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4、初の魔獣

ガサッ


 後ろの木の辺りから物音が聞こえた気がする。気のせいだよね? さすがに魔獣ってことはないよね? ないよね?

 意を決して振り向く。そこにいたのは............


 

 白く、ふさふさした毛を全身に持つ、『ウサギ』だった。


 

 魔獣じゃなさそうでよかった。今の戦闘力0状態で魔獣だったら詰んでた。それにしてもひさびさにウサギを見た気がする。確か最後に見たのは何かで動物園に行った時のはず。

 ふれあいスペースで触ったけどふさふさした体毛とつぶらな赤色の瞳がたまらなかった。あの赤色の、赤色............赤?

 

 おかしい。ウサギの目の色は何種類か見たけどこんな『透き通るような青』に『銀箔を散りばめたような』目のうさぎなんていなかったは......


「グアァァ!」

「ひい!」


 ウサギがこんな声で鳴くか! しかも鳴いた後に『口に幾何学模様』が出るわけないだろ!


 

 何かが頬をかすめて飛んでいった。そしてその何か、は髪にわずかに当たり焦げ臭い匂いがする。そして、それの飛んでいった先は、炎が立っていた。


「魔術!?」


 嘘だろ。最悪だ。今俺はナイフもなければ鈍器すらない。


 逃げるしかない!



 


 どれくらい走っていただろう。慣れない森の中、時に躓きそうになりながら必死に足を動かす。


 

 ここまで逃げていて分かったことがある。それはあの魔獣の攻撃手段は二つあるということだ。一つ目は初めに見た炎が飛んでくるもの。二つ目は、


「グギャァ!」


 後ろから叫び声が聞こえ、かと思えば突風が吹き真横の木が折れた。


 二つ目はこの突風の攻撃。突風の攻撃はさっき木が折れたように当たったら即アウト。直接的だから横にずれればどうにかなる。

 炎の攻撃はどういう原理か知らないが周りがすぐに燃えるので大きく進路を変更することになる。下手に横にずれると自分が燃える。



 この二つの攻撃がいつ飛んでくるかわからない状態でひたすら逃げ続けなければならない。


「グギャ!」

「痛ッ!」


 しまった。ついに攻撃に当たった。突風の攻撃だ。腕だから恐れていたような即アウトにはならなかった。

 でも、避けられない攻撃が出てきた。この事実が俺にのしかかる。今まで当たらなかったのは運でしかない。

 

 元々そんなに運動が得意な方ではなかった。そのこともあってもう息が続かない。ここで止まれば殺される。その思いで、気力でここまで走ってきた。しかし限界が近い。

 

 腕に服の上からわかる真っ赤なシミができる。呼吸するたびに腕から鉄臭い空気が漂う。


「まだ、死にたくない」


 思わず口から言葉が漏れる。せめて、どっちの攻撃が来るのかわかればっ!


「グァア! (炎ヨ!)」


「え?」


 直後に炎が飛んできて、左にあった木が燃えてゆく。


 何だ今のは。ウサギらしき魔獣の叫び声が意味のあるものに聞こえた。まさか俺が『どっちの攻撃か知りたい』って思ったからか? だとしたら何でだ?


「グァッ! (風ヨ!)」


ズドンッ


 まただ。今これが何でかなんて考えてる暇はない。これを使って逃げ切ることを考えろ!

 風の攻撃は外れれば直後に木が折れるはず。だったらそれを障害にして逃げれば! 今までは炎の可能性があったからできなかったけど、今なら! 

 

 左側に大きくカーブして


「グアァァ!(風ヨ!)」


 今だ!思いっきり右へ!


 走れ! 今しかチャンスはない!


「うおおぉ!」


 やばい、どこか死角になるところへ!


 洞窟だ! 飛び込め!


 


フワッ


 身体が宙に浮いたような感覚だ。しまった!崖になってたのか!?



