孤独を懐中電灯でまぎらわす客
これは夜勤明けの後輩から聞いた話です。
深夜のコンビニ。
夜中の3時、ふらっと入ってきたお客さん。
棚から懐中電灯を一丁つかんでレジへ。
後輩が、
「電池は別売りですが」
と丁寧に伝えた瞬間——
「え? 電池入ってないの? これじゃあ暗いよ! 真っ暗だよ! 俺の人生みたいに!」
そこからが大変でした。
お客さんは懐中電灯を台の上でカチカチ鳴らしながら、約1時間、延々と語り始めたのです。
「最近さ、誰とも話さなくて……冷蔵庫の賞味期限切れたヨーグルトと目が合って『お前も孤独か』って話しかけて、寂しくなったりして……」
「夜中にテレビつけても、通販の誰かしかいないんだよ。『今すぐ電話を!』って言うけど、電話する相手がいないんだよ!」
「この懐中電灯買ったのも、実は『光があれば誰か来るかも』って思ったからで……」
後輩は、
「は、はい……電池は奥の棚に……」
と何度も促すも、話はどんどん加速。
しまいには、
「ねえ、君は夜勤してて寂しくないの? 俺とたまにでいいからおしゃべりしない?」
とまで提案されたといいます。
結局、電池を買ってもらい、そっと、
「お気をつけてお帰りください」と送り出したら、お客さんはポツリと呟きました。
「俺も……懐中電灯のように、光があったらよかったのにな」
後輩はぼそっと言いました。
「先輩、次の深夜シフト、電池の在庫だけは絶対確認します」
寂しさとはいえ、見知らぬお客から1時間絡まれるのは、さすがに電池以上に電力消費が激しいですね……。




