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8、委員会(3)~野田視点~



―――部屋に着いた後の夜


 いつかは過去の自分を知る人が目の前に現れると思っていた。

早海先輩は私のことを気遣ってくれていたようだけど・・・・。

私の友人だった人たちはなぜか私に対して異常なまでに執着していた。それが不思議で、どうしてこんな私のことを友達だと呼んでくれたのか、過去の自分は何をしていてどういう人間だったか。聞いてみたいこともあったけれど聞けずじまいで・・・怖くて。



早海先輩との話に不安に押しつぶされそうになっている中、ずっと傍にいてくれた来栖くん。


彼は傍にいることを許してくれたけど、私の方から来栖くんの近くに行くだけだ。ただそれだけ・・・

でも早海先輩に呼ばれたときは一緒について来てくれて・・・


守ってくれようとした来栖くんの気持ちは嬉しいけど、同情はして欲しくなかったと後から思う。


聞きにくいことを聞いてもくれたし、救われた部分も多かった。でも、


ただ・・・そんな私の友人関係の話を聞いて、大変だったね、怖かったね。と思われたくはないと考えてしまう。


来栖くんはあの話を聞いてどう思ったのか。

聞いてみたいけど・・・聞くのが怖い・・・でも聞いてみたい!


「・・・・聞けないままだと、後悔しか残らないのは知っているのに・・・」


ベッドで布団にくるまり枕に頭を埋め、うつ伏せのままピクリとせず。

答えは出ているのに実行に移せないこの身が憎らしいとさえ思ってしまう。


考えに耽っていると、次の、最初に思った疑問が頭に浮かぶ。どうして自分は彼を昔の知り合いだと思ったのか。

入学式の日に出会い、胸に火が灯ったように感じた。頭で考えるより先に心が反応していた。ダウジングマシンのように反応する自分の急激な変化に突然のことに固まってしまって、私はどうしたらいいか戸惑ってしまった。


あれは一体なんだったのかなぁ・・・




ギュルルルル~




・・・そういえば帰ってきてから何も食べていないのを思い出した。体は正直だな、と少し笑ってしまう。


こんなに悩み苦しんでいるのに空腹だけはしっかりと感じるようにできている。

腹が減っては戦は出来ぬと言うし、何か食べて落ち着こう。

しかし夜の食堂の利用時間は過ぎておりコンビニなどで済ませることになってしまうの・・


ベッドから出ようと寝返りを打ったその時、

勢い余ってどたん!とを床に打ち付けられる。そして運悪く近くの机にぶつかり陶器製のマグカップが落ち、


パリンッッ!!!


陶器特有の高めの音を立てて割れてしまった。


いててっ!はぁ・・・ついてないなぁ・・・

床に落ちた時布団と一緒に落ちたおかげでそこまで強くうちつけず無事だったが、お気に入りのマグカップが割れたことがショックでしばらく固まったまま。硬直するのが癖になりつつある野田であった。


ピンポーン♪


ん?こんな時間に誰?

マグカップの破片に注意しながら移動し玄関の戸を開けると目の前に来栖くんが立っていた。


「・・・・!!」


「どうしたんだ?俺の顔に何かついてるのか?」


「いや・・・なんでもないの・・・(聞こうとしていた本人があっちからくるなんて!)」


「まぁいいや。なんかお前の部屋から大きな音が聞こえてな。心配になって来てみたんだが」


ここは恥ずかしいけど伝えておくことにする。


「・・・えっと、ベッドから落ちたのと・・・マグカップが割れただけなの・・・大丈夫」


頭を横にブンブン振った後彼の顔を見ると今だ心配そうな顔をしている。世話になりっぱなしだしここは自分一人で何とかなる!


「大したことないから・・・気にしないで」ギュルルルル~・・・・・


言った矢先に更なる不幸?が野田を襲った。


「ん?おいまさか・・・まだ飯食べてないんじゃないか?」


「そんなことないの!・・・例え食べていなかったとしても死にはしないの!」


「そういう問題じゃないけどな!部屋に何か食材かインスタントは置いてないのか?」


「・・・食堂があるから・・・特に用意してないの・・・ぐすっ」


「どうしてそこで泣き始めるんだ!・・しゃあねぇなぁ、インスタント持ってそっち行くから待ってろ」


来栖くんは一度自分の部屋に戻り袋を一つといくつかの食材を持って私の部屋の前に戻ってくるのが見えた。こちらに向かってくる来栖くんを見て・・・?

何か忘れてるような・・・・はっ、私の部屋・・・掃除とかしてないっ!


「えっと、・・・その・・・10分の猶予が欲しいの!」


バタン!!・・・・カチャリ


「え?どういうこと?」


なぜ急に扉を閉めたのか、ぜんぜん分かっていない来栖孝介がそこにいた。




 目の前に私の部屋のキッチンを使って料理をしている来栖くんがいる。

インスタントヌードルだけでは味気ないと思ったのか、ネギを刻み卵はといたものを流し込むのか箸でかき混ぜている。


・・・今が聞くべき時なんじゃないかな。

今聞かなければ、図書準備室での出来事を来栖くんが話題で出すはずもないし、そこで終わってしまう。

記憶が無くなって臆病になった私にはもっと勇気がいるんだ!


そうだ!今しかな「なぁ、野田」「はい!!」


急に話しかけられると驚くの!もう!!


「どうして怒ってるんだ?まぁいいや。今日早海先輩から野田の過去を聞いちゃったわけだが」


「・・・」


「おれは新しい友人を見つけた方がいいっていう早海先輩の考えも一理あるけど、

その昔の友達とだって仲良くなってもいいと思うぞ?それだけ仲が良かったから繋がりを切りたくなかった。それだけだったかも知れない」


「野田。昔のお前はそう言われて訳が分からなかったと思うが、もう少しやりようがあったんじゃないか?俺からしてみたらどっちがすべて悪いとは思わないってことだけ言っとくよ」


キッチンに立つ彼から思ってもみないことが聞けて驚いたけど、私にも非があることを言われて悲しくなるよりむしろ嬉しかった。

早海先輩の話だと私の過去を悪く言われているように感じていたから。来栖くんに私が反省すべき部分があることを指摘されて、過去の自分と今の自分に罪が分けられたようで。

心に載っていた重石が軽くなった様な気がした。


・・・まだ臆病なままでも、いいよね?・・うん、次から頑張る!ホントだよ!


来栖くんが作ってくれたラーメンを、お礼を言いつつ頂きました。すごくおいしかったの!



また作ってくれないかなー・・・







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