迎えてくれる人
「お黄ちゃん」
嗚呼なんて素敵なお声なんだろう!ガラス職人が丹精こめて作った風鈴の音みたいだった。それにしても、お黄ちゃんって私のことなのかな?金髪だからお黄ちゃんって無理ありすぎ・・・。
時は先程から少したって日は傾き始め世界は茜色のような金色のとうな曖昧な色をしている。雨は存在自体嘘のように雨雲ごと消え去り、道には濁った水溜りが点々と弧を描いているだけだった。ぼぅ、と窓から静かな町並みを沈黙の中見つめているだけの息苦しさを誰か救って!!!そんな時救世士が現れた。比喩じゃない、本当だ!それがさっきの声の持ち主。
「あらあら、目が覚めた?大丈夫?あ、言葉わかんなかったかしら?」
「大丈夫みたいだ。なんか外国とこの国との子供とこの国の子供、らしい。言葉は通じるみたいだ。あ、名は瑠菜愛紗というんだと。」
「るなあしゃちゃん?かわいいお名前!よろしくね?」
私をちゃん付けした美女はにっこりと微笑んだ。あ、なんか感じいい。綺麗な人ってとげのあるイメージだけど、この人はぜんぜんそんなことなくて、女女していない。
「よ、よろしくおねがいします!」
思わずペコリとお辞儀しちゃったよ。綺麗な人マジックだ。重力?引力?なんなのこれ?
「あと、瑠菜って呼んで下さい!」
「じゃぁ、瑠菜ちゃん。あたしは都和子夕ノ介の母親よ。」
え、えぇぇぇぇ!!!!マジでございますか!!見えないんですけどっっ!ていうか、若~い!ありえないよ、ぱっと見23,4ってとこだよ
「失礼ですが、実の親子でしょうか?」
「ほら、夕ノ介。やっぱりお母さん老けてるから、よく注目されるのね。」
ち、ちがいますよ!若すぎるんだよー。注目されるの絶対綺麗過ぎるから!
「失礼ですが、お年は?」
「32よ?」
さ、サンジュウニ・・・ってあの32!?ありえない!!みえない!!!
「若っっ。子持ちにみえない!こんな綺麗な人がお母さんなんて、うらやまし~!」
「そ、そう?ありがと。でも、瑠菜ちゃんのほうがも~とかわいいわよ!!」
むじゅ。都和子さんに抱きしめられた。ふんわりとお香のいい香りがただよってくる。にしても、至近距離で見ると改めてその美しさがわかる。ゆわれた黒髪はつややかで、長いのに少しの重たさも感じさせない。赤い唇は柔らかで、目鼻立ちははっきりと、この時代には珍しく白い歯が夕ノ介同様にバランスよく並んでる。ホントすごいな。死因NO1が虫歯といわれるご時勢で・・・。
「おい、母さん。ちょっとはこう、驚いたりしないわけ?」
「なにが?」
顔を傾ける都和子さん。
「だから、瑠菜のこと。」
「うん?」
「わかってないな。じゃあ、説明するよ。」
「つまり、ここにおいてあげるにしても、みんなに秘密にできないし、最悪将軍様に捕まる恐れがあるってことでしょう?」
夕ノ介の説明が終わり時刻はおよそ5時頃。街灯がないせいか妙に寂しさを感じる。しかし、それが私には暖かく感じた。静かは静かでも殺伐としてなくてゆるりとしているのだ。
「それなら、大丈夫。さっき出かけてきたときに長屋の大家さんやご近所の皆にあいさつ回りしといたから!それに・・・」
「「それに?」」
私と夕ノ介の声が重なった。
「瑠菜ちゃんってば、すご~く可愛いから!!」
「へ!?」
「なるほど、確かに顔は悪くない。って、そうじゃない!!!」
「じゃあ、なんなのよ?」
「未来からきたっていうのは、証拠といえば証拠もある。しかしだな、この髪だとかどう説明するんだ?」
「そんなの誰も気にしないわよ。ようは、人間性の問題でしょ?」
「それはそうなんだけど・・・」
正論だ。
そのとき、ぐぅぅぅぅぅぅという音がした。その鳴き声は私のお腹の中から現れた。
「とりあえず、メシにしよう!」
その鶴の一声でご飯の時間へとなった。