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時姫  作者: 久保坂かの
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ご先祖様ご対面?

「おい、大丈夫か?」という声で目が覚めた。そっと薄目を開けると、そこには見慣れぬ景色があった。昔ながらの土壁とそこにある小さな格子戸、今時珍しい12畳ほどの空間に敷き詰められた藺草いぐさの畳、その手前にある土間の台所と玄関らしきものという光景。歴史の授業でみた江戸時代の長屋の一室模型のような部屋だ。そして、次に目に入ったのは先程の声の主。声の主は男だった。年は15,16だろうか。鋭いがどこか優しげな目。うらやましいくらいさらさらの髪を後ろの下ほうで1つに結っている。女のような容姿だが、身に纏っているのは男性用の袴。不思議な雰囲気だ。

「お前、雨の中倒れていたんだ。」次いで男が発したのもいたわるような口調の言葉だった。

しかし、男をまじまじと見ていると険しい顔つきになり「お前、この国のものじゃないな。ポルトガルのものか?どうやってこの大江戸まできた。」と言った。

「何言って・・・」私はこう言いながらはっとした。もし、この人が言っていることが本当なら、ここが江戸時代だとすると私みたいな容姿の人は珍しいはずだ。

髪は光を受けて輝く黄金色、瞳の色は海の色、それが私。予想はつくと思うが、この容姿はオランダ人の父方の祖母譲りのものだ。

当時、おじいちゃんはオランダへ仕事で行き、そこ出会ったおばあちゃんに人目惚れ。半ばさらうように強引に結婚したのだ。幸いおばあちゃんは、しっかりものの勤勉でオランダ語のほかに、英語と少しだけだが、日本語がしゃべれる。だから、おばあちゃんに教えてもらった英語とかを日常会話程度ならしゃべれるが、今ここで話しちゃうと即刻長崎の出島にいや、不法侵入とかで捕まるかもしれない。いくら介抱してくれるくらいやさしいからって、助けられた方が怪しかったら通報するだろうし。

「あの、私平成の東京から来たんです。」思い切って言ってみた。

「平成?東京?なんだそれ?聞いたこともないな。それよりお前、仮名がわかるのか?」

失礼な人だな。さっきまで日本語で話しかけていたくせに。

ちょっとむきになって私は言った。「わかるにきまってます!私は日本とオランダのクォーターですよ。だいたいなんなんですか?さっきから、お前お前って。私にはちゃんと琵川瑠菜愛紗びかわるなーしゃという名前があるんです。」一気に言ったのでぜいぜい、いっつている。ところでクォーターて意味わかるかな?

「く、くぉー・・・なんだ?その、くぉーなんかとかってのは、なんだ?」

ああ、やつぱり、横文字に弱いんだ。でもその反応おもしろい。こんな状況さえも忘れていじりたくなる。こんな綺麗な顔しているだけに。

「クォーターです。4分の1という意味です。つまり4等分のうちの1つ分。私の祖母は、オランダ人。祖父は日本人。その子供の父がハーフ。あ、2分の1ということです。さらに、母は日本人。だから、私は4分の1。ほら、簡単なことです。」

「な、なるほど。ご教授ありがとう。お前、日本人だったのか。」

「あら、やけに丁寧ですのね。このくらい、私の時代には常識です。」ちょっと皮肉気に、強気に言ってみた。

「で、お前。その平成ってとこから来たんだろ。帰る道わかるのか?もしくは、家出、出稼ぎか?」

「残念!ハズレです。平成は時代名、東京は江戸の未来の名前のことですね。まぁ、つまり・・・私、約300年くらい未来から来ちゃったみたいでして・・・。そんなことより、私の名前は瑠菜愛紗です。ちゃんと覚えてくださいね?」私は少しでも現実逃避をするために明るく言った。名前以外のところは。

「すまん。瑠菜愛紗といったか?お前名は長すぎて言いにくい。『瑠菜』と呼んでいいか?」

「もういいです。あきらめました。いいですよ。『瑠菜』で。」

人の名前を長いって、失礼すぎるが許してあげよう。どうやら、この時代にはこの名前は、適用されにくいらしい。それより、未来ってとこには、つっこまないんだ。

「ありがとう。そうだ、さっき瑠菜、『琵川』と言わなかったか?」

「あたりまえじゃない、だって、琵川は私の苗字ですもの。」

「嘘をつくな!琵川は父さんの代に将軍様にもった名だ。父さんは俺が生まれるまえに死んでるんだ。」

何を言ってるのか理解できない。

「あの~・・・。言いたいことがよくわからないと言いますか。てゆうか、私が未来から来たことには納得なんですよね?」

「ああ、それに関しては納得だ。おまえみたいなしゃべり方するヤツはこのあたりにはいないし。それに、ここのやつらは、人を見る目があるしな。あやしかったら、俺でも気づくし助けたりしない。ただ・・・」

「ただ?」

「俺は長子だ。兄弟はいない。母さんは再婚もしていないし、これからもしないだろう。俺は結婚する気がない。子をつくるつもりもない。父さんにも隠し子はいない。と、なるとその名はおかしいだろう。」

「はぁ、そう心に決めててもいつかいい人が現れえたらデキちゃったりするんだよな~。」

今ちょっと、私お節介ばあさんみたいだった?まぁ、いいか。現代の女の子は、早熟なのだ。

「と、とにかく、現状況ではありえない!!」

あ~あ、今無理矢理話題かえようとした。ま、いいか。あとで、根掘り葉掘りきいてやる。いつの世でも色恋沙汰は注目の的堪忍すればいいのに。

「おかしくないわよ!家系図には、1代目;流ノりゅうのすけ、1代目の妻;名不明の女性、2代目;夕ノゆうのすけ・・・ってのってたもの。」

家系図って何度見てもあきないから小さい頃から眺めていたけど、こんなとこで役立つなんて。でかしした、私。

「なんで、俺の名がわかった!?」

「あ、もしかして、2代目夕ノ介って」

「俺のことだ。」

私の声に夕ノ介の声が重なった。なんだか、不思議な声だった。

昔よく見ていたぼろぼろの家系図にのっていた本人が目の前にいる。それだけで、心細さが減ったきがした。

作者名かえました。

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