13、美しき?花畑
早速ルーヒ草のことを調べていこう。まあ名称からして植物だろう。だとするとどれだ? いくら予想より小さいからと言ってそこにある本はかなりの数。総当たりは効率が悪すぎる。
この本がどんな順で並んでいるのかもわからない。異世界で他言語なんだからアイウエオ順はないだろう。同様にABCDの順番ってこともないはず。
かといってジャンル順なんだろうか。試しに近くの本棚の本を見てみる。
『野営道具大全』、『天属性魔法とは』、『植物辞典』、『冒険者の歴史』、『魔物図鑑』、『簡単楽しい剣のお手入れ』、『伝説の魔法使い』、『美しき砂』............
なんだ最後のやつ。明らかに最後のだけ冒険者関係ないだろ。誰だこんな本を初心者向けの書庫に置いたの。
ともかくパッとみた感じ規則性はない。しかし、目の前の『植物辞典』という本。これに載ってるはず。
「重い」
見た時からわかっていたがまあまあ分厚くて重かった。ページ数もかなりある。
試しに見てみるがどこにも索引らしきものがない。この本を全部読むしか無いか? パラっと本全体を見てみるがやはりページが多い。見開き1ページに一つ大きな挿絵があって、細かく説明が付いているという構成だった。
見た目がわかっていればどうにか調べられる気もするが知っているわけもない。
本の重さに伴って俺の気分も重くなる。ルーヒ草何ページだよ全く。
(ルーヒ草についての記述は391ページです)
「え!?」
今のは[遇ノ智庫]だよな。なんで解答が来たんだ? 俺の経験したことしか解答が来ないんじゃ.........まさか、さっと本を開いたあの瞬間で記憶していたのか?
(その通りです)
流石レベルゼロ! 素晴らしい。これで探す手間が省けた。さっそく391ページを開く。
挿絵は非常に精密に描かれていて、芸術作品のようにも見えた。パッとみた感じ綺麗な赤色の花で、しっかりと群生地の位置も書かれたいる。ざっくりと説明を読んだ感じ、毒草らしい。
............毒草の採取依頼ってなんだよと叫びたくなる。なんでそんなもんを欲しがるんだよ。
毒としてはどんなものなのか......接種から一時間ほどで腹痛が現れ、しばらくして頭痛が起こり、それが合図となって無毒化する。致死性なし。副作用なし。
地味だな。毒を採ってくるっていうとかなりヤバそうだけど効果は地味。頭痛が腹痛解消の合図になるってことだろ。やっぱなんのために使うのか。
いや、副作用なしってことは体調不良にみえるってことか? ということは悪用しやすいってことだよな。例えば、重要な会議の時間に合わせてその毒を使うと........あら不思議、その人が会議に来ない。冒険者の戦闘時間を予想してその人に使うと.......戦闘中に腹痛が出て致命的なミスを犯すかもしれない。
やばい、嫌な想像ばかり巡る。この依頼は受けない方がいいのか? いやとりあえず説明の続きを読むか。
結論、毒にも薬にもなるらしい。薬としての効果は、軽症の治癒。その上、即効性。まさかのファンタジーな効果。うまく調合すればポーションになるらしい。冒険者の頻出依頼の一つだそうです。
だとしたらこの依頼は受けても大丈夫か。そして、この本から大きな収穫があった。
この本には、どの時期にどの植物がよく採れるかが書いてあったのだ。それも月毎に。
そう、つまり、なんと、この世界の暦が分かった! 以前門番が半月=30日と言っていた。つまり一ヶ月は60日。そこまでしかわからなかった。しかしこの本のおかげでついにわかった。
火の月、風の月、土の月、水の月、光の月、闇の月
この順番に月が並んでいる。どうやら月の名前は魔法属性と同じっぽい。一年は、60日×6ヶ月=360日なので360日のはず。
この世界に閏年があるのかは知らないが大体は地球と同じだということがわかった。
いったんそれは置いておいて、依頼を受けよう。
「調べ終わりましたか?」
「はい、この依頼を受けようと思います」
「わかりました。ギルドカードを提示してください」
「はい」
「......確認しました。依頼を達成した際には受付で報告を行なってください。報告を怠ると依頼は未達成と見なされますのでご注意を」
無事に依頼を受けられた。これが俺の初の冒険者としての仕事か。地図を見た感じ、この街に入った時の門を抜けるらしい。
門は入る時だけではなく出る時にも検査があるっぽい。見た感じそこまでは並んでいない。
「身分証を提示してください」
「これです」
この街に入った時はそんなものなかったが今ならギルドカードがある。
「はい、問題ありません。お通りください」
門を抜けると森が目に入る。昨日はあそこから逃げて街に来たが、今日は逆。祝福とスキルのお陰で迷う心配はない。ただ、この先は魔獣が出るんだから注意しないとな。
「ここ............だよな?」
〈間違いありません〉
街から歩いて大体1時間かかった。慣れない森歩きにしては上出来だろうか。しかし、全くと言っていいほど疲れていない。転生した新しい体だからか、それとも昨日レベルアップしたおかげか。
目の前、半径1メートルほどに赤い花が咲き乱れている。資料で見たルーヒ草と同じ特徴なので間違いないだろう。
その周辺は木に囲まれており、森の中での自然な美しさが滲み出ている。そして周囲には鳥らしきものがいて、美しい花畑に彩りを加えている。
そこを切り抜けばただの風景画の一つのよう。
しかし大きな問題がひとつ。
「あれ、鳥か............?」
そう、目の前にいるのは『鳥らしき』生物。それだけなら異世界だしな、の一言で済む。しかし、
「………どうにも見覚えのある鳥だな」
まるで昨日倒したでスリーバードと一回り小さくしたようなもの。あの鉤爪も、体の形も。
「…[鑑定]」
今まで使ってなかった[鑑定]を一度使ってみる。
名前なし
【種族】 シンバード
【レベル】 10
【生命力】 420/430
【魔力】 100/100
【スキル】 [気配遮断 レベル5]
【魔術スキル】 [身体強化魔術 レベル2]
………魔獣だよなぁ。やっぱりそうか。昨日説明されたデスリーバードの下位互換。でも説明からしてまあまあ強いんだよな。
ステータスは俺より弱い。しかしこの森で生き抜いてきた鳥と、最近まで現代社会にいた俺のことを比べてはダメな気がする。
依頼の達成にはルーヒ草が必要。幸い鳥がいる、と思った時から[隠密]を発動させているので問題ない。しかしあそこまで近付いてバレないのか不安だ。
〜細かすぎる伏線〜
月の順番は第2話に出てくる、天使レアルスのセリフ(魔法の属性紹介)と同じ順番。
月の順番:火の月、風の月、土の月、水の月、光の月、闇の月
セリフ:「魔法の属性は火属性、風属性、土属性、水属性、光属性、闇属性、〜があります」




