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なかよしワンダーグラウンド  作者: 森 go太
第二部『変・貌』
16/25

7話 セッション

 小雪ちゃんが東京に帰ってから、2週間が経とうとしていた。


 耕助は人生初の号泣をした後、石焼きジャガイモをたらふく食べて少し元気が戻り、またいつも通りの日常を送り始めたのだがーー


 何をしていても、胸に蔓延り続ける喪失感と、そこから来る痛みは消える事はなかった。


 「君のいない、世界など、夏休みのない8月のよう。君のいない、世界など…」

 おぉぉぉぉぉぉぉ。


 耕助はRADWINPSの「なんでもないや」を熱唱しながらーー

 梨乃の部屋でギターをでたらめに弾く。


 「いや、だから何でウチでやるの。もうそろそろお隣さんから本格的なクレーム来そうなんだけど。ほらやっぱ来た、壁ドン…あれ」

 梨乃は塞いでいた耳を開き、部屋中に響く音に耳を澄ます。

 すると…


 じゃらじゃらじゃらじゃーん。

 これは耕助のギターの音。そして…


 どんどん、どんどん、どんどん…

 よく聞くとお隣さんが、そのギターの音色に合わせるようにーー壁ドンでリズムを刻んでいた。


 そしてその壁ドンドラムが良いアクセントになり…いつの間にか耕助のめちゃくちゃなギターと、心地よいハーモニーを奏でていた。


 「いや、何これ。セッション?てかお隣さんは何…」

 梨乃が困惑していると、演奏パートが終わり、耕助がまた歌い出す。


 「僕らー(僕らー)たーいむふらいやー(ターイムフライヤー)

 「ハモってる!お隣さん…壁の音の吸収を生かして、ちょうど良い音量で…てか何これ、前衛的すぎない?」

 梨乃が頻りに仕切り越しのセッションにツッコミを入れるも、2人の演奏は士気を下げることを知らない。


 「うれしくてなくのは(嬉しくて泣くのは)かなしくてわらうのは(悲しくて笑うのは)…」

 「もうやめて、頭おかしくなるぅぅぅ」

 遂に梨乃はツッコミをやめて、悲痛な声を上げたーー

 その時だった。


 「僕を追い越したんだよ」

 梨乃のすぐ後ろで耕助ではない誰かの声が聞こえーー

 梨乃はその恐怖に飛び上がり、ホラー映画のように絶叫する。


 「ぎゃあああああああああああ!!!」

 「うるせぇ!」

 その瞬間、初めてもう一方の壁から普通のクレームが入りーー


 梨乃は思わず反射的に、今まで使った事のない荒々しい口調でツッコんだ。


 いや遅ぇだろーーー。



〜〜〜〜〜〜〜



 「3号、ありがとう。最高だったよ」

 全てが終わり、梨乃の部屋には耕助と梨乃ーーそしてもう一人、先程梨乃の後ろで『なんでもないや』の最後の歌詞を歌った、緑色のショートヘアーの女性がいて…その女性は耕助に無言で頷くと、そのまま特に何も言わずに帰っていった。


 「じゃ、僕も帰るね。ありがとう梨乃ちゃん。これお礼」

 そしてまだ放心状態にある梨乃にアクエリアスを手渡し、耕助も窓から帰って行った。


 「はぁ、はぁ…いや、確かにRADWINPS、アクエリアスのCMの曲やってたけど…」

 梨乃は息を荒くしながら最後にそうツッコみーー続けて言葉を漏らした。


 「今度絶対、ドラムとギター持って帰ってもらお…」

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