第6話 深まる彼女の自信そして推しの手の感触
舞踏会から数日が経った。リリアは毎日少しずつ変わり始めている。
彼女の顔には以前よりも明るさが増し、少し自信のなさそうだった瞳にも力強い輝きが宿り始めた。
「エリー、私……もう少し頑張ってみようと思うの。あの舞踏会で王子様と踊ったこと、すごく大きな経験になった気がするの」
リリアが勇気を持ってこう言ってくれるのが、私はとても嬉しい。
推しの成長を間近で感じられるなんて、ファンとしてこれ以上の喜びはない。
だけど、まだまだこれからだ。彼女が王子様と結ばれるためには、まだ乗り越えなければならない壁がある。
「いいね!リリア、その調子だよ!これからもっと楽しいこと、一緒にいっぱい挑戦していこう!」
「うん、ありがとう、エリー。あなたがそばにいてくれるから、私も頑張れる」
リリアの言葉に、私の胸は温かくなる。
私がいるから頑張れるだと!?最高か!?
推しを応援し続ける喜びと、彼女が成長する姿を見守る誇りでいっぱいだ。
この調子で、リリアをもっともっと輝かせるために次の作戦を考えなければ!
******
その日の午後、私はリリアを誘って王都の市場へと足を運んだ。
色とりどりの屋台や店が並び、多くの人々が楽しそうに買い物をしている。
リリアが普段はあまり訪れない場所だ。こういった場所で彼女がもっと自信を持って自分を表現できるようになれば、さらに魅力的になること間違いなし!
「リリア、今日はたくさんの人がいるね。少しドキドキするけど、何か美味しいものでも食べてみようよ!」
「うん、そうだね……でも、ちょっと緊張しちゃうな。」
リリアの顔に少し不安の色が見える。私は彼女の肩を軽く叩き、励ましの言葉をかける。
「大丈夫!私がいるから、何も心配いらないよ。リリアが笑顔で楽しんでくれるのが、私の一番の幸せだからさ!」
「あ、ありがとうエリー……」
リリアが少し微笑んでくれる。
よし、この調子でリリアの魅力をもっと引き出していくぞ!
そんな中、市場の一角で興味深い光景を目にした。数人の子供たちが、小さな劇を見ながら歓声を上げている。
舞台では、若い役者たちが王子とヒロインの恋物語を演じていた。リリアも興味深そうにそれを見つめる。
「エリー、あれ……何をしているのかな?」
「ああ、あれは即興劇だよ。地元の役者さんたちが、いろんな物語を演じているんだ。リリア、見に行ってみる?」
「うん、行ってみたい!」
リリアの目が輝いたのを見て、私は嬉しくなる。
推しが新しいことに挑戦しようとしているときのキラキラした表情が本当に大好きだ。
まるで親バカだ。
私たちは劇の前の席に座り、演技に見入る。舞台の上で繰り広げられる物語は、まさに王子と正ヒロインが織りなす典型的なラブストーリーだ。
セシリアを彷彿とさせるようなキャラクターが登場するたびに、私はリリアの横顔をちらりと見る。彼女は真剣に見ているが、どこか不安そうな様子もある。
「やっぱり、私はセシリアさんには敵わないのかな……」
やはりリリアは舞台の上の女優をセシリアと重ね合わせていた。リリアがぽつりと呟く。
その声に、私は心が少し痛む。推しが自分を卑下するのは、私としては見過ごせない。
ここは褒めちぎり作戦を行使するしかない!
「そんなことないよ、リリア!君には君だけの良さがあるんだ。セシリアさんとは違うけど、それがリリアの魅力なんだよ!」
「でも、彼女は本当に完璧で……私はいつも比べられて……」
リリアの目が涙で潤み始める。ちょ、リリア、我慢!
まぁいいのか劇で感動したことにすればいいんだ。
私はリリアの手を握りしめ、真剣な表情で彼女を見つめる。
「リリア、比べる必要なんてないんだよ。君は君らしくいるだけで、十分素敵なんだから。私は、君が王子様にふさわしいって心から思ってるよ」
「エリー……」
リリアが涙をこぼしながらも笑顔を見せてくれる。
その瞬間、私は胸が熱くなる。そうだ、この笑顔を守るために、私はここにいるんだ。
「ありがとうエリー、大丈夫みたい」
「うん、良かった。私はいつでもリリアの味方だよ!」
「なんか最近のエリー私の事好きすぎ」
「いや!私はずっとリリアのことが大好きだよ!」
「あ、ありがとう……」
少し勢いがすぎたかもしれない。でもリリアは嬉しそうだから良い。
その後、私たちは市場を歩きながらたくさんのお店を見て回った。
リリアも少しずつ緊張が解けてきたようで、楽しそうに笑っている。推しが楽しんでいる姿を見るだけで、私はもう幸せだ。
──そんな中、またしてもセシリアが姿を現した。彼女は市場の人混みの中でも、一際目立つ美しさで周囲の視線を集めている。
「リリア、エリーさん。今日はまた面白い場所にいるのね」
セシリアは微笑んで私たちに近づいてきた。私の心の中には少しの緊張が走る。
リリアが萎縮しないように、私は彼女の前に立ち、声をかける。
「セシリアさん、こんにちは。今日はリリアと一緒にいろんなことに挑戦してるんだ」
「そう……リリアさん、あなたも少しずつ自信がついてきたのね」
セシリアは柔らかな笑みを浮かべているが、その言葉の裏に挑発的な意図が感じられる。
しかし、私は動じない。リリアを守るためなら、私も全力で挑む覚悟だ。
「そうだね、リリアはすごく頑張ってるよ。彼女には彼女の良さがあって、それを見つけていくのが大事なんだ」
「ふふ、そうね。では、これからも楽しみにしているわ」
セシリアは少し意外そうな顔をしながらも、再びその場を去っていった。
彼女もリリアの成長に気づいている。これは良い流れだ。リリアがもっと自信を持てるように、私はこれからも彼女を支えていこう。
リリアと私は市場を後にし、再び手を取り合って歩き始める。はぁ……推しの手の感触最高……!
彼女の手はまだ少し震えているが、少しずつその震えも収まってきた。
「エリー、ありがとう。私はまだまだ未熟だけど、君がそばにいてくれるから、これからも頑張れそう。」
「もちろんだよ、リリア!私たちはいつだって一緒だもん。君の頑張りを、私はずっと応援してるよ。」
そんなこと言ってくれるなんて……お姉さん感動……。
リリアと私の友情がさらに深まったことを感じながら、私は彼女のそばでこれからも全力で支え続けると誓った。