12、勧誘と情報
その後も細々とした説明が続いたが常識的なものばかりで新人講習は終わった。喧嘩は御法度、酒の飲み過ぎは毒、怪我をしたら安静に、武器の手入れはこまめに、という話だった。
ただ、印象的だったのは旅をするときは盗賊に注意しろという言葉。この世界には盗賊がいるらしい。ちなみに捕えるか殺すかすると賞金。
盗賊に襲われないことを祈るばかりだが襲われたとき、俺はどうするだろうか。魔物に襲われた時は、なにも躊躇せず殺した。ただ、それが人間になったとき俺は殺せるのか?
流石にウサギに追われた時から魔物の危険性はわかっているし、討伐をためらえば自分が死ぬことも本能的に理解できる。だが盗賊は? 人間は? 捕らえる余裕がないとき、どう動く?
「ねえ、そこのあなた」
旅をせずに、冒険者以外で暮らすという手段もある。しかし俺がこの世界で生きる以上誰かが..........
「おーい!」
「はいっ!」
しまった。ずっと考えてた間にパーティーの3人組呼ばれてたらしい。
「あなた、魔法使い?」
「そうですけど........どうしてそう思ったんですか?」
何か魔法使いかどうかわかるアイテムがあるのか? だとしたら魔術師だとバレる危険が.......
「だって君、剣も持ってなければ盾もない、弓も槍も持ってないから魔法使いかと思って」
「なるほど。それでどうしたんですか?」
「私たちのパーティー『白の戦士』に入らない?」
いきなりの勧誘。なぜ俺を誘うのかがわからない。この人たちとは初対面のはずだ。
([遇ノ智庫]、初対面だよなこの人たち)
〈該当人物との接触歴なし〉
「なんでですか?」
「私たちのパーティーは見ての通り3人で、魔法の担当がいないの。それに全員女性だから4人目も女性がいいと思って貴女を誘ったの。今ここの講習にいるってことはそんなに実力も変わらないはずだし」
「........」
「ああ、もちろん今すぐパーティーをってわけではなくて、試しに数回パーティーとして組んでからだけど」
なるほどね、魔法使いがパーティーのバランス的に欲しいのか。
しかし.......分かってはいたはずだった。だがそれでも釈然としない。そんにに俺は女にみえるか!? そうかそうかそんなにわかりずらいか。あの大天使...........
「........フフッ、フフフ......」
「.....大丈夫ですか?」
「ッと失礼しました。そしてお誘いはお断りします」
「.......なぜか聞いてもいい?」
「まず、私は貴女たちのことをよく知らない。そして何より俺は『男』です」
「え!?」
そうかそうかそんなに驚きか。悪かったな男で。しかしあくまで今言ったのは建前。
一番の断る理由はは魔術師ということをバレたくないからだ。[鑑定]を防げても長期間一緒に行動すればバレるかもしれない。それだけは何としても避けたい
決して男女を間違えられたからではない。決して。
「よく知らずに失礼しました!」
「まあ、間違えやすいのは理解してるので」
『あんなに綺麗な顔なのに』とか他の2人から聞こえる気がするが無視するに限る。
「でも魔法使いでソロって厳しくないですか?」
「[詠唱破棄]があるのでまあまあなんとかなりますよ」
これは嘘だがある意味正しい。そんなスキルは持っていないが、そもそも魔術に詠唱はない。つまり詠唱、を破棄、してるんだ!
「[詠唱破棄]を持ってるなんて珍しいですね!」
珍しいのか。それは知らなかった(知ってるわけない)。待てよ? さっき熟練の魔法使いの中に持ってる人がいるって言ってたな。
やっぱりこういう系統の話はボロが出そうで怖い。
「そういえば講習の担当だったグラードさんが『魔法剣』を確立したって言ってましたけど『魔法剣』ってどういうのなんですか?」
「私も詳しくは知らないけど魔法を剣に纏わせて使うらしいです」
「そうです! さらに、1級冒険者の『黒雷の剣聖』は魔法剣を応用して、剣に雷を流しているそうです! それによって敵は剣に触れた瞬間に動けなくなり、即座に倒されすそうです。そして持ってる剣が黒いことも相まって『黒雷』という称号がついたと「はい、落ち着いてね」
いきなり話に入ってきたな。そういえば昨日露店でも『黒雷の剣聖』について語られた気がする。ファンが多いのか。しかし雷を流す? 電気を流しているということだろうか。
「ごめんね、この子『黒雷』の話になるとこんな感じで」
「......大丈夫ですよ」
新人講習は終わったのでとりあえずどんな依頼があるかみてみる。
俺は9級冒険者になったから8、9級の依頼を受けられるはず。パッとみた感じ受けられそうなのは『ゴブリン討伐』だな。そのほかには『ルーヒ草採取』というのがある。
ゴブリンは昨日倒したやつで、ルーヒ草は知らん。どちらも場所の地図があるが指定範囲は広い。
「すいませーん」
とりあえず受付で聞いてみることにする。
「どうされましたか?」
「この依頼を受けたいんですけど『ルーヒ草』ってどういうのですか?」
「文字は読めますか?」
「はい」
ギルドカードを提示しながら言う。
俺は特殊スキルのおかげで読めるようになってるが、この世界ではどれくらいの人が読み書きできるんだろう。もし俺が言葉もわからないままこの世界でに来ていたら詰んでたかもしれない。
「依頼などで分からないことがありましたらこちらでギルドカードを提示して下さい。そうすれば職員が書庫に案内します。そこで依頼に必要な情報を確認してください。本を壊した場合弁償となりますのでご注意ください」
「わかりました」
「では書庫へ案内しますのでついてきてください」
「こちらです」
通されたところは図書館というより図書室といった感じで、小さめの部屋に本棚が並んでいる。想像していたよりかなりこじんまりとした感じだった。
「下位のランクの依頼であればこの部屋の情報で十分だと思います。ランクが上がると貴重な文献や他地域の魔獣などを書いた本のある書庫の立ち入り許可が出ます」
確かに下っ端に会社の大きな機密を見せるなんてしないしな。それにここに遠く離れた大陸の魔獣情報があっても無駄だ。まあ、そもそもこの世界に大陸というものがあるのか知らないが。
まあ例えは置いといて、そういう意味でランク制限をかけてるのもあるのかもしれない。
「わかりました」
「情報を確認した上で依頼を受けるかの判断をしてください。もちろんその間に別の方が依頼を受ける可能性もあります。ただ、よく知らないものを討伐しに行こうとして死んでいった新人は後を絶えませんのでご注意を」
情報の有無は大きな差があるからな。極論、俺が今何も知らない『ルーヒ草』を採ろうとしても迷うだけだ。




