『ミライ登場』
【第一話】
『ミライ登場』
「よし、完成だ! 僕の最高傑作が!」
机を前に僕は声を張り上げた。
「もうアレだな、コレが世に出てしまったら恐ろしい事になってしまうなっ! そんな感じなくらい傑作だ!」
そうです、僕の前、机の上には印刷された用紙の束が置いてあります。其処に綴られている物語こそ、今僕の才能が花開いた証とも言えるわけです。
「さぁ、早速この話を投稿しないと」
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁっ!」
んん? 誰だろう、今知らない女の子の声(ちょっと機械音っぽい)が聞こえた気が。
「その投稿ちょっと待ちなぁぁぁぁい!」
「おぶぅっ!?」
突如机の引き出しが勢いよく開かれ、僕の腹部を直撃しました。痛みで中身が出そうです。臓器とか。
「な……ななな、なんだ?」
痛みを何とか耐えて見上げる僕の先に、何とこんな事言ったら頭の中身を疑われかねないのでアレなんですが、女の子がいました。
「ふぅ、どうやら間に合ったようね、よっと」
そう言って、彼女は机の引き出しから身体を引っこ抜く様に這い出て机の上に立ちました。見た目は高校生くらいの女の子でした。顔立ちは可愛くやや小生意気そうでした。橙色に黄色いグラデのかかった髪をツインテールでまとめて、蛍光暖色系の制服っぽい衣装を着こんで居ます。胸はちっさいですが、すらりとミニスカートから伸びた足は綺麗で見惚れます。彼女は机の上でふんぞり返っていて、僕は椅子に座って居る為に、少しでも沈み込んだら中身が見えそうでした。
…………おお。
黄色い縞パンでした、御馳走様です。
「ふぅ、危なかったわね、コレで世界は救われたわ」
そんな感じの事を言って、彼女は大仕事を終えた様に額の汗を拭う仕草をして見せました。
「えっと……キミは一体?」
とりあえず訳も分からない僕は、彼女の正体を問い掛けます。いきなり人の机から出て来るなんて、何ていうか、凄く危険な事をする娘ですまったく。
「名乗り遅れた事は謝るわ、でも私にはとても大事な任務があったのよ、そこだけは理解して頂戴、私の名前はMicr●soft ●ffice W●rd Ver3014、オートマティスムロイド『末記ミライ』よ」
「え? マイクロソフ?」
「言いにくいならミライで結構よ」
「は、はぁ……」
「信じられないかもしれないけれど、実は私未来から来たの」
「そうですか」
何と言うか、出現場所からそうなのかなとは思いましたとか言ってはいけないんだろう、多分。
「単刀直入に言うわ、貴方小説家を目指しているわね?」
「え、何故その事を!?」
「フフフ、だって私未来から来たんですもの」
成るほど何でもお見通しと言う訳ですか。
「それで、ミライさんは何の目的で未来から?」
「実は今正に世界が亡びそうになる所だったの」
「ええっ!?」
なんたる!
「そう、貴方が書き上げた傑作小説によって」
「なんだってぇ!?」
なんたるっ!?
ってか、え? 彼女は一体何を言っているんだ? 僕の描いた小説が世界を滅ぼすだなんて! そんな馬鹿な。
「何でそんな事になるんだ!? 僕はただ普通に小説を書いただけなのに!」
「まぁ混乱するのも無理は無いわね、順を追って説明するわ」
そう前置きして彼女は語り出した。相変わらず机の上で僕を見下ろしながら。
……うん、やっぱり黄色い縞パンで。
「貴方が今書き上げた小説を見た人にはある変化が起こるの、ソレに目を付けた人がそれを悪用する事を思いついて、ネットに流す事になるのよ、そして多くの人が貴方の作品を読んでしまい、世界が滅びてしまう結果を迎える事になるのよ」
「な、何て事だ……僕の作品にそんな恐ろしい力が!」
「いい? 落ち着いて聞いて頂戴、貴方の作品はね、実は」
「う、うん」
ごくり。
「非常につまらないの」
ええっ!?
「もう、人を殺せるくらいにクソつまらないわ、あまりのつまらなさに人々はやる気を失ってしまうくらいにね、そして多くの人が物語を読む事を止めてしまうの。世の中には面白い作品が大量に溢れているのに! たった一つの死ぬほどクソつまらない作品の所為で、物語から興味を失ってしまって、未来ではもう物語を作る作家がいなくなってしまうの」
ええっと、とりあえず。
「それ言い過ぎじゃね!」
百歩譲ってつまらないまでは受け止めるとしても。
「私はそんな時代、人に変わって物語を作る為に生み出されたアンドロイド……でも、私では駄目、私は頑張って人間を楽しませる物語を作ったわ、でもそれだけでは駄目なのよ! 私は記録された情報を元に物語を構築していく事しか出来ない、次第に面白い物語は作れなくなっていった。やっぱり物語は人が考えないと駄目なんだわ! そこで私は過去に遡り、根源を正そうと考えたの」
「ええっと、で?」
「そう、全ては貴方が面白い話を作りさえすれば全て解決なのよ! その為に私は未来からやって来たわ! この世界という物語を面白くさせる為にね!」
そう言って彼女、末記ミライと名乗る未来から来た猫型では無い美少女型のアンドロイドと自称する少女(肩書が長い)は、僕の傑作小説の束をギュムっと踏みつけてそう宣言したのだ。
こうして僕は彼女と出会った。
[続く]
[補足]
「さてこのお話は、超絶素敵美少女である私ミライが、物語の書き方などを小気味よく説明していくスタンスでお送りします。物語を書きたい皆も、別にそうでもねーよという皆も、頑張ってついて来てね♪」
「……と言っても、今回全然書き方紹介してませんが。どうも作者です」
「物語形式でやっていく以上、前振りは必要不可欠です! いいですか? もう書き方の講座は始まっているんですよ! 気を抜かないように!」
「は、はい……」
「そうですね、今回はあえて言うなら影響力でしょうか」
「影響力?」
「そう、例えば物語なんて書いても所詮娯楽エンターテイメントだろ? 世の中の役にたちゃしねぇよバーカと思っている人も居るでしょう、でも! 中には物語によって生き方や考え方に影響を受けた人も居るんですよ! だから、たかが物語、たかが作り話とは思わない事です!」
「おお!」
「貴方の描いた物語が、誰かの背中を後押しする事になるかもしれない! もしかしたら一国を動かす指導者がその道に行く動機となり得るかもしれない! そう物語は無限の可能性に満ちています!」
「なんと!」
「まぁ流石につまらない作品を書いたからと言って世界が亡ぶ事は無いですけどね、なので安心して駄作作ってください」
「いや、誰も作りたくて駄作を作る訳じゃないからね!?」
「そうです、皆作れるなら面白い作品を作りたいっ! そんな貴方の背中を後押しできたらと思います」
「それでは、よろしく!」
[注意]
この物語はフィクションです。
此処で紹介される手法は、我流の要素を多く含みます。
よって、この物語を読む事によって面白い作品が書ける事を保証する事は出来ません、あらかじめご了承ください。
また私見や偏見を織り交ぜておりますので、気分を害する方も居ると思います。
あくまで一つの意見と、軽く流して頂けると幸いでございます。