~夢の中~ネガイノハジマリ
何もない真っ黒な空間に漂う自分の体。
そこでぼーっとしながら虚空を見つめている。
ここはどこだろう・・・どこかで見た気があるな・・・
呆けていた矢先、急に頭が痛みだした。
何かが俺の頭をガンガン叩いてるような激痛がする。
心臓が激しく鼓動している。手足が震え、妙な寒気が押し寄せる。
痛い!苦しい!!なんで俺はこんなことに!!
これは夢なのか・・・早く目が覚めてしまえばいいのに・・・
頭の中に響いてくる声・・・
鈴虫の声がリンリンと鳴いている。
そして黒しか見えなかった視界が次第と色を持ち始め鮮明になってゆく。
上を見るときれいな星が瞬いていた。星明りに照らされて足元がよく見えるほどに。
あれ?俺どうして望遠鏡を持って歩いているんだ?
足が丘の上目指して動いている。自分の意志では向かう先を変えられないようだ。
変えようとすると体が重くなり、ただ歩くだけの人形のように感じてしまう。
周囲を見渡すことはできるようで、後ろを振り返ると
この女の子・・・誰だ?
一人で歩いてきていたような気がしていたんだけど。
明かりが無いため、暗くて顔がよく見えない。
「早く流れ星が見えないかなぁ」
自分の口が勝手にしゃべっていた。
「でも、今見えるより、丘の上の方が綺麗だよ?」
女の子がこちらに言葉を返す。
「だったらさ、頂上まで走っていこうよ!!」
彼女の手を取り、目的地に向かって駆け出す自分の体。
小さく頷いた彼女の頬は星に照らされ、赤く色づいて見えた。