第9話 幸せそうな推しを見ると私も幸せになれます
リリアが王子との見学会を終え、一度は落ち込んでしまったものの、少しずつ自信を取り戻しつつある日々が続いていた。
彼女は以前よりも積極的になり、王子との会話も増えてきた。私の推しが、ついにその輝きを取り戻しつつある!
そう感じるたびに、私は心の中で歓喜のガッツポーズを決めていた。
「エリー、今度の宮廷舞踏会、また王子様が来るんだって。私……少し緊張するけど、またちゃんとお話してみようかな。」
リリアのその言葉を聞いて、私は思わず感動で胸がいっぱいになる。推しがここまで成長するなんて、これ以上の幸せはない!
「それは素晴らしいよ、リリア!君が自信を持って話せば、王子様もきっと喜んでくれるよ!」
「でも…セシリアさんがいると、やっぱり少し不安になっちゃうの」
リリアがそう言うのも無理はない。
セシリアはいつも王子のそばにいて、まるで彼女こそが正ヒロインだと言わんばかりの態度で周囲を圧倒している。まぁ正ヒロインなんだけど。
でも、ここでリリアが負けてはいけない。私は彼女を支えるために、この異世界に来たのだから。
「リリア、大丈夫だよ。君は君の良さを持っているんだから、セシリアさんとは違う魅力で王子様にアピールすればいいんだ。自信を持って!」
「うん、ありがとうエリー。あなたがいてくれるから、私も少しずつ勇気を持てる気がする。」
リリアが頷き、私の手を握り返してくれた。
推しの手の温もりを感じると、私は全力で彼女を守り、応援する決意を新たにする。
舞踏会は勝負の場だ。リリアが輝けるよう、私はどんなことでもサポートしてみせる!
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そして、いよいよ舞踏会の夜がやってきた。王宮の大広間は、豪華な装飾と音楽で満たされ、華やかな雰囲気が漂っている。
リリアは、淡いピンクのドレスを身にまとい、少し緊張した様子で私の隣に立っていた。
「エリー、このドレス、似合ってるかな……?」
リリアが不安げにそう尋ねるが、私は即座に力強く答える。
似合ってないわけが無い、似合いすぎてる!
「もちろん!すっごく似合ってるよ、リリア!今日は君が主役だから、自信を持ってね!」
「ありがとう…エリーがいてくれて、本当に良かった。」
リリアの頬が少し赤くなる。可愛すぎる。
彼女がこんなにも輝いている。やはり私の推しは最高だ!
舞踏会が進む中、王子がついに登場した。彼はいつも通りの凛々しい姿で、会場の注目を集めながら歩いてくる。リリアの顔が少し緊張で強張るのがわかった。
「大丈夫だよ、リリア。君ならできる。」
私は彼女の手を握り、そっと背中を押す。
リリアは深呼吸をして、勇気を振り絞りながら王子に近づいていく。
「王子様……こんばんは。お話できて嬉しいです」
リリアの声は少し震えていたが、王子は優しく微笑んで応じた。
「リリアさん、こんばんは。君の笑顔を見ると、私も心が安らぐよ。」
その言葉にリリアの表情がパッと明るくなる。彼女はすっかり舞踏会の主役のように見えていた。私の推しがこんなにも輝いている…!
私は胸が熱くなるのを感じた。
しかし、その瞬間、セシリアが優雅に近づいてきた。彼女は一瞬で王子のそばに立ち、リリアに向かって微笑んだ。
「リリアさん、今日のドレスも素敵ね。でも、やはり王子様にふさわしいのは…」
その言葉にリリアが一瞬怯むのがわかった。
私はすかさず彼女のそばに駆け寄り、セシリアに強い視線を向ける。
「セシリアさん、リリアにはリリアの魅力があります。誰が王子様にふさわしいかなんて、決めるのは私たちじゃない。」
セシリアは一瞬驚いたように私を見つめ、それから涼しげに笑った。
「そう…それなら、勝負ね。」
彼女の言葉には明確な挑戦の意思が込められていた。私はそれを受け止める覚悟を決めた。リリアがこの舞踏会で輝くために、私ができる限りのことをしよう!
その後、王子とセシリアがダンスの輪に入っていくのを見て、リリアは再び少し落ち込んだように見えた。私は彼女の手を取って、真剣な顔で言った。
「リリア、大丈夫。王子様にとって、君はもう特別な存在なんだよ。セシリアさんがどうあれ、君は君らしくいればいい」
「でも……私はまだ、セシリアさんみたいに堂々とできなくて……」
リリアが目に涙を浮かべるのを見て、私は彼女を強く抱きしめた。
「リリア、君は誰かと比べる必要なんてないんだよ。君の優しさや頑張りを、王子様もきっと見てくれている。だから、自信を持って!もし自分を信じられないのならあなたのことが大好きな私のことを信じて!!!」
リリアは私の言葉に涙をこらえ、静かに頷いた。
「うん…エリー、ありがとう。私、頑張ってみる」
健気だなぁ。はぁ、愛おしい……。
彼女がそう言って立ち上がる姿を見て、私は心の中で誓った。
絶対にリリアを正ヒロインにしてみせる…!私たちの戦いは、ここで終わりじゃない。
その後、王子は再びリリアの元へ戻り、優しい笑みを浮かべた。
「リリアさん、次のダンスをご一緒していただけますか?」
リリアの目が一瞬輝き、彼女は微笑んで頷いた。
──来たあああ!!
「はい、喜んで」
二人が舞踏会の中央で踊り始める。リリアは最初こそ緊張していたが、次第に落ち着きを取り戻し、王子の腕の中で美しく舞っている。
周囲からは歓声が上がり、リリアの姿に皆が注目しているのがわかる。
その様子を見ながら、私は心からの喜びを感じた。
リリアがここまで成長したことを、私は誇りに思う。推しがみんなの前で王子様と一緒にこんなにも輝いている……この瞬間を私は待っていたんだ!
ダンスが終わり、リリアは笑顔で私の元に戻ってきた。
「エリー、ありがとう。私……今、本当に幸せ。」
その言葉に、私は涙が出そうになる。リリアがこうして自信を持ち、幸せを感じているのを見ることが、私の一番の喜びだ。
「リリア、本当に素晴らしかったよ!君は最高だ!」
「うん、エリーのおかげだよ。本当にありがとう……」
セシリアとの戦いはまだ終わっていないかもしれない。
でも、私はリリアを最後まで支え続ける。彼女が本当の幸せを掴むその日まで──!