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時姫  作者: 久保坂かの
8/8

ちょっとしたコト

「夕ノ介~!」

朝日が寝ぼけまなこに眩しい。いかにも初夏、という感じである。水色の果てしない空には、ふわふわの綿菓子みたいな柔らかそうな真っ白な雲がいくつか、ぷかぷか浮かんでいる。白い光をあたりに放つ太陽は清潔な印象を強く与える。

江戸に来て初めて外にでた!!夏休みとか平気で一週間外に出ない日もあるけど、自主的にだからできる技だったんだ・・・。いや、だってね、外に出ずに暇(?)だったからか、太陽がこんなにも素晴らしいものに感じるんだよ。温かいんだよ。浴衣だから風通りいいし、程よく涼しい。こういうのを爽やかっていうのかな?井戸の水の綺麗で冷たいこと。ジャブジャブと野菜を洗うとひんやりとした水しぶきが腕を覆う。たすき掛けした浴衣でさえも所どころ濡れている。

「よいしょ、っと。」

夕ノ介が木のバケツ(?)で水を汲む。そして、私がその水で洗う。なんだか、新鮮☆

「あら~、あんたが‘お瑠菜”かい?」

「見たかい?ホントに御髪おぐしが御天とさんみたいだねぇ。」

「アラ、ホントだこと。お目目も青い。縁起がいいワ。長生きしそう。」

奥様方がやってきた。なんともパワフル。私は縁起を担がれるような存在ものじゃないけど、縁起に頼らなくても、長生きすると思う。

「は、はじめまして・・・瑠菜です」

よし、自己紹介完了。心の中でガッツポーズをする。

でも、思ったよりスルーされているような気がする。

「お瑠菜ちゃん、わからないことがあったら、なんでも聞いておくれよ!?」

これは、願ってもみないありがたい申し出だ。

「ありがとうございます!」

都和子さんがきちんとした『説明』をしてくれたおかげなのか、はたまた、奥様方の情報網の賜物なのか、心強いみかたができたようだ。

私の言葉を聞くや否や奥様方は歯を見せて笑った。一瞬、歯が真っ黒だったのに驚いたのは、不覚だった。完全に忘れていたのだ。この時代の既婚者はお歯黒をしていることに。平成では「アイドルは真っ白い歯」とのことで、黒い歯は虫歯意外にいない、と思う。いまさらながら、江戸時代の死因のトップに虫歯がランクインしているのって、お歯黒のせいで見つかりにくいからじゃないのかな?虫歯なったことないから、よくわからないけど。それに、平成では、お歯黒じゃなくても、指輪や腕輪、首輪で拘束できるからね。独占欲の現われかな?でも、離婚(離縁)したとき、お歯黒とか困りそう。それは、さておき、これからたくさんの出会いがあると思うと、なんだか少しうれしくなった。

今回出番はあったものの、セリフがなく暇な夕ノ介さんの心情。

              ↓

              ↓

              ↓

あ~あ、瑠菜のやつかわいそうに・・・。

捕まってしまったんだな。この手の人種は噂好き。みかたになればよく立ち回ってくれるが、敵になれば手のひらを返したかのように、めんどくさいことになる。

「ありがとうございます!」

聞こえてくる瑠菜の口ぶりから察するにみかたになったのだろう。

良かった。受け入れてもらえているようだ。


いつの間にか、俺しか洗い物していなかったが、まぁいいか。

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