# 2 アサ
朝=陽が昇ってから正午までの、ある程度の時間の範囲であり、陽が昇る前であっても早朝などという、曖昧極まりない括りである。
ずっと夜が怖かった、暗くて静かで、今日の楽しかったことも真っ黒に染まってしまうようで…
明知小夜/アケチコヨル
ヨルちゃん…
ワタシがボクになる前のアサちゃんではないワタシだ。
ヨルちゃんと呼ばれるのは好きではなかった、夜が怖いから…
内気だった幼いワタシはイヤとは言えずに受け入れた。
幼稚園から帰れば、ウチかユウちゃんの家でアニメに少女雑誌、TVゲームというのが定番(日常)で、ある時、動物キャラの双六?パーティーゲームをすることがあった。
それはユウちゃんの家にある何世代か前のゲーム機のモノで、ワタシが少女雑誌に夢中になっているうちに、粛々とセッティングされていた…
「やろぉやろぉ〜♪」
手を取られ徐に目を向けた画面には、大きな赤いリボンを右耳に、可愛いピンクのウサギちゃん、セーラー帽を斜めに被ってのぺーっとした青いペンギンくんが遊園地のステージ(スタート地点)にいた…
「ヨルちゃんヨルちゃん!
ヨルちゃんはペンギンのペンタゴンね」(オリジンネーム)
「え〜、イヤだよぉ… 」
って、ネーム蘭には既にコヨルと入力済みで、どうやら拒否権はないようだ…
ウサギのラッピンには(オリジンネーム)当然ユウちゃんがユウちゃんと、何故だかちゃん付け…
このゲームだったらワタシはヒヨコのヒヨリンかウサギのラッピンなのに…
それにペンタゴンはユウちゃんパパのやつだ。
「ねぇ〜、ペンタゴンはパパのじゃないの?
ワタシ、ヒヨリンがいいなぁ」
「え〜 でもパパいないしヨルちゃんペンタゴンがいいぃ…」
「ぅう〜ん だって男の子だし …… 」
勝手に決められたことを引きずっていたが、ふと、一人少女雑誌に夢中になっていたことを後ろめたく思い始めた…
「ぅん でもいっかぁ…
よし!じゃあ 始めよう♪」
「やったぁ〜♫
そうだ! 男の子だし、ヨルくんにしてあげるね♪」
名前はいつでも変更可能で…!?
えっ!?
もしかしてこれってヨル(夜)から逃げられる!
そうだ…
「それなら男の子の名前がいいっ!」
そう… ゲームのなかでなら…
「え〜っ ヨルちゃんはヨルちゃんだよー」
なんで分かってくれないの…
「でもぉ…
そうだ!小夜って漢字は違う読み方でサヨって言うって、お母さんが!」
何を言っているのか… 咄嗟この瞬間には…
「え〜っ なにそれ〜!サヨ〜 ?
って でも 女の子の名前だよぉ 」
そう…女の子だし、夜…
「 そうだ ね …」
男の子女の子ではない、ただ夜から逃げたくて… 逃げられないことも知っていた。
小夜…
「 … う〜 ん ……?」
あからさまの落ち込みに、ユウちゃんを困らせてしまった…
「 ア ケ チ … サ ヨ … だか らぁ……
ア サ ちゃんっ!! 」
「 え っ …!? 」
なんで … 初めて呼ばれた筈なのに…
頭に、身体に、すんなりと収まった…
「 ァ サ … ?
… ぅん!うん ♪
それがいいっ!!」
その言葉は、ワタシの世界をボクの世界へと一変させ、ユウちゃんと一緒の時間だけがアサになる、ヨルと混在した酷く曖昧な…
夜の反対!? なんて認識はなかった…
それでも♪