第1話 目覚め
此処はエリザ王国王都、貴族社会が蔓延する醜い競争社会。そんな王都の端の端―っこに家を構えるブリジット男爵家、わたしはひとり娘のチャコ・ブリジット、箱入り娘?(引き籠り)である。
「奥様、いくらお呼びしても返事がありません。」「はあー、良いわ、わたしが呼びに参ります。」
「コンコンッ、チャコいるのでしょ!返事をしなさい!チャコ」「…、」「カチャッ。おはようございます。お母さま」「なあに、その眼の下の隈は…、ケイシー身支度をお願い」
今日はドボルト男爵夫人を招いて、庭でお茶会だそうだ。「まったく、また夜通し本を読んでいたのね、お茶会があるって言ったじゃない」「…。」「リリーも来るから、仲良くね」リリーとは、ドボルト男爵の娘でわたしと同い年の6歳である。わたしと違い容姿端麗、御貴族の御令嬢なのだ。わたしはと言うと、癖毛で背も小さい…ちんちくりん。
「お母さま、わたくしたちはお庭でジョンと遊んでいてもよろしいですか?」「ええ」「さあ、チャコ行きましょ。」
「ワン!ワン!ハアッハアッ」「チャコどうしたの?」「リリーはお嬢様らしくて可愛いとおもって…」「ありがとう、チャコも可愛いじゃない、その跳ねた髪なんかわたしは好きよ」「そう、そうかな」「うふふ、ええとっても」「ワン!ワン!」「あっ!ジョン!」お戻りジョン!」「ワウーン!ガバッ!」「チャコ!大丈夫!」
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『わーい!次は砂場であそぼう!』(わいわいがやがや)ひとり部屋から外を見つめている…。
『さあ、今日から一年生ね頑張っていってらっしゃい』『うん』
『なんだー、そのランドセル!ぺちゃんこじゃねえか、無視してんなよ!』『痛っ!』『ハハハ』
『やだー知子ったら、男子とばかり遊んで』
なんだろう?これは誰?
『カチャカチャカチャ』(おっつー!今日は早いね!根暗マスター!)『カチャカチャカチャ』(どうもー!誰が根暗だ!ネットマスター!だわ!)(はははは)『こんこん、食事部屋の前に置いとくわよ、ちゃんと食べなさい』『カチャカチャカチャ』
これは…わたし、そうだ、わたしだ!
「チャコ!気がついたのね、お医者様は怪我も無く大事じゃないって。良かったわ本当。引き籠って本ばかり読んでいるからよ」
夢を観ていた…嫌違うあれは前世のわたし、そうだロクに学校も行かず引き籠っていたわたし、友達も無く高校は受験したものの、出席日数が足りず敢え無く留年。わたしが留年したからって学校へ行くわけもなく、退学。ネットの世界だけがわたしの居場所だった。…?わたし死んだの?今のわたしはチャコ・ブリジット、貧乏男爵家のひとり娘、社交的ではないが両親に甘やかされ育った貴族の娘。
「チャコーごめんね、ごめんね…」リリー。そっか、わたしはジョンに飛びつかれて…「大丈夫だよリリー」
岩崎知子、知子と呼ばれ小学校入学と同時に、いじめのターゲットになった。そして…引き籠りの生活を…。それはさて置き…困った、前世の記憶がこの世界の生活に嫌悪感を…「うっ!」先ずはこの椅子に穴の開いたおまるだ!
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(さささささ)「出来たー!」徹夜で書いた渾身の設計図、我ながら上出来なのでは?「コンコン、チャコ様、お食事の時間です」「はい、今行きます」
「チャコもう大丈夫なのか?」「はい、お父様」貧乏男爵家当主アーロン・ブリジット、そう、わたしの父だ。
「お父様、お願いがあります。」「おう、わたしの可愛い娘からのお願いか、なんでも言うがいいぞ」「あなたったら、あなたが甘やかすからチャコが夜通し本ばかり…」わたしの母、ヨハン・ブリジット。
「お父様、この様な物を造って頂きたいのですが」わたしは渾身の便器設計図と浄化設備の仕組みを描いた紙を渡した。浄化設備と言ってもわたしの知ってるのは、熱帯魚の水槽ろ過装置程度なのだが…熱帯魚のチャッピーは元気にして居るだろうか?
「うーむ、これはなんなんだ?」「便器と排泄物の処理をする設備です」そうそう、トイレットペーパーも欲しい所ね、先ずはともあれトイレだ!下水処理…?そうなれば水道もちゃんとしたい。したいことだらけではないか!わたしの快適な引き篭もり生活の為に、お父様には頑張って貰わなくては。




