9、意見発表?
放課後の世界観測研究会の部室にて。
「全員出席とは、みんなの目がやる気で満ち溢れているようだ!」
「えっと、凄いテンション高いですね藤川せんぱ・・」
「先輩ではない!ここでは部長と呼んでくれ孝介くん!私の思いがより燃え上がるようにな!」
「はぁ、そうですか。あれ?瀬那先輩が見えないようなんですけど」
「細かいことを言うな!まったく・・・小さいことを気にするようではここで起きる事件に巻き込まれて死ぬぞ?」
「呼び方にこだわっていたせんぱ、痛っ!…部長には言われたくないですよ!
それで、今日はこの部の方針を決めるんですよね?おれが死ぬような事件を起こすために集まったわけじゃないですよね!?」
そう。
今日はなぜみんながここに集まったかというと、世界観測研究会のこれからの目標みたいなものを決めていこうと前もって部長が宿題を出していたからだ。
ただ部長が我が儘のために集合させたわけではない。・・・はず。
「瀬那くん。例のものを配ってくれ!」「はっ。イエスマム!」
バサッ!!!・・・ザザザザザッ
突然部屋に置いてあった簡易テントから匍匐前進をして這い出てきた瀬那先輩に孝介たちは呆然とその光景を見守っていた。
部長の前に来た瀬那先輩は、迷彩服を着てモデルガンらしきライフルを肩に下げ部長に敬礼をしていた。似合いすぎて逆にこわい!
瀬那先輩が背中に背負っていたリュックから数枚のアンケート用紙のようなものを配り始めた。
孝介も一枚もらい書かれた内容を見てみると、
『Q1 世界観測研究会って長くないかい?略語を書きましょ~(複数可)
Q2 ぶっちゃけ、これからどこ行こうか?旅行に行きたい場所またはしたいことを書きましょ~(複数可)
Q3 私を褒めれるだけ褒めて!褒められると伸びる子だから!』
ホントブチョウハスゴイコデスネーとQ3に反射的に書いてしまったが、つっこみどころが多すぎて・・・みんなは何を書いているんだろ。
ちょうど正毅や野田も自分の方に近づいてくるところだった。葵さんは机の上でプリントとにらめっこしている。たまにこっちをチラチラ見てきているのは気のせいかな?
「なぁ、孝介。Q1は界察とか良いんじゃないか?駅にある感じでなんかこう、ピピッとくるぜ!」
「駅の改札口のIC認証とは全く関係ないけどな。他になんて書いたんだ?」
「えーと、Q2には山と海に行きたいって書いたな。Q3はまだよく分からんから今のままでいて下さいって書いたくらいだな」
正毅らしくていいじゃないか、Q3は褒めてすらないけど。
「?どうした野田」
「・・・んっ!」
プリントを両手で持って見せてくれているのは分かるけど、腕がプルプルしていて見づらいんだが。
野田から紙を受け取る形で見せてもらうと、
「Q1は世会、か。これが無難で良さそうだな。Q3はまだ書いていないと。Q2は・・・」
書かれていたものを見て何も言えず黙り込んでしまう。これって大丈夫なのか?
「・・えっと、・・・ダメ・・なの?」
「ダメっていうか、ここ遊園地「ディズ○ーか!大いに有りである!」
「ディ○二ーが有りなんですか!?それを許してしまったらただ遊びに行くだけじゃないか!」
「言葉に気をつけたまえ!“観測しに行く”だ!」
「いやいや、“遊びに行く”でしょ?どう言い繕っても変わりませんよ!
みんなも言ってやれ!これはおかしいよな!?」
振り返ってみてみると、書いたことをすべて消して書き直す光景が目の前にあった。
正毅がすっと孝介の肩に手を置き、静かに告げた。
「孝介、お前・・・頑張ったよ。あいつらの制御が聞かなくなるほどにな。
素人にはきついと思って諦めてた『富士樹海を踏破』に一票を・・・な?」
「遭難するからなそれ!?正毅の頭の中じゃ富士樹海は気軽に行こうと思う場所なのかよっ」
「富士樹海って木が生い茂ってるのに海なんだぜ?山と海両方に行けるなんてお得だぜ?」
そう熱弁する正毅の肩を叩く人がいた。まぁ部長なんだけど。
「うん、却下」
目が笑ってない部長の顔が葵さんとかぶったのか、
「・・・はい。」
本能に従順な正毅であった。
そういえば葵さんも書き直しているようだったけど、何を書いているのかな?
ちょっと覗いてみてみようか。
「・・・・・この店も一回行ってみたかったのよねえ・・・ふふふ・・・」
洋菓子店の特集がされた本を机の上に出して、店の名前をひたすら書き連ねていた。
もうこの人ノリノリである。
部長と瀬那先輩はこの状況を見て、
「カオスな現状に終止符を!」「はっ。イエスマム!」
遊んでる場合じゃねぇよ!むしろ楽しんでるよな・・・
野田の書いたデ○ズ二ーが発端となって意見がまとまることなく、ゴールデンウィーク明けに持ち越しとなった。まとまらないんじゃ連休中にどこかに行くとしてもなかなか決められないだろう。
というか、これ・・・まとまるのか?




