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なかよしワンダーグラウンド  作者: 森 go太
第三部 『構・文』
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4話 マニア

 転校生の小雪ちゃんは職員室横の会議室で待機という事なので、一旦そこまで案内した後、耕助は小雪ちゃんと別れて6年生の教室へと向かった。


 6年生の教室は今まさにHRが終わり、始業式が行われる体育館への移動で騒がしくーー


 耕助はしめたものだと、その喧騒に紛れてクラスメイトの中に紛れ込もうとするが…


 「ごら」

 突如として耕助の耳元でどすの効いた声がしたかと思うと、耕助は瞬く間に岩のような手で、首根っこを掴まれてしまった。


 「今誤魔化そうとしたのぉ?耕っちぃ?」

 これほどまでの重低音で喋る者は、声変わりするかしないかといった声帯の者ばかりのこの6年生の教室では、1人しか存在しなかった。


 「釜田先生(っち)、ご無沙汰しております。いやぁ本日はお日柄も良く…新学期の始まりには申し分ない…」

 釜田彦直ーー6年生の担任であり、生徒指導も兼任しているベテラン男性教師である。


 そのカタギとは思えぬ強面とオーラから一部生徒の間では『人殺し』というあだ名が付けられており…偏見だけでPTAの議題に上がる事もしばしばである。


 「丁寧な言葉遣いをしても無駄じゃぞ。ええか。一度犯した過ちはな、何をやっても消えんのじゃ。寿司屋で醤油を舐め舐めした奴を見てみぃ。どうなった?」

 釜田先生は耕助にこれでもかと顔を近付け、鋭い眼光でぎろりと睨み付ける。


 家では小雪ちゃんにもこれくらい顔を近付けられる事はあるが…同じ人間でもこれだけ違うのかと、耕助は思わず苦笑してしまった。


 「何笑とんじゃぁ耕っち?ごらぁ」

 「ごめんなさい、釜田先生。これあげるから許して」

 耕助は釜田先生に、梨乃のお婆ちゃんから貰った柿を手渡す。


 釜田先生は依然として鋭い眼光のまま、それを受け取るとーー


 「…ありがとのぉ」

 少し頬を赤らめて目を逸らし、すぐに耕助を掴む手を緩めた。


 そして今度は耕助の頬から顎にかけてのラインに沿って濃い髭をじょりじょりと擦り付けながら、鳥肌の立つような猫撫で声で言う。


 「相変わらず耕っちは()い奴よのぉ。食べちゃいたいのぉ」

 実はこの釜田先生、耕助の伯父(父の兄)と同性婚した、耕助の義理の伯父でありーー幼い頃から耕助と顔馴染みで、耕助を本当の息子のように溺愛しているのであった。


 その態度は耕助のクラスの担任となっても全く隠す事なく…こうして他の生徒そっちのけで耕助とじゃれ合おうとする事もしばしばであった。


 「新学期から地獄みたいな絵面見せつけないでください。胃もたれしちゃいます」

 そんな2人のやり取りを6年生の生徒はすっかり慣れ切っている様子で、とりあえず学級委員長の梨乃が代表してツッコむ。


 「あぁ、メンゴメンゴ(笑)。さ、並んでチョ(^◇^;)」

 釜田先生は梨乃にツッコまれると、まるで人が変わったように恐縮しながら号令した。


 そしてようやく解放された耕助は、釜田先生の髭で傷だらけになった顎を右手で隠すように撫でながら、低く呟いた。


 「おじさん構文だ、ありがたい」

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