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18、因縁のウサギ

 今回はゴブリン討伐依頼の続きですが、ゴブリンは倒しません。

「………ここ、か?」

〈ここが地図に記載されていた場所となります〉


 ルーヒ草の群生していたところからここに来るまで大して遠くはないはずなのに本当に疲れた。別に俺の体力が無さすぎて森の中を歩くだけでへとへとになったとかいうわけではない。


 ここまでに出会った魔獣のせいだ。ルーヒ草の群生地からここまでに軽く5回は戦闘をした。その上1体1体バラバラではなく何匹かの集団で襲ってくる。おかげでもうとっくにノルマのゴブリン5匹を超えた。それに加えて思いっきり光る魔獣とかの今までに見たこともない魔獣が何体も出てきた。初めて見る魔術も幾つかあったので後で試してみよう。


 ノルマは達成したが念の為地図に記載されていたゴブリンがよく見つかるところまでは行った方がいいかと思ったのでここまで来た。多く狩ればそれだけ報酬も上がるし、レベルも上がるから悪いことではない。


〈敵一体が接近中〉

(ゴブリンか?)

〈ゴブリンと異なる種族である可能性大〉


 せっかく『ゴブリンが多くいる』はずのところに来たのに接近してくるのは別の魔獣。本当にこの森は魔獣が多すぎる。一体どれだけの魔獣が生息しているのだろうか。よくこんな街の近くに魔獣が大量生息していて街が普通にあるな。これが異世界たる所以なのだろうか。


(今までに見たことのある魔獣か?)

〈あります。外見は兎に酷似〉


 異世界初日に襲われた因縁の魔獣か。前回はあの魔獣を倒し得るはずもなくただ逃げていたが今は違う。「魔術」という防衛術があるんだ。前回の足の速さから考えてこいつはどうやっても倒す必要がある。逃げることはほぼ不可能だろう。討伐するか、討伐されるかの勝負だ。


「グガァア!」

「来たか! 〈鑑定〉、〈風弾〉!」


 まずは〈風弾〉を放って鑑定を確認。そして走る! 狙いを定めさせたら一気にやられる!




名前なし


【種族】 フィネール


【レベル】 48


【生命力】 1870/1900


【魔力】 3700/3700


【スキル】[風観ノ眼]


【魔術スキル】 [風魔術 レベル6][炎魔術 レベル7][混合魔術 レベル5]


【称号】 [魔眼持ち]





 レベル48!? 俺より高いぞ。いや、レベルの高さ=強さなわけではないか。実際に種族によってかなり違うらしい………が肝心の種族を知らん! だが少なくとも魔術は俺より使えるはずだ。なんせレベル6とレベル7。魔力も脅威の3700。そして知らない[混合魔術]。

 

 さらには謎のスキル、[風観ノ眼]。【称号】も踏まえると恐らくは魔眼、というものだろう。しかしどっちにしろわからない。レベルゼロということはどちらにしろ強力な筈。


「ギュアカカアァア! (風ノ剣ヨ!)」

「っ!」


 なんだ今の攻撃!? 一発の魔術のはずなのに俺の周辺の木が一気にズタズタに切り裂かれた。その上切り口が恐ろしく鋭く、叩き折ったというより本当に鋭い刃物で切ったようだった。

 

 前に会ったやつは絶対にこんな意味不明なレベルでの攻撃はしてこなかったはずだろ。しかも最悪なことに風魔術だろうから目に見えない。どうにかして攻撃の位置を確認しないとひたすら勘で避けるしかなくなる。そんなことになったらすぐにやられる。


「ギュアァ! (風ノ刃!)」


 今度は普通の〈風刃〉のはず。しかしそれでも十分な脅威だ。現に今も走り回るしか対処方がない。やはり見えないというのは非常に厄介だ。どうにか見えない攻撃の位置を………見えない? 俺は初めにデスリーバードの位置をどう確認した? [祝福]、だよな。


「[遇ノ知庫]! [下級天使の祝福]からの情報を俺に伝えろ!」

〈わかりました〉

「ギャラアッギャグ! (炎ノ騎士!)」


 せっかく対応できるようにしたのに炎魔術! しかも、炎が『剣と盾を持った人』の形になって攻撃してきた?


