけてきた。

「えっと、先祖はこう言っているの、わがねむりをさまたげることなかれ、もしわがもとまでこれたあかつきにはたからはくれてやろう、しかし船と額の宝石いがいはな……えーと」

台本を片手に持って。


「えっと、誰なんですか?」

「冒険に必要不可欠なライバルの登場よ!」

「あの思いっきり仕込みですよ? あんな子供がこんな洞窟来る訳ないですし、何処と無くミライに面影が似ている気が」

「さぁ、今こそ知恵と勇気でこの難関を乗り切るのよ!」

「うわっと背中押さないでくださいよ、難関って言っても相手は子供ですよ、何を恐れる事が」

「かくご糞小説家ぁ!」

「うわぁ銃撃ってきた!? あと糞小説家とか言ってる時点でこっち側だろお前!」

「ほらマスケット銃くらい気合で避けなさい、大丈夫当たっても死にゃしないから」

「でも死ぬほど痛いんでしょ!? いやですよ」

「死んでわびろぉー!」

「うわ今前髪掠った! って偶然壁に手を置いたら何かスイッチを押したような?」

「うわぁー何か奥から転がって来たの!?」

「ちょっと馬鹿狙うなら敵だけを巻き込みなさいよ!」

「死ぬほど痛いのはいやだー!」


[続く]


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