夜明
ッドォーーーン!!!
轟音に全身が震える。
思い出したくない嫌な音…
忘れちゃいけない音…
目の前で爆ぜた塊は血肉の雨となって降り注ぎ、生暖かい臭気が立ち込め、否応なしにも我が身を侵す。
鼻から、口から、目から…
其々の気管は瞬時相応の反応を示し、嗚咽、嘔吐、涙に目眩…
この世界での日常だ。
嫌気がさしているのはオレだけだろうか…
だけだ…
彼女達は逞しくも、いや、嬉しそうに拾い集める…
♯1 朝
7時15分
『♩゛♩゛〜 』
右手は無意識にオトを消す …
7時20分
『♪♫♪〜♪♬♪〜 』
聴きたくない音楽が鳴り響き、なくなく身体を起こしたボクは、少し先、卓上の元凶に手を伸ばす…
未だ無意識…
朝は苦手だ、大好きだった曲が恐怖の音と化したことに、後悔と自責の念に駆られながらも、最低限のタスクをこなす。
「行ってきま〜す。」
誰にも聞こえない声でドアを開けた。
ままならぬ身支度で家を出ることに、一片の羞恥も、罪悪感なんてものも持ち合わせてはいない(現在は…)
むしろ慈善活動とも言える。
周りはこんなボクを見て『あの子よりは…』と安心
するに違いない!
下には下がいる論の底辺を支える救世主…
もとい、究極の開き直りに心は堂々だ(現在だけ…)
堂々とも道の最端を歩き、家からほど近いコンビニ前へと差し掛かる
タッ タッ タッ タッ
背中に小気味良い足音が近付く
「 ァ サ ちゃ〜ん♪ 」
子供っぽくも澄んだよく通る声…
余韻を足音が追い抜いた
タッ タンッ!
「 おっはよ〜♪ 」
「 おはよう チーちゃん 」
めざ目の保養⭐︎足先から頭の先まで舐目回す。
左川奈子、数少ないボクの友人(ヲタ友)だ。
スラーっ170cm、スタイル良し!
ミルクティーベージュのミディアムヘアは、肩上でふわっとカールして、春先の柔らかい陽射しと微風に甘苦いコントラストをなす。
コーヒーにミルクを落とした時のゆらゆら混ざり合う感じ…
ミルクティーが苦手なボクにはそう見えた。
眼鏡っ娘からメガネ女子へと変貌中⭐︎
キラキラ輝く17歳の彼女は、同じ制服を着ているはずのボクに羞恥心と罪悪感を回顧させ、寝起き夢双状態をも秒で我に帰させる。
朝が来た…
「朝だね、チーちゃん…」
小さく呟き並び歩く。
先程までの堂々はどこへやら…
おどおどと歩きながらに
「昨日の転バケ観た〜?」
いつもの話題に原点回帰を試みる。
「うんうん♪ 現代科学最強だね♪」
ボクのツボを見透かすチーちゃん⭐︎
「そうそう! N2で炎無効からの爆ぜろ!
ってスッキリした〜♪」
「あえてのグロモザもギャグテイストでイイよね♪」
「でさ♪でさ♪」etc…
回復〜⭐︎
昨日観た異世界アニメの討論会である…
すたすたすたすたぁ
並ぶ2人に忍び寄るイケオジの影…
いや、あたま一つ下のツインテ幼女⭐︎
カバンに吊るされるは推しのイケオジw
「おいおいN2爆弾とは物騒な、それにそいつは空想科学だろ♪ 」
イケオジ口調の幼な声。
「オハ〜 アサチー♬」
ボクとチーちゃんの間ににゅるり割り込む
「トイちゃんおはよ〜」
「おはよ トイ」
向井遊、数少ないボクの友人(ヲタ友)にして幼馴染、元気溌剌猪突猛進天真爛漫…まあ色々抜けてはいるが、目に入れても痛くない妹みたいな存在だ⭐︎
身支度には余念なく、こうして最後に割込むが常。
にゅるり抜け出し3歩先をよろよろ、今日もキレイなシンメトリーだ。
フワッ、ツインテがくるりと靡いた。
反転後ろ歩きに討論再開⭐︎
「でもさぁ、チート過ぎてあっけらなんだよなぁ、わたしは」
少し不満気の幼な声が心地よいw
「あはwトイちゃん王道好きだからな〜」
「いやいや私は何でも見るぞ!
オールジャンル尊く羨まで、私も書きたい!それに気分だ気分、前後に見た作品とかな!」
ムキになるのもカワイくて、導くチーちゃんはやはりボクのツボを見透かす!
くるり向き直ってよろよろ、替わりイケオジがこちらを向いたw
「ただ転生チートも出尽くした感がなぁ…」
イケオジ越しの幼な声は、朝の喧騒に相まって哀愁染みて聞こえた…
良き!最高級のツボ⭐︎プライスレ〜スw
脊髄反射に
「ホントそれな♪」
哀愁幼な声への賛辞⭐︎ …しかり
会話の内容…え〜 転生チート出尽くした感だっけ?
同感同感、というかこの世の総意だろw
心の中であたふたと、ホントそれな♪
ボクたち3人は同志である。
類友とは言うが呼んでも呼ばれてもいない。落ちゲーでぼーっとしてたら勝手にコンボ決まったみたいな⭐︎
最強ラッキーコンボなのだ!
まだ漠然とだけど、いつか自分たちの物語(異世界ファンタジー)を描きたいなんて夢がある。
ストーリーはチーちゃん、ボクが作画キャラデザ、トイはキャラ設からネーミング全般にと♪
「でもさぁ あるよね!
ボクにもトイにもチーちゃんにも!
もっとすごい構想(物語)が」
「 まぁね〜 」 「うん うん♪」
「 ま 、第一段はチー先生のぶっ飛んだ世界をウチらが色付けマシマシで〜♪」
「あはは、あれは傑作だよ!
ぶっ飛んで異世界を通り過ぎちゃったし♪」
「ちょっと〜
あれは3人で出し合ったのを私がまとめただけで…って ボツったよね アレは…
深夜のテンションこえ〜ってなって!」
「にしし♪」 「まあまぁ♪」
『偽世界食堂♬』
「 もぉ〜 」 『あはははははっ♫』 etc…
片道15分の通学路はいつものヲタバナで倍の時間を浪費する。
遅刻スレスレの毎日、彼女たちと歩くこの時間が、通学路が、朝からアサへの抜け道であって、漸くもっての朝であるw
「チーちゃん!トイ!朝だね♪」
『アサちゃん!それな♬』
合わさる2人のツッコミは、いつからかのお決まりだw