ザッブーン

 

 

 結論から言うと、俺は助かった。ここまでウサギは追ってこなかった。そしてここはどうやら池になってたらしい。結構広い空間で奥には地面が続いている。これが地面だったら今ごろ、と思うとゾッとする。


「よかった〜!」


 流石に転生初日で殺されるのはやだ。


 さて冷静に状況を見てみよう。あの高さの洞窟の入り口から落ちて無事だ。つまりかなり深い池のはず。なのに今泳ぎもせず浮いている。なぜだろ。

 しかしここはなんかぶにゅっとする。............おかしいよね。何で?


「キュルキュルゥゥ (癒シヲ)」

「ウワーアァァ!」


 慌てて池の底?を蹴って泳ぎなんとか池の縁に行き陸地に上がる。


 俺がいたと思われるところには『大きなイルカ(赤色)』のような生物がいた。


 一難去ってまた一難。


「逃げろ!」


 とここで気付いた。ここは陸地。『大きなイルカ(赤色)』は水中。別に逃げる意味ない。


「はあぁ〜」


 逃走劇第二弾は遠慮したいのでよかった。ほんとよかった。そもそも敵意があるんだったら俺が陸に上がるまでに攻撃してきてるよ。鳴き声も『癒しを』っていうふうに聞こえたし。


 パッと周りを見る限り特に魔獣は他にいなさそうなので一旦休憩しよう。さっきの逃走劇でものすごい疲れた。怪我した腕は相変わらず痛い。


「それにしても何で鳴き声の意味がわかったんだろ」


 鳴き声の意味がわかったからこそ逃げられたわけだが改めて考えると不思議だ。これが異世界クオリティ? でも途中まで理解できなかったし。


「〈ステータス〉」




リク フルオカ (古丘 陸)


【種族】 人間(16歳)


【レベル】 2


【生命力】10/120


【魔力】110/110


【魔法属性】無属性


【スキル】 [ステータス閲覧] [算術 レベル8] [情報整理 レベル6] [高速思考 レベル2]


【特殊スキル】 [全言語理解]


【祝福】 [下位天使の祝福] [%#の&=]


【称号】 [異世界からの旅人]



 生命力めちゃくちゃ減ってる。しかし動物(魔獣)の言葉がわかるスキルってどれだ? [算術]はありえないし、思考が早くてもどうしようもない。ってことは【特殊スキル】の[全言語理解]か。

 さすが大天使のくれたスキルだ。まさか動物(魔獣)の言語もわかるのか。



[全言語理解]

 種族問わず全ての言語の意味を理解し、話すことができる。



 説明にも種族問わずって書いてあるし、確実にこれだな。単なる翻訳機能かと思ったら人間以外もいけるとは。


 しかし『大きなイルカ(赤色)』の『癒しを』っていうのもあのウサギ?から考えると魔術なのかな? 慌てすぎてて幾何学模様があるのかもわからなかったけど。

 何でそんな魔術を使ったんだろ。俺の怪我は治ってないし。


「あっ」


 そうだ、俺落下したんだ。つまり、必然的にあの『大きなイルカ(赤色)』は下敷きになったわけで。

 なんか申し訳なくなってきた。


 改めて考えると魔術ってすごいよな。人間にも同じような魔法があるっぽいけど俺は無属性だから使えないし。


「『キュルキュルゥゥ (癒シヲ)』って言うだけ発ど......」


 俺の中からなにかがごそっと抜けたような感覚と共に身体がパアっとひかり、腕の痛みが消え、傷が塞がった。


「は?」


 何が起きた? 傷が塞がっている? まさか魔術が発動した? 人間が使うのは魔法なんじゃないのか?


 

 頭の中が疑問で埋め尽くされていると、なんか貧血みたいな感じになってきた。クラクラする。どんどん悪化していくのが感覚的にわかった。


「いしきが......」



【スキル[生命魔術]を獲得しました】



 薄れ行く意識の中、そんな言葉を聞いた気がした。


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