17、ゴブリン討伐
今日の冒険者ギルドはかなり混んでいる。前回は新人講習の直後だったから、時間帯的に人がいなかったんだろう。
「おはようございますリクさん。依頼の達成報告ですか?」
「はい、これが依頼のルーヒ草です」
20本くらい採集したが出すのは15本程度で大丈夫だろうか。
「あれ?」
「どうしましたか?」
「いえ、なんでもないです」
「わかりました、鑑定してくるので少々お待ちください」
[武器庫]から取り出して重大なことに気がついた。ルーヒ草には綺麗な花があるが、その花が『全く萎れていない』ということに。通常とってから一晩も経てばある程度は萎れているはず。しかしこの花はまるで今採ったかのような瑞々しさがあった。
まさか[武器庫]の効果か? それとも何か別のスキルの問題? 根本的問題としてこの花は萎れるのか?
「はい、しっかりと依頼分あります。こちら報酬の大鉄貨1枚です」
気がついたら依頼の達成になっていた。しかし草15本で1万円。高いのか安いのか。
「そうだ、ちょっと魔物を買ったので買取をお願いします」
忘れないうちに昨日狩ったシンバードと謎のゴブリンを出していく。
「シンバード一体と…………」
なんだ? 途中で言葉が止まって固まった。しばらくまっても瞬き一つしないこのかたまり具合。大丈夫かこの人? 確実に目が乾いて痛くなりそうだぞ。
「大丈夫ですか?」
「リ、リ、リクさん! どこでこんなもの狩ったんですか!」
「どこって、近くの森で………」
「いいですか、これは、ゴブリンの中でも滅多に現れないヴェノゴブリンです」
なんだまたデスリーバード見たいな変なのを倒したのか? いやでも見た目からして変なのはわかり切ってたけども。
「なんですかヴェノゴブリンって?」
「ヴェノゴブリンはそこまで強くはありませんが毒を使うのが特徴のゴブリンです。そして非常に珍しく、普通のゴブリン1000匹につき1匹しか生まれません。あくまでこれは生まれる数で実際は、生まれた直後に普通のゴブリンより魔獣に狙われるのでもっと少ないです」
今度はデスリーバードとかの上位の種族とかじゃなくて、珍しい種族なのか。何かが特殊な種族に会う確率高くね?
「それで、これの買取価格はどれくらいですか?」
「少々お待ちを………」
なにかルーペみたいなのを取り出して覗き始めた。
「小銀貨7枚と大鉄貨一枚です」
「………は? え? 小鉄貨7枚、大鉄貨一枚ではなく?」
「小銀貨7枚です」
高くね!? 小銀貨って大体10万円だよな? 買取合計71万円になったの!?
「……どれがいくらですか?」
「ヴェノゴブリンが小銀貨7枚、残りがシンバードです。ヴェノゴブリンは数が少ない関係上、かなりの高額買取になっています」
そこまで貴重なの倒したのか。よくそんなもの運良く見つけられたな。
とにかく金が入ってくるのはいいことだと思おう。これでしばらく宿代に困ることはないはず。ある程度の余裕ができたからこれからは少し精神的余裕を持って依頼を受けられる。と言ってもまだで一度しか受けていないが。
「ありがとうございました」
とりあえず今日受ける依頼を見よう。今日は時間が早いからか前回より依頼が多く貼ってある。しかし、9級冒険者の俺が受けられる依頼など高が知れている。やはり今日の第一候補は前回辞めたゴブリンの討伐か。
この依頼を見ると最低5体討伐、あとは討伐数に応じて報酬の加算があるらしい。ざっくりとした地図に生息地や多く見つかるところが書かれている。場所は……………ルーヒ草を取りに行ったところから少し東に行ったところだ。これなら大体の位置は覚えているからわざわざ書庫で調べなくてもいいか。
「この依頼を受けます。これがギルドカードです」
「…はい、わかりました。依頼の期限は今月中なので気をつけてください」
知らなかった、期限なんてかかれていたのか。これからはそこら辺の項目も注意して読まなきゃな。もし期限がバカみたいに近かっらかなり急がなきゃいけないし。今回はまあ終わるはず。
足元を見るとところどころ焼け焦げた後の木の枝が落ちている。前を見ても花の群生地の一部だけ形がおかしい。おそらく、前に火災を起こしたルーヒ草の花畑までたどり着いた証拠だろう。
ここから東方向に行けば多くゴブリンが見つかる場所のはず……………なんだがもう既に見つけた。しかも3匹くらいの集団を。場所はまだかなり離れている。こちらは木と木の影に隠れているのでまだゴブリンに見つかっていない。
念の為[鑑定]したが普通のゴブリンで、魔術スキルは[身体強化魔術]しかなかった。
(他の敵は?)
〈周辺にはいません〉
じゃあレベルが2しかない風魔術でもいけるか。レベル1の〈風弾〉だと仕留め切れるかわからないことも踏まえて今回使うのは〈風刃〉。魔力消費が少し多い気もするがそれはどうしようもない。
(〈風刃〉の射程距離にゴブリンが入ったら教えてくれ)
〈これまで〈風刃〉を使用していないので射程距離は不明です〉
しまった、そういえば[遇ノ智庫]は俺の経験したことしか反映されないんだった。それじゃどうやっても射程距離なんてわからないし、計算出来ない。
だがそれだと俺の感覚で魔術を撃つことになる。それは流石にリスクが高い。できれば無駄に近寄らせず撃ち取りたい。接近戦なんて今ままでヴェノゴブリン相手にしかしてない。しかもそれは緊急事態だった。
(じゃあ〈熱刃〉の射程距離ならわかるか?)
〈はい〉
(…………じゃあ、その射程にゴブリンが入ったら教えてくれ。そのタイミングで〈風刃〉を使う)
〈熱刃〉を使うということも一度考えたが、この森の中では緊急時以外でつかいたくない。下手に使うと大火災の引き金を引くことになりかねない。なので今回は〈風刃〉と〈熱刃〉が同じ射程だろうということを予想の元、〈風刃〉を使うことにする。
〈対象の射程範囲到達予想時刻まであと10、9、8、〉
もうそんな距離になっていたのか。失敗したときは逃げることも視野に入れるべきだろうと今更ながら考える。俺はこれまで何回も魔獣と戦った訳ではないのでさすがに今は緊張している。何より今回は相手が複数だ。今までは一対一だったが初の一対多数。もしこの一撃に失敗したら。そんなことも思う。
だがそれは今この瞬間考えるべきでは無い。初めから逃亡を考えていたら絶対に油断して第一の行動を失敗するし、緊張で十分に魔術を使えないなんて最悪だ。
〈……5、4、3、〉
ゆっくりと、落ち着いてゴブリンの位置を見て狙いをつける。
〈2、1、〉
もうすぐ、あと1秒以内には。
〈射程内に到達〉
「〈風刃〉!」
「ギァア!」
「ギャ、ギュアギャグァ! (ナニ、ドコカラ!)」
しまった、一体倒しきれなかった! やっぱり三体相手に一撃では仕留めきれないか!
「〈風弾〉!」
「ギャ!」
【レベルアップしました】
………倒し切れたか。危なかった。次からは一気に何発か〈風刃〉を打った方がいいかもしれないな。だが、そうすると魔力が持つかが心配になる。…………やはりいま使える両方の[風魔術]をとって、〈風刃〉と〈風弾〉を組み合わせて使うか。そうすればかなり無駄を抑えられるはず。
次回予告:ゴブリン討伐の続き




