4話 人間⇄タコ
吉崎梨乃。
耕助と同じクラスの学級委員長であり、耕助の幼馴染である。
耕助とは親同士が仲良しで、ちょっと前までは一緒に遊んだり、毎年家族ぐるみで旅行に行ったりしていた。
しかし去年頃から旅行も自然消滅し、耕助もひとりで遊ぶ事が多くなったため、耕助とこうして学校以外で会うのは、2か月前くらいに耕助が風邪を引き、プリントを持っていった時以来だった。
「うん、これからその秘湯に行こうと思って。美味。けど小雪ちゃん、水着無いみたいだから、美味、梨乃ちゃんのやつ貸してもらおう、馬、かと」
「ごめん、用件言うかクッキーの感想言うかどっちかにして。あと最後しれっと馬って言ったよね。小説だから分かるからね」
梨乃が一つずつ的確にツッコんでいる内にも、耕助と、耕助のいとこだという小雪ちゃんによって、梨乃の焼いたクッキーがみるみる無くなっていく。
しかし2人の用事はクッキーを食べる事ではなく…どうやら2人は今から山奥の秘湯とやらに行くらしいが、東京から泊まりに来ているという小雪ちゃんの水着が無いため、梨乃に水着を借りに来た、という用件だった。
「まぁ水着を貸すのはいいけど…2人だけで行くの?」
「いや、1号が送ってくれるらしい。ね、小雪ちゃん」
「うん」
また1号とかいう訳の分からない事を言い出し始めた。しかも隣に座る小雪ちゃんまで…どうやらもう既に、彼女は耕助に毒されてしまっているらしいーー。
そう確信した梨乃は彼女への同情心から、思わず手を合わせてお経を唱え始めた。なむなむなむなむ…
「何してんの、梨乃ちゃん…」
「コーちゃん、この子おもしろい」
ドン引き or 面白がる2人に気付き、梨乃は我に返って顔を赤くした。そしてその場から逃げるように、自分の部屋に水着を取りに行った。
〜〜〜〜〜〜
「ありがとう、梨乃ちゃん。また明日返しに来るね」
「ありがと、リノちゃん」
「うん、全然良いんだけど…イチゴウさんっていう名前の人だったんだね…」
梨乃が納得半分、疑わしさ半分といった様子で呟く。マンションの外では、見知らぬ女性が耕助と小雪ちゃんを迎えに来ていた。
歳の頃は20代後半くらいの、ゆったりとしたロングスカートとワインレッドの長髪が似合う、長身の綺麗な女性だが…少し気になるのが、何故か口をひょっとこのように尖らせている所と、歩く時にズルズルと変な音がする所だった。
「まぁそういう感じ。じゃ、またねー」
「ばいばーい」
2人は梨乃に別れを告げ、その女性の軽自動車の後ろに乗り込んで去っていった。
そして梨乃は何か釈然としない心持ちのまま、マンションの部屋に戻った。
車の中、耕助が女性に話しかける。
「1号、そんな変身出来たんだね」
すると女性の姿がみるみる内に歪んでいきーー
ものの2、3秒で、女性はタコのような異形の生物ーー1号に変貌してしまった。
しかもそのような異形の姿となってもなお、触手を操って普通に車を運転している様子はーーTwitterで3.8万RTされるくらいにはシュールであった。
「やっぱタコじゃん」
実際小雪ちゃんは、その姿が完全にツボに入った様子である。
そう、タコだけn
(イ〇テQ編集特有のブツ切りカット)