「うおっ」


 俺の真横を炎の剣が通り過ぎていった。ちょっと近付いただけの筈なのに焼けるような暑さを感じた。一体どれだけの温度の……


ジュッ! ドンッ!


 嘘だろ!? 炎の形の騎士が通ったところが一部溶けている。そして何かの焼け付くような臭いが鼻にくる。『地面が溶る』温度での攻撃!? そんなの対処のしようが…………………ん?


 せっかく魔術を手に入れたのに結局は生き延びられないのかと絶望しかけた時、騎士が消えた。そんなに長時間続く攻撃じゃないっていうことか? どちらにしろ状況が良くなったわけじゃない。


「ギュアァクルァ! (風ノ剣ヨ!)」


 今度は風魔術か! よし、これなら『攻撃の位置』が把握できる。


「〈風刃〉! …ダメか、〈風刃〉!」


 ドォン!


 周辺の木は倒れたが俺への攻撃はなんとか防げた。相手の一発の攻撃を防ぐのに二発も〈風刃〉を使ってしまった。その上周囲の倒木のせいでより一層逃げ辛くなった。が、今度はこちら側の攻撃だ!


「いけ、〈風刃〉」

「ギャギャ! (風ノ盾!)」

「…まじか」


 今使える最高威力の風魔術を使ったのに、避けるのでも別攻撃で相殺するのでもなく防御の魔術で対処された。最悪だ。これじゃどうしょうもない。


「ギャグ、ギャウギャイウ! (混ザレ、火炎放射!)」


 混ざれ、という謎の指示。これが[混合魔術]だろうか。何本にも分かれた炎の帯が俺の周辺に伸びていき、周囲を燃やし尽くしていく。そのうち一本が真っ直ぐに俺に向かってくる。


「〈風弾〉!」


 流石に打ち消すことはできなかったがなんとか威力を弱める。そしてあとは全力で避ける。このままじゃジリ貧、どうやっても俺に勝ち目はない。


 使える最大威力の風魔術は消され、生命魔術では攻撃できず、炎魔術は森で使い辛い。その他魔術は論外。いや、もうそんなことを言ってる場合じゃない。どちらにしろこのままじゃ殺されるだけ。だったらもう一発勝負! リスクを負ってでも賭けに出る!


「〈炎縄〉!」


 今まで一度も使ったことがない炎魔術のレベル4、〈炎縄〉。消費魔力も500超えとかなり高い。使用と同時にかなりの魔力が体から抜けていくのがわかる。


 一気に蜘蛛の巣のように縄の形の炎が放射状に伸びていく。そして、周囲を焦がしながらフィネールを包み込んだ。


「ギャァァァ!」


 フィネールの叫び声が聞こえた。これが断末魔になるだろうか。だんだんと俺が使った魔術の威力が弱まっていく。そして炎に包まれていた場所が見えてくる。


 そこにあったのはおそらくフィネールの死骸と思われるもの。


「やった、か」


 ついに、自分も死にそうになりながらも因縁のウサギを、討伐できた。もちろんそのことは嬉しい。だが喜びよりは疲れが先に来る。かなりの魔力を消費したし、相手の使う魔術も強力だった。


 やはり魔術のレベルというのは大きい。それにフィネールという種族も初めて聞いた。レベルも入れるとかなり強いんだろうが………………なんだ? 俺はいま『何か』に疑問を抱いた。だがなににだ? 思考を整理しよう。さっき考えていたのは、フィネールが強敵だということだ。強敵…………強さ…………強さ……レベル…………!


「まさか!?」


 おかしい、あれだけの強さなのに『討伐時のレベルアップのアナウンス』がなかった。


「………ギャ…………ア………ギャァァ (………炎…………ヨ………包メ)」


 周囲が、一気に明るくなった。

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