変わりゆく関係
豊島がそこについた時、周りはいい感じに酔っぱらってきた頃だった。
場所は金子の自宅である。
「なんだよ。もう皆出来上がってんのか?」
片手で持つコンビニ袋の中には、ビール以外のアルコール類もかなり入っていた。
「どうしてお前がいるんだ?」
金子は無表情に相手を見上げて言った。
「あ!それは俺が呼んだからでぇ~す!親友の豊島を呼ばない訳にはいかないっしょ?」
「そういうことだよ」
既に呂律も人格も壊れかけた友人に苦笑し、豊島は金子の隣りに座った。それから自分の買ってきた缶をあけ始める。
「おい」
「っんだよ」
まだ全く飲んでいないのに、豊島の目は座っていた。
「何しに来たんだ?」
「それはないんじゃねぇの?恋人にフられたんだろ?ったく、そんなこと一言も言ってなかったよなぁ?俺だけに」
豊島が怒ってることを察して、金子は溜め息をつく。
「別れるって、分かってたから言わなかっただけだ」
「付き合う前からんなこと思ってたのかよ?」
「あぁ……」
暗い目をして金子は視線を落とした。静寂…。酔っ払い達もいつしか眠りの底に墜ちていた。
「なんだよ、好きな奴でもいんのかよ?」
豊島は鼻で笑った。やけになってビールをゴクリと飲む。
「いる」
「俺には言えねぇ奴って訳か」
「言いたくても…言えなかった」
「人妻か?んなもん俺は気にしないぜ?んなことお前だって知ってんだろ!?結局テメェは俺にそんなこと話す価値もねぇって思ってただけだろうが!!」
話しているうちに段々興奮してきて、日頃絶対に口にしないことまで口にしてしまう。失恋したばかりの豊島は、金子まで自分から離れていっているようで、多少の焦りを感じていた。
「だいたい、俺が嫌いなんだったらはっきり言えよ!いつも何か言いたそうにこっち見てんじゃねぇよ!嫌ってんのに、親友面されんのムカツクんだよ!」
「――違う……」
「違わねぇだろ!……勘弁してくれよιお前まで俺から離れてくのかよ……」
「話しを聞け!!」
「嫌だ!」
耳を塞ぎ、豊島はギュッと目をつぶる。だが、金子はそれを許さず、耳を塞いでいた豊島の手を掴み、むりやり耳からはがした。
「豊島!!」
名前を呼ばれ、豊島がビクリと肩を揺らし、目を開ける。そこには怖いぐらい真剣な顔をした親友…否、親友だった者がいた。
「お前が…好きなんだ」
「嘘だ」
間髪入れずに否定する。
「本当だ」
金子が真剣に話していることには、豊島も気がついていた。
「信じねぇぞ。嫌いだって言われた方が、まだ信じられる」
一瞬、金子の瞳が陰ったが、豊島はそれに気付けなかった。
「お前がなんと言おうと、俺の中では…お前が好きだということだけが真実だ」
「信じねぇ!絶対信じねぇからな!!」
泣き出しそうな顔で叫ぶ豊島と、暗い目をしたままの金子。対峙した二人の間には、深い溝ができていた